★Agaricus aestivalis var. veneris (ハルハラタケ)
■ 2019年03月23日 撮影 その存在を初めて知ったのはtwitterだったと思います。 それ以来ずっと探していたのですが何年も出会えませんでした。 しかしまさかまさかの通勤中の車内から土手に発生しているのを発見! ぐっと平日を我慢して休日に撮影。春に草地に発生する「春原茸」です。 時期外れのハラタケかな?と思っていましたが、実際に目にすると全然違いました。 現状ではこの和名は仮称扱いのようですね。 学名も海外の種のものが当てられていますが、本当に同種かどうか確認はされてるのかな? そもそも種小名の「aestivalis」は「夏の」と言う意味ですからね。 変種名の「veneris」も女神(ヴィーナス)関連みたいですし、春には無縁っぽそうですけど。 ■ 2019年03月23日 撮影 遠くからでも、走行中の車内からでも本種だと気付けたのはこの傘の色と大きさ。 このキノコの少ない時期にここまで大型で白い傘は本種くらいしか無いでしょうしね。 ■ 2019年03月23日 撮影 傘は最初白色ですが、表面に淡褐色の鱗片が放射状に圧着しています。 そのため全体的に薄っすらと褐色がかったように見えます。 傘直径は17cmと春季に見られるハラタケ型菌としてはかなり大型です。 ■ 2019年03月23日 撮影 何だかんだでハラタケ属ですからね、ひだの色は凄いですよ。 このテと言うか科、属のキノコは傘とひだとの色のギャップに驚かされますね。 ■ 2019年03月23日 撮影 ひだは幼菌時ピンク色ですが、成熟すると黒褐色に変化します。 この色で密なので明るい場所で見ても光を吸収して黒く見えてしまうレベル。 流石に老菌なのでつばは残っていませんね・・・幼菌で観察するしかないかな。 ■ 2019年03月23日 撮影 断面を黒バック撮影してみました。肉は白色ですが、興味深い点が。 基部や傘表面付近を見れば分かりますが、わずかながら肉に黄変性があります。 ツクリタケ(マッシュルーム)と言い無印ハラタケと言い、この類には普通紅変性があります。 野外で見るハラタケなんかは大抵紅色になっていますからね。 しかし本種は全く赤みがありません。季節外れのハラタケってワケではなさそうですね。 ■ 2019年03月23日 撮影 となるとやっぱ顕微鏡観察しかありません。 自分は本家図鑑のこの学名の種を知らないため、見たままの特徴だけ述べて行きます。 まずひだ表面を観察して気付くのはシスチジア。丸い先端部が飛び出して見えます。 となるとやはりシスチジアが存在しないハラタケではないですね。 ■ 2019年03月23日 撮影 ひだの断面を見てもシスチジアが確認できます。てことはコレが縁シスチジアってヤツか。 これも先端部に丸みがあるようです。 ただ情報では本種は縁シスチジアしか存在しないとのこと。 ではただのシスチジアも見られる本種は同種ではない可能性アリ? ■ 2019年03月23日 撮影 極限まで薄く切ったひだを観察してみました。やっぱり側シスチジアに見えるけどなぁ。 担子器もここまで薄く切れば観察しやすいですね。菌糸にクランプはないようです。 ■ 2019年03月23日 撮影 奇跡的に担子器を立体的に撮影することができました。 先端の尖った部分に担子胞子が形成されます。 どうやら基本は4胞子性ですが、それより少ない数の担子器も混在するようです。 とりあえず自力では2胞子性と3胞子性の担子器は発見できました。 ■ 2019年03月23日 撮影 担子胞子は左右非対称の長楕円形で暗褐色。厚壁。 担子器と繋がっていた痕跡が残っており、内部には1〜複数個の油球を含んでいます。 胞子のサイズは7〜7.5μmで本種の胞子としてはやや小さいように思います。 ハラタケは美味な食菌ですが、本種は現状では食毒不明です。 春にも時期外れの無印ハラタケが出るので、混同して食さないよう注意しましょう。 ただ私個人の第六感的には食える可能性はそこそこあるんじゃないかと思ってます。 ちなみに香りはやや粉臭がしますが、市販のマッシュルームに似た良い香りです。 ■ 2019年03月23日 撮影 周囲を探してみると幼菌も居ました!すでに褐色の鱗片が傘上に見られます。 流石に採取は可愛そうでしたが、数は出た痕跡があったので心を鬼にして観察用に採取です。 しかしこの寒い時期にこんなガッシリしたハラタケ型菌に出会えるとは思いませんでした。 ■ 2019年03月23日 撮影 引っこ抜いてみると完全にマッシュルームです本当にありがとうございました。 薄い膜質のつばがまだ残っています。 幼菌はどっしり重く、肉質が緻密であることが手に感じる重みで分かりますね。 ■ 2019年03月23日 撮影 カッターで切って断面を観察してみました。やはり少し黄変するようです。 若い未成熟のひだは淡紅色ですが、これが成熟するとあの暗色に変化します。 ■ 2019年03月23日 撮影 帰宅後に黒バック撮影してみました。 野外では気付きませんでしたが、傘だけではなく柄にも鱗片があるんですね。 つばは早落性で、すでに柄から浮いてしまっています。 見た感じかなりマッシュルームに近い種だと言う印象を受けます。 ■ 2019年03月23日 撮影 断面を黒バック撮影してみると、肉が非常にキメ細かいことが分かります。 また傘と柄は肉質が異なるようで、境界部分が浮かび上がっています。 ■ 2019年03月23日 撮影 最後に困った時のKOH頼み!水酸化カリウム水溶液を滴下してみました。 結果はほぼ変化なし。若干黄色くなっている気もしないでもないと言うレベルです。 これは「呈色した」とはお世辞にも言えないかな。 とりあえず自力で調べられたのはここまで。次回出会えたらもっと色々調べてみよう。 ■ 2020年03月15日 撮影 1年後の全く同じ場所。車内からも見えるのでチョコチョコ様子見に寄っていました。 しかし1週間前までは出ている様子がなく、今年は出ないかなーと心配していました。 でも定期的に寄っていて正解でしたね。 ■ 2020年03月15日 撮影 たった1週間で複数の子実体が一気にブワッと出て来ました。成長はかなり早いようです。 この時期にこのサイズのキノコは珍しいので非常にありがたい存在ですね。 そしてやはり鱗片が目立つ・・・。 ■ 2020年03月15日 撮影 お、キレイそう。これなら裏側の写真が撮りやすそうかな? ■ 2020年03月15日 撮影 と思って手前の石を退けたらウギャー!大量のダンゴムシが出て来ました。 これでもまだ逃げた状態なので、この倍くらいは集まってましたね。もしかして食べてる? 柄の削られ方もどうもナメクジとは違うっぽいですし。 ■ 2020年03月15日 撮影 削られた部分を裏側にして撮影。ひだもちょっと齧られてるかな? ■ 2020年03月20日 撮影 さらに1週間後に訪れると、非常に状態が良い子実体が新たに発生していました。 今回は昨年の倍近い数のハルハラが発生。 数が多く出るのは写真撮影的にも非常にありがたいです。 ■ 2020年03月20日 撮影 正直TOP絵と差し替えようか迷った1枚です。本種らしさが非常に良く表れた子実体だと思います。 大型で迫力があるのもポイント高いですが、何と言ってもこの淡褐色の鱗片ですよ! これは国内では他のハラタケ属菌で見られない表面構造だと思います。 ■ 2020年03月20日 撮影 ここまで綺麗に鱗片が圧着した子実体は初めて見ましたよ。 傘表面にピッタリと貼り付き、先端部だけ少しだけ浮くためササクレ立って見えます。 幼菌では顕著でないなどの個体差はありますが、本種の判別に役立つと思います。 ■ 2020年03月20日 撮影 発生数に余裕があったので成熟して胞子が飛んだであろう成菌を引っこ抜いてみました。 やはり白い傘と黒褐色のひだのコントラストが見事ですね。 つばも残っており、解説には申し分無いです。 ■ 2020年03月20日 撮影 この子実体も柄の下部を齧られていました。位置的にやっぱダンゴムシですかね? そしてやはり赤変せずに黄変している様子が観察できます。 ■ 2021年03月27日 撮影 いつも見ている場所での発生が少し早かったようで、訪れた段階でどれもしなしな。 諦めてアミガサタケを見に行ったら草に埋もれて居たのでビックリ! ここ多分10年以上通っているのに初見だぞ?・・・もしかして連れて来ちゃった? |