■Beauveria bassiana (ボーベリア バシアーナ)

■ 2018年06月30日 撮影

読み的には「ビューヴェリア バッシアナ」だと思うんですが、そこはスルー。 市販されている殺菌剤や図鑑にこの読みが使われているので採用しました。 森の中を歩いている最中に地面に奇妙な物が落ちているのを発見しました。 コウチュウ目やバッタ目、カメムシ目など様々な昆虫に感染する冬虫夏草。 明確な子実体を形成しないアナモルフ菌類(不完全菌類)の一種です。

カイコの幼虫が白い粉で覆われる「白僵病(はっきょうびょう)」の原因菌。 一般にはムシカビと呼ばれることがあるようですが、れっきとした冬虫夏草です。 種小名は病原性を研究したアゴスティーノ・バッシー(Agostino Bassi)氏に因んでします。 やや黄色くなるので「黄僵病」とも呼ばれ、養蚕に甚大な被害を与えます。


■ 2014年06月21日 撮影

宿主は何でしょう?小型の甲虫までしか分かりません・・・ゴミムシとかそっち系かな? 体節部から白色の菌糸が吹き出し、その表面に分生子が形成されます。 これはやや若いようで分生子があまり出来てないように見えますね。 接合菌のハエカビはやや透明感があるので間違えないと思います。

食える食えないの問題じゃないです。病原性しか無いですからねコイツ。 ただ本種は人類にとってとても有益な菌類です。そう、生物農薬ってヤツです。 宿主範囲が広いと言うことは多くの虫を殺すことができると言うこと。 そして人類には無害!化学農薬よりもずっと安全性が高いのです。 この学名の読みはその商品名から定着したもの。興味のある方は是非検索してみて下さい。

■ 2014年06月21日 撮影

同じ場所で一番最初に発見したのはセンチコガネに感染したものでした。 全体が真っ白に覆われる事も有りますが、基本的な発生はこんな感じ。 基本的には白色ですが写真のように少し黄色っぽくなることも多いです。

■ 2018年10月14日 撮影

地元観察会にて某氏が発見。生体図鑑にて冒頭でも紹介されているカマキリへの感染例です。 本種は冬虫夏草としては珍しくバッタなどの直翅目や、カマリキやナナフシのような一般的な宿主以外にも感染します。 しかし宿主が大きいと迫力ありますね。栄養もたっぷりで菌糸の量も中々です。


■ 2018年10月14日 撮影

体節部から菌糸が吹き出しているため継ぎ目の無い部位には菌糸が見られません。 体の中は隅々まで菌に乗っ取られているため、細い足の先からも菌糸が出ています。 しかしあの特徴的な複眼が落ち込んでいるのが怖いですね・・・。


■ 2018年10月14日 撮影

特に栄養が集中していそうな腹部はこんな感じで菌糸が大量に吹き出しています。 質感も密度が高くて、やはりカビとは違うのが分かります。 この状態であれば顕微鏡観察は容易だろうと判断、脚を1本だけ持ち帰り顕微鏡観察しました。


■ 2018年10月14日 撮影

まずは菌糸を低倍率で観察。成熟しているようですね。


■ 2018年10月14日 撮影

拡大してみましたがゴチャゴチャしていて分生子形成細胞周辺が良く分かりません。 ひとまず分生子はできているようなので安心ですけど。


■ 2018年10月14日 撮影

分生子形成細胞は細長く、先端付近が枝分かれし、それぞれの先端に分生子を形成します。 そのため先端にブワッと塊のように分生子が形成されているのが分かります。 分生子が外れた後はジグザグになっているみたいですね。


■ 2018年10月14日 撮影

分生子はほぼ球形で2〜3μm。特徴的なのは連鎖しないと言う点です。 外見的に似た種の分生子は連鎖するものが多いので、判断基準になりそうですね。 と言うかここまで見ないとバシアーナと断言できないような気もしてきました。

■ 2020年07月23日 撮影

初めて実況動画を撮影した山へ行ってみると結構収穫がありました。 メインはハラタケ型だったのですが、道中道のど真ん中にスズメバチの死骸を発見。 あ、ボベってる・・・。


■ 2020年07月23日 撮影

近寄ってみるとこりゃまた立派なスズメバチ!サイズ的にオオスズメバチかな? ちょっと色黒になっているのは古くなっているからでしょうか。 やはり最も多くの栄養が詰まっている腹部が重点的に冒されているように見えます。 初実況からもう相当な年数が経っていますが、同じ場所でも新たな発見は絶えませんね。

■ 2020年08月10日 撮影

あまりにも雨が降らないのでガスが期待できる高い山へ。 そこでセミ生のメタリジウムを数多く発見するも以前見たハチタケは発見できず。 帰り際に見付かったのはカメムシに発生したコイツでした。

■ 2020年09月13日 撮影

gajin氏に発生場所を教えて頂き撮影しました。小型のバッタにボーベリアが発生していました。 実は直翅目に感染してるのは何気に貴重な気がしますね。 実はずっと「Entomophaga grylli」を探しているのですが、中々出会えません。

■ 2023年02月11日 撮影

しんや氏との春の菌生冬虫夏草オフにて出会いました。2月にも居るんですね。 基本的に1年中見られるんですね。まぁ成長はあまりしていないでしょうけど。 それが証拠に分生子は形成していないらしく、ポワポワしています。
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