■Agaricus campestris (ハラタケ)

■ 2019年06月15日 撮影

マトモな子実体に出会えたのは実に8年振り! 走行中に車窓から見えた白い物体。降りてみると草むらに散生していました。 和名は「原茸」。その名の通り良く肥えた原っぱに発生します。 一般的なキノコの形態を「ハラタケ型」と呼び、いわばキノコの典型と言えます。 地面の栄養のみで生育できる腐生性菌であり、外生菌根は作りません。 芝生に超大型の菌輪を作る事が有り、話題になったりします

芝生などの草地に生える本属菌は類似種が多く、同定には顕微鏡観察がほぼ必須となります。 まぁそれでも確実かと言われると怪しいってくらいに難しいんですけどね。 ネットではハルハラタケとの混同や、このページのものに比べて小型で白く、ひだの赤みが弱いタイプが確認できます。


■ 2019年06月15日 撮影

傘は白色で、表面は平滑〜鱗片状で、自分が見たもののほとんどは後者でした。 この日はあいにくの雨で、傘がかなり水分を吸ってしまっています。


■ 2019年06月15日 撮影

傘は成熟すると周囲から徐々にココア色を帯びてきます。 小型の類似種は全体的にこのような色合いにはならず、ハルハラタケは黄変するので区別できます。


■ 2019年06月15日 撮影

柄は白色で絹のような質感で根本ほど細くなります。古いのかボソッと崩れてしまいました。 柄の中程に白い膜質のつばを持ちますが、やはり古いようで柄に貼り付いてしまっています。 でもやっぱり目を引くのはひだの色でしょう。 ハラタケ属の胞子紋は紫褐色。当然ひだも紫褐色。後に黒褐色になります。 幼菌時のひだは淡紅色ですが、成長すると写真のように赤色に近い色になります。 香りを嗅いでみるとやや粉っぽい感じはしますが、爽やかなキノコ臭がします。


■ 2019年06月16日 撮影

15日は時間がなかったため翌日に顕微鏡観察を行いました。 まず観察すべきはひだの断面でしょう。 あまり薄く切れていませんが、それを考慮しても色濃いです。


■ 2019年06月16日 撮影

まずは子実層を観察。菌糸にはクランプ無し。表層に担子器が並びます。 見た感じシスチジアは認められないようですね。あまり自信無いですが。


■ 2019年06月16日 撮影

念のため、ひだの先端部も観察してみますが、縁シスチジアも認められないようです。 ハルハラタケでは通常のシスチジアも縁シスチジアも確認できたので、これは無いと判断して良いかな? この辺は染色とかも覚えないとダメですね。


■ 2019年06月16日 撮影

担子器も観察できました。最大で4胞子性だそうですが、2と3しか見付けられませんでした。 実際に図鑑にも「1〜3胞子性を混在」と書かれているので、記載の範囲内と思っておきます。 ちなみにかの有名な近縁種のツクリタケ(マッシュルーム)は2胞子性なので明確に別種です。


■ 2019年06月16日 撮影

担子胞子は一端が細まった楕円形で色は暗紫褐色。複数の油球を内包しています。 1ヶ所ボコッと飛び出しているのは担子器と繋がっていた跡のようです。 ハラタケの類似種はハルハラタケを含めて胞子にあまり形態的な違いは無いようです。

あのマッシュルームに近縁なキノコであり、本種も当然ながら美味な食菌です。 国内ではあまり利用されていませんが、欧米などではキノコ狩りの際に大人気です。 利用法はマッシュルームと同じですが、ひだが色付きすぎたものは食用にはやや不向きです。

■ 2011年06月04日 撮影

実は明確にハラタケだなと感じた子実体に出会ったのは8年も前。 この場所なんと2019年に再発見した場所にかなり近い、と言うか近所でした。 直射日光ガンガンの田んぼの土手に出ており、光加減で苦労しました。 ちなみに手前の影は撮影者oso本人の影です。ド下手ですみません。


■ 2011年06月04日 撮影

傘表面の鱗片が圧着しており、また違った雰囲気になっています。 ただ傘全体がココア色になる、つまり赤変する性質はこの写真でも見て取れます。


■ 2011年06月04日 撮影

青空が綺麗!地面に這いつくばって頑張って撮影した裏側です。抜くの勿体無かったので・・・。 この子実体にはまだ辛うじて膜質のつばが残っています。 傘の周囲のヒラヒラした飾りもつばの名残なんですよね。


■ 2011年06月04日 撮影

あまりにも日差しが強かったので変な色に写っちゃってますが、それでもひだの色の異様さは健在。 食用になるのは本当に若い時だけで、ここまで色付いていると料理が赤黒くなるでしょうね。 粉臭も増すので食べるのは幼菌だけにしましょう。
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