■Aureoboletus thibetanus (ヌメリコウジタケ)

■ 2022年08月28日 撮影

何と2009年の初掲載以降、13年振りの写真追加となりました。 「oso的写真差し替え優先度リスト」があるなら間違い無く最上位だったと思います。 シイカシ主体の広葉樹林内で発見。傘に強い粘性を持つのが特徴の美しいイグチ「滑麹茸」です。 名前に「コウジタケ」とありますが近縁ではないどろこか属レベルで異なります。 大群生を作ることが多く、撮影者には嬉しいヤツですね。 ちなみにヌメリコウジタケ属は我が国にはこの1種のみのやや異質な存在でしたが、 2015年にオオキノボリイグチが参入しました。よかったね。

本種は当サイト屈指の不遇キノコであり、この写真掲載頻度の低さは類を見ないレベルです。 と言うのも、見付からないから載せられない種は多くとも、見まくってるんですよ、本種。 毎年欠かさず見ていたと思います。 それで何で撮影してないかと言うと、特に理由が無いんです。「何となく」なんです。 何となく今は良いや、次撮れば良いや・・・を続けた結果、13年もの歳月が過ぎてしまったのです。 数年前からそれがずっと気になっており、やっとこさTOP写真を差し替えることができました。

一応言い訳させて下さい。本種、傷んでることが多いんです。いやホント。


■ 2022年08月28日 撮影

傘は赤褐色〜淡紅褐色で成長すると傘表面に著しいシワが生じます。 このシワは幼菌時はあまり目立ちませんが、まだ傘が丸みを帯びている頃からすでに現れています。 また和名の通り傘に強い粘性を持ちます。 ただ粘り気よりも滑り性が強く、ズルズルと滑るような感じがします。 そのためか傘にあまり汚れが付いていない印象がありますね。


■ 2022年08月28日 撮影

裏返してみた・・・んですが、ここで特筆すべきは柄のぬめりです。 傘より強いんじゃないかってくらいにズルズルで、抜く時に滑りまくります。 柄は傘と同色を帯び、柄の上部ほど色が淡くなります。 そして目に飛び込んで来るのは強烈な管孔の色です。


■ 2022年08月28日 撮影

本種の管孔は鮮黄色と表現されるほどの鮮やかさ。要は彩度が高いです。 イグチの管孔は黄色いものが多いですが、流石にもう少し落ち着いた色をしています。 しかし本種は裏返してあれば遠くからでも視認できるほどに目立つ鮮やかさ。 孔口はかなり細かく、遠目には管孔状に見えないほど。 変色性は無しなので指で擦っても全く色は変わりません。 ただ傷んだ部分や古くなった部分が少し褐色になっているような気がします。

傘にはぬめりがあり、肉質も良い感じなのですが残念ながら食用価値無しです。 毒は無いのですが肉に酸味があるのが理由。確かに酸っぱいのはちょっと・・・。 また図鑑などには触れられていませんが、傘表皮には辛味を感じます。 流石にこの味のバランスでは食用には向かないでしょうね。 ただし実際に食べている方も居るそうで、としてもOKみたいですけど。

■ 2009年07月11日 撮影

実はこれだけの写真を載せているウチの写真図鑑の中で、本種の掲載状況は異常でした。 と言うのも、掲載されていたのは2009年の写真2枚だけ。 この写真とそれを引き抜いた適当な裏側だけだったのです。 なのでずっと「差し替えないと・・・」と言う焦りを感じていました。 今回やっと差し替えと写真大量追加ができ、肩の荷が1つ下りた感じです。

■ 2022年08月28日 撮影

幼菌は非常に愛らしく、傘の色もより鮮やかです。こけしみたい。 柄の基部には白色菌糸を蓄える性質があります。 良く見るとこの頃から傘の表面に少しシワが見えていますね。

■ 2022年08月28日 撮影

本種の写真が少なかった言い訳をもう少しさせて下さい。 本種はどうもアワタケヤドリに冒されやすいみたいなんですよね。 この日は本当にコンディションが良かったですが、真っ白になってるものが非常に多いんです。 だからなんですよ!

■ 2022年08月28日 撮影

この日は雨の後の適度な晴れが続き、状態の良いヌメコウが沢山見られました。 ずっと図鑑掲載したいと思っていたので、ここぞとばかりに撮りまくりました。 前から思っていましたが、本種は傘の縁部がくっきり管孔部と分かれますよね。 傘の縁部の巻き込みが0なためで、クリイロイグチモドキなんかを彷彿とさせます。

■ 2022年08月28日 撮影

TOP写真と迷った1枚。いっぱい出ている感じが伝わるかな? 本種は1ヶ所に大群生することが多く、1本だけ生えているってのはまず見ませんね。


■ 2022年08月28日 撮影

傘の色範囲を上手く示していますね。大きい傘が淡紅褐色で小さい傘が赤褐色。 本種の傘は時間経過と雨で退色しやすく、もっと薄いピンクに近い色になっていることもあります。 ちなみに食毒解説で既述ですが、傘表皮は直接舐めると強い辛味を感じます。 これはあまり図鑑に載っていないのですが、本種の重要な特徴の1つでしょう。


■ 2022年08月28日 撮影

裏返すとやっぱり目に付く黄色い管孔。 属名の「aureo」は「黄金色の」の意味のラテン語であり、やっぱりこの管孔の色が由来なのかな? ただ同属のオオキノボリイグチは普通に地味なオリーブ系ですし、属共通の特徴と言うワケではなさそうです。


■ 2022年08月28日 撮影

裏返した子実体を拡大してみました。指で擦っても管孔部は全く変色しません。 本種の柄は強い粘性に覆われているのも影響して少し透明感があるように見えます。 実際に肉そのものも少し透けているようですね。菌糸がヤマドリタケ属などとは違いそうです。

■ 2022年08月28日 撮影

この日は多数の美しい子実体を同時に見ることができ、13年の隙間を埋めるかのごとく撮りまくりました。 本種は見付けてもすぐ近くの他の種を優先したり、今度で良いや!とスルーしてばかりでした。 やはり見慣れた種でも軽んじてはならないなと感じた次第です。
■図鑑TOPへ戻る