■Bactridium subglandis (バクトリジウム サブグランディス)


■ 2021年04月11日 撮影

アミガサタケ類を探してgajin氏とすず姉氏と私の3人で訪れた産廃置き場。 そこですず姉氏が発見した謎の菌類・・・最初はビョウタケ系の子嚢菌類だと思いました。 しかしすず姉氏が怪しいと仰るのでルーペで観察したらマジで怪しかったです。 和名はありませんがtwitter等でも「バクトリジウム」として知られ始めているアナモルフ菌類です。 種小名まで同定するか迷いましたが、胞子の形状から本種と判断しました ちなみにこれセルロース系の廃材から発生していました。

本属菌で黄色いと言うと有名なのは海外で見られる「B.flavum」ですが、胞子が違うのですよね。 他の種も確認しましたが色などが異なり、今回に関しては本種で良いかな?と言うことになりました。 なお紛らわしいですがBactridium属と言う昆虫(甲虫)が存在するので注意です。


■ 2021年04月11日 撮影

子実体?と言って良いのか分かりませんが、直径は大きいものでも2mm程度。 なので最初はニセキンカクアカビョウタケかな?と思ったのを覚えています。 色は鮮黄色で、良く見ると肉眼でもキラキラして見えます。


■ 2021年04月11日 撮影

ルーペで観察すると子嚢菌類とは全く異なる構造であることがすぐに分かりました。 何とツブツブしているではありませんか!ここで本属菌の属名が浮上しました。


■ 2021年04月11日 撮影

と言うのも少し前にtwitterのフォロワーさんが発見していたのです。 当初は正体不明でしたが、他の方からの指摘で見ていた私も初めて「バクトリジウム」と言う名を知りました。 それから程なくしての発見だったためパッと名前が出ました。注目すべきはこの表面。 この子実体はまだ未熟なので単にツブツブしているだけですが、成熟するとかなり特徴が顕著になります。


■ 2021年04月11日 撮影

成熟した子実体です。分かりますか?実はこれ透明で黄色い細長い細胞の集まりだったんです。 「子実体」と呼ぶべきか迷ったのはこのためです。だってこれ胞子なんですよ。 正確には分生子で、本種はアナモルフ菌類なんです。 細長い分生子が放射状に広がってこのような塊になっていたんですね。


■ 2021年04月11日 撮影

低倍率で撮影した分生子です。こんな構造は当然ながら今まで見たことがありませんでした。 雰囲気的には一部サビキン目の冬胞子に似ています。


■ 2021年04月11日 撮影

分生子はマラカス形で、付け根の細い部分を除いた本体は5個の細胞から成っているようです。 先端と基部に近い2細胞は色が薄く、真ん中と先端から2個目の細胞に黄色い内包物が多く見られます。 また長さは200μm近くと非常に大型です。


■ 2021年04月11日 撮影

本種の種小名を決めた理由はこのそれぞれの細胞のサイズにありました。 同様に黄色い子実体を持つものに海外で見付かる「B.flavum」が存在するのは先述しました。 しかしフラブムの場合、分生子全体がより細長く、中央を除く4細胞の比率が大きいです。 本種の分生子は明らかに中央の細胞が極端に大きい上に全体的に太ましいんですよ。 そしてこの特徴は「B.subglandis」の分生子のソレにソックリだったのです。

食不適に決まってます。触ればボロボロ崩れる直径2mmの菌体なんて食おうとしないで下さい。 怒りますよ流石の私でも。と言うか比較的発見されたばかりの貴重な菌類なのです。


■ 2021年04月11日 撮影

他の菌にちょっとヤられてましたね・・・。 これ自分だけだとスルーしていたんですよ。これが大人数の強みだと思います。 単純に眼球の数が多いのもフィールドワーク時の強みですが、視点の違いが大きいんです。 やっぱり先入観は捨てないとダメですね。
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