■Boletellus areolatus (ヒビワレキクバナイグチ)

■ 2021年07月22日 撮影

多分一般的なキノコクラスタの皆様は別にそこまで探し求めてないとは思います。 でも少なくとも私は切望していました。 夏にシイやカシの広葉樹林内の傾斜のある場所に発生する「罅割菊花猪口」です。 菊の花に似ているために付いた名前だったのですが・・・。 2016年になって本種とされていた種は3種類の菌から形成されていたことが判明。 種小名は「網目状の窪みの」と言う意味のラテン語です。

2016年に本種とされたキノコは本家キクバナイグチ、コガネキクバナイグチ、 そして本種の3種から成ることが判明しました。 その中でも無印キクバナイグチと本種は形状や発生環境が似ています。 と言うかこの3種の中ではコガネが明らかに違うってことなんですけどね。


■ 2021年07月22日 撮影

私が本種に出会いたかった理由、それは他の2種を見付けていたことです。 3種に分かれた際に1ページに掲載されていた写真を分けたのですが、ヒビワレだけが見当たらない! 今までこの1種だけ出会っていなかったのです。 1種が3種に分かれたのにその内の1種だけが足りない・・・妖怪1足りないです。 そう言うの本当に悶々とするんですよ!だから凄く嬉しかったのです。


■ 2021年07月22日 撮影

本種を見て真っ先に感じるのは彩度が低いなと言うこと。 他の2種に比べて明らかにグレーっぽいんですよね。赤色要素が少ないと言うか。 傘は赤褐色の表皮が細かくひび割れます。 無印よりも表皮が薄く細かく破れ、コガネよりも圧倒的に色に派手さが無い、そんな感じ。 種小名もこの傘のひび割れを意識しての命名なのでしょう。


■ 2021年07月22日 撮影

裏返してみると管孔は黄色で強い青変性があります。 注目すべきは柄で、上部はクリーム色で下部が薄っすらワイン色を帯びること。 他の2種はかなり柄の赤みが強いので、ここで一番ハッキリ違いが分かると思います。


■ 2021年07月22日 撮影

胞子も観察してみました。 キクバナ系の担子胞子は共通して楕円形で表面に縦じわが存在します。 コガネが最も細長く、無印と本種の胞子が良く似ています。 サイズ的に本種として良い範囲に収まっています。

一応新種なので食毒不明としたいトコロですが、今まで食べられまくっているので食菌で良いでしょう。 ただ他の美味なイグチに比べると風味は劣るので、そこまで無理して食べる必要は無いと思います。 どうせ食べるなら一番色が派手なコガネが食べたい気がしますけど。

■ 2021年07月22日 撮影

本種は雨などで退色したキクバナイグチに似ていることがあるので紛らわしいです。 ただ本家は表皮が分厚くパネル状にひび割れるので、そこを意識して見れば区別は容易です。

■ 2023年08月27日 撮影

探しても探しても見付からず、県外遠征でやっと出会えたキクバナ3種の最後の一角。 まさか普通に地元に居たなんて!あの苦労は何だったんだ・・・。 しかしこの場所、毎年訪れていたので見落としていたとも思えないんですけどねぇ。


■ 2023年08月27日 撮影

本当にヒビワレか?と若干疑ってかかりましたが、この特徴的な傘表皮の構造を見て納得しました。 日が暮れかけていたので全体的に青く写っていましたが、 それがまた本種のこの落ち着いた色合いを引き立てていましたね。また来年もここで会いたいな。
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