■Beauveria brongniartii (マヤサンエツキムシタケ)

■ 2017年06月22日 撮影

ずっと出会いたいと思っていた憧れの種、予期せぬ出会いに超ビックリ! 八丈島遠征初日のフィールドでまさかの「摩耶山柄付虫茸」に遭遇です。 スギ林などの地中のコガネムシ類幼虫から美しい子実体を発生させます。 北海道で見られるエゾコガネムシタケと同種であることが判明しています。 セミ生のイシカリセミタケも本種なのではないか、と疑う説も存在しています。

実は本種は珍しくアナモルフが特定されています。種小名に注目ですね。 そう、カミキリムシの害菌で有名な「ボーベリア ブロンニアティ」なんです。 そして新分類ではCordyceps属からBeauveria属へと統一されました。 アナモルフとテレオモルフで甲虫とは言え宿主が違うのは面白いですね。


■ 2017年06月22日 撮影

結実部が成長段階で爆ぜてしまったようでバナナの皮みたいになってます。 子実体は全体的に黄色で表面に淡黄色の子嚢殻を密生させます。 雰囲気はウスキサナギタケに似ますが、本種の方が色がどぎついですね。


■ 2017年06月22日 撮影

立体的に子実体が出ており、木の根と石も邪魔で断面作成は断念。 諦めて思いっ切りスコップで掘り起こしたんですが、これが正解でした。 その理由はクリーニング後の姿を見れば納得して頂けると思います。 ちなみに表層に白い粒がところどころ見えていますが、これもチェック!


■ 2017年06月25日 撮影

ハイ、これが理由です。本種の地下部は菌糸を通り越して最早カビ。 脆いとかそう言うレベルではありません。土と一緒に流れて行きます。 流水で土を洗い落とし、辛うじて丈夫な地下部を綺麗に残せました。 地上生虫草の中でも最高レベルの断面作成および掘り取り難易度。 コイツに出会ったら長期戦は必至。今回は本当に運が良かったです。


■ 2017年06月25日 撮影

子実体が中心から裂けたしまったようです。雨が降らなかったからかな? 図鑑では淡い黄色に見えますが、実際には結構鮮やかな色をしています。


■ 2017年06月25日 撮影

結実部拡大。やや白い下地に淡黄色の子嚢殻を半裸生させます。 同じコルディセプス属菌だけあってサナギタケを黄色くした感じですね。 子実体が裂けて断面ができており、子嚢殻が観察しやすかったです。


■ 2017年06月25日 撮影

宿主はコガネムシの幼虫です。ほぼ全体が菌糸に覆われています。 ただお尻の黒っぽい部分だけは綺麗に見えていました。中身はフンかな?


■ 2017年06月25日 撮影

胞子を見てみました。高性能の顕微鏡を持っていなかった時期なのが悔やまれます。 子嚢胞子は糸状で、円筒状の二次胞子に分裂します。 子嚢胞子は64個の二次胞子に分裂しますが、長さにバラツキがあります。 小さいつぶつぶは恐らく分生子でしょうね。


■ 2017年06月25日 撮影

ガガンボさんと掘っている最中に二人で気にしていた地表付近の白い球体。 クリーニングでほとんどが消失しましたが幾つかは菌糸先に残りました。 調べてみるとこれ何とアナモルフ!ヒメクチキタンポタケに似ていますね。 本種は地表部周辺の土中にアナモルフを作り、無性生殖もするようです。

薬効の話も聞きませんし、食毒不明で良いでしょう。毒は無さそう・・・? ただこの掘り取りにかかる時間と手間を考えると勿体無くて食えませんよ。

■ 2017年06月22日 撮影

ガガさんが発見した。小さめですが綺麗な子実体の持ち主でした。 ただ後で写真を見るに地下部がヤバかったようで残念ながらギロチン。 本種に関しては周囲の土ごとゴッソリ行っちゃうのも一つの手ですね。

■Beauveria brongniartii (ボーベリア ブロンニアティ)

■ 2017年07月17日 撮影

やっと出会えました。読みはこれで決定です。これには諸事情有りまして。 カミキリムシの成虫を宿主とするアナモルフ菌類の超有名種ですね。 宿主を選り好みしないバッシアナとは異なり、コチラはほぼ専門家です。 本種は地面に落ちている事は少なく、大抵幹や枝につかまったままです。

マヤサンエツキムシタケのアナモルフであり、学名はコチラに統一です。 しかし和名が無いとこの名を呼ぶとどっちか分からないと言う問題が。


■ 2017年07月17日 撮影

何本か脚を欠損していますが、しっかりと材に貼り付いていて落ちません。 体節部から白い菌糸が吹き出しており、その表面に分生子が形成されます。


■ 2017年07月17日 撮影

極力材を傷付けないよう気を付けて、最低限の切り出しで済みました。 ちなみにこのままケースに封入して立体標本に。たまに眺めてます。


■ 2020年10月04日 撮影

日付に注目です。3年後なんですよね。 実は乾燥標本を水で戻して撮影したんです。 発見当時の2017年は性能の高い顕微鏡を所有しておらず、良い写真が撮れなかったんです。 なので試しに水で戻してみたらメチャクチャ綺麗に組織が復活しました。


■ 2020年10月04日 撮影

菌糸表面に分生子形成細胞が見られます。 その先に付いている小さなツブツブが分生子ですね。 3年以上経った標本でもここまで綺麗に保存されているのですね。


■ 2020年10月04日 撮影

分生子は楕円形でほぼ球形のバシアーナよりも若干、ほんの若干ですが長細い感じです。 流石にこれだけ時間が経つと感染能力は無くなってるでしょうけどね。

実は本種の読みをああ書いたのは、この名前で商品化されているから。 検索するとゴマダラカミキリ等への微生物農薬として商品名も出ます。 上記の分生子を付着させたテープ状で販売され、木の幹に巻き付けて使用します。 幹に害をなすカミキリムシが上を歩くと感染し、子孫を残す前に確実に始末します。 虫の生態を上手く利用したもので、人間には当然無害の優秀な農薬ですよ。


■ 2017年07月17日 撮影

よっ!

一応冬虫夏草の縛りですが、ただのカビたカミキリムシなので食不適です。 むしろ我々が口にする果樹を守ってくれているので、そっとしておきましょう。 ちなみにカミキリムシ以外には無害なようで、内部はウジだらけでしたよ。 乾燥中にボロボロ這い出してきた時は流石にSAN値直葬でしたからね・・・。

■ 2020年08月30日 撮影

ひっさしぶりに出会えましたよ。不思議とカミキリムシに感染してるのは全然見なかったんですよ。 他の虫、口中とかカマキリとか、スズメバチとか、そんなのは普通にボベってるのにです。 やっぱ意外と少ないような気がしますね。

■ 2021年03月27日 撮影

キツネペアを探して訪れたクワの樹下でカミキリムシの死骸を発見。 最初は翅を上にしていたので分かりませんでしたが、違和感を覚えて裏返してみるとビンゴ!


■ 2021年03月27日 撮影

恐らく幹に付いたまま越冬したようで、流石に役目を終えてスカスカになっていました。 脚がほとんど脱落しているのは、幹から離れる時に取れてしまったと考えられます。 しかし菌糸に覆われていた痕跡はしっかり残っており、本種で間違い無さそうです。
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