■Byssocorticium pulchrum (ビスソコルチシウム プルクルム)

■ 2017年12月30日 撮影

地下生菌目的の観察会にも関わらず地下生菌屋さんをも盛り上げたヤツ。 「地面が青い」との声に近寄ってみると、確かに地面が青くなってました。 最初はコウヤクタケ系だと思ったのですが、すぐに属名が飛び出しました。 聞きなれない属名ですが、非常に美しい背着生の子実体を形成します。 思えばこの段階で異常でしたね。だってこれ、落枝じゃなくて落葉ですし。

国内では本種と「B. efibulatum」の2種類が確認されています。 本種は色の範囲が「Glaucous(■ #6082b6)」から 「Glaucous Blue-Green(■ #3098a6)」と記載されています。 エフィブラツムに比べてやや緑色っぽさを感じられるのが本種のとりあえずの肉眼的特徴です。 再発見時の地域、環境、および外見的特徴から過去のものも本種と判断しました。 厳密には当時の標本を採取できていれば良かったのですが、この場合は無視しました。


■ 2017年12月30日 撮影

子実体は背着生でパッと見はコウヤクタケ科。てかツブコウヤクタケ科です。 特徴的なのはほんの少し緑に寄った水色?ラグーンブルーって言うのかな? とりあえず森のなかにはまず無いであろう色合いなので衝撃的ですよ。


■ 2017年12月30日 撮影

若い内はかなり色が淡いみたいですね。右の子実体に注目です。


■ 2017年12月30日 撮影

ここであることに気付きます。下の方に青い綿毛状菌糸が確認できます。 おかしいんですよね。腐朽材を分解するコウヤクタケ系にしては異質です。 そもそもこんな薄っぺらい落葉から栄養を取っているとは思えませんし。


■ 2017年12月30日 撮影

そのヒントはすぐ近くの斜面下に有りました。これ何だか分かりますか?


■ 2017年12月30日 撮影

拡大するとこの通り、コレ実は本種の菌糸。ではなぜ菌糸が地面に・・・? そう、実は本種はこんな外見ですがブナ科樹木の外生菌根菌なんですよ。 要するにイグチやテングタケ、ベニタケみたいに生木と共生関係なんです。 こんな外見じゃキノコ屋はどう考えても腐植生だと思っちゃいますよねぇ。

いわゆる硬質菌の一種であり食不適です。薄っぺらいですからね。 属的に命にかかわるような毒素は持ってないような気もしますけど。

■ 2018年12月22日 撮影

昨年と同じ京都でのキノコ狩りオフにて待望の再会! まぁ同じ地域とは言え別種の可能性もありますが、子実体の色的に同種と判断しました。 今回はちゃんと顕微鏡観察のために標本を持ち帰りましたよ。


■ 2018年12月22日 撮影

今回も葉の表面に貼り付くように子実体を形成していました。 やはり背着生として振る舞うようですね。 どこに胞子を形成しているかが分からないので、何ヶ所か色が違う部位を持ち帰りました。


■ 2018年12月23日 撮影

帰宅後に顕微鏡で組織を観察してみると、表面の大部分が子実層になっていることが分かりました。 ややピンボケていますが、右に見える担子器を見るに4胞子性ですね。


■ 2018年12月23日 撮影

担子器だけ切り出してみました。実はこの段階で少し本種特有の構造が見えています。 そもそも担子器基部から複数分岐しているのも本種の特徴みたいですね。


■ 2018年12月23日 撮影

胞子は灰青色球形ですが担子器と繋がっていた部分だけがみょんと伸びて尖っています。 内部には油球様の内包物が複数見られます。直径は4〜6μm。 このサイズでここまでハッキリと青さが確認できると言うことは胞子の色はかなり濃いようですね。


■ 2018年12月23日 撮影

本種と「B. efibulatum」との決定的な違いが○で囲った部分。 本種には担子器基部の菌糸の隔壁部にクランプ(こぶ状のもの)が存在するのです。 これはエフィブラツムのほうには存在しない構造です。 これが確認できた時点でようやく本種だと言う確信が持てました。やったぜ!


■ 2018年12月23日 撮影

ダメ押しでもう1つ。子実層より奥の有色の菌糸を拡大してみると、表面に破片状の付着物が確認できました。 この付着物は「B. efibulatum」ではここまで細長くなりません。これも本種の特徴と一致します。 これでやっと種小名まで載せて良いレベルの情報が揃いました。ここまでやらなきゃダメなのはキツいわぁ。
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