★Ciboria shiraiana (キツネノワン)

■ 2012年04月17日 撮影

存在を知ってからずっと出会いたいと思っていたキボリアキンカクキン属の有名種。 春にクワの樹下にしか発生しない子嚢菌「狐椀」です。2012年の目標でした。 養蚕業が激減した現代日本では滅多に見ることができなくなった貴重なキノコです。 人脈を使って1本だけ小学校の授業用に残されたクワに辿り着き発見できました。 全く同じ生態を持つキツネノヤリタケと発生時期が被り、共に見られることも・・・。

本種とキツネノヤリタケはクワ菌核病を引き起こすクワの病害菌として有名です。 クワの花期に雌花に感染し、黒く熟すハズの果実は熟さずに白化して地面に落ちてしまいます。 果実はそのまま菌に侵されて全体が菌核に変化し、そのまま冬を越します。 そしてまた春になると菌核から子実体を伸ばし、新たな雌花を目指します。

このページ、この病気で困ってググって来られる方が多いので、対策を書いておきましょうかね。 キツネノヤリタケも同様ですが、結論を申しますと「白化した果実を落花前に除去する」です。 殺菌剤も悪くないですが、菌核は薬剤耐性が高く、そもそも植物体の殺菌はほぼ無意味です。 しかし一度子実体を発生させた菌核はそれで役目を終えます。 この性質を利用し、地面に1つも落とさせなければ理論上いつかは絶えます。 これに加えて周囲の地面の土を完全に入れ替え処分すれば根絶が早まるでしょう。


■ 2012年04月17日 撮影

直径は大きくても1cm程度。色は褐色で根本に柄を持つ椀形をしています。 柄は地下に潜り、基部には古いクワの実が変化した菌核と言う塊があります。

まず食べる人が居ないので食毒不明ですね。まぁ毒は無くてもマズいでしょう。 基本的に小型の碗形子嚢菌なんてまず食べれませんってか食べれても食べませんよ。


■ 2012年04月17日 撮影

ちなみにこんな感じです。草を退けるとウジャウジャ出てきてテンション上がりました。 むしろ驚いていたのは持ち主の方で「初めて知ったわー」と興奮しておいででした。

■ 2012年04月28日 撮影

発見から10日ほど経ちました。全体的に成熟した個体が目立ってきましたね。 クワの花が咲く時期だけしかキノコを形成しないため見れる期間が短いです。

■ 2012年04月28日 撮影

生態が分かりやすい個体をやっと発見できました。これぞキツネノワンの姿です。 子実体の下に見える青黒い凸凹した塊こそが菌核化したクワの実です。 地表に出ているクワの実からも出るので、この状態なら乾燥にも強いのでしょう。 ヤリにしてもそうですが、なぜこんな特異な生態を持つようになったのかね?

■ 2012年04月28日 撮影

一度クワと言う樹種を学んでおいて正解でした。人も通らぬ峠道でクワの巨木を発見。 遠目で見ても新芽の色合いで「あ、クワだ!」と分かるようになったのは成長ですね。 そこはワンパラダイス!あるわあるわ、やはり発生数も範囲も低地とは別物です! 何より自然の中なので下草が少なく、写真を撮りやすかったのが嬉しかったですね。 でもこれで今後は毎年本種に会えますね。時期が低地よりかなり遅れてますが。

■ 2012年05月03日 撮影

最早見慣れたこの光景。不思議と3株まとまってることが多いですね。

■ 2012年05月03日 撮影

深山のクワの樹下にやっとキツネノヤリタケが発生。ツーショット成功です。 片方しか出ないって可能性もあるのですが、不思議と両者揃って出てますね。 こんなに姿は違うのに生活リズムは同じだと言うから不思議ですよねぇ・・・。

■ 2012年06月05日 撮影

ワン発見の興奮から1ヶ月ほど経ちました。そんな時に時間差で以外な出会いが。 とあるお宅の庭にある(多分)ブラックベリーの実がなんと真っ白になっていました! これぞキツネノワンによるクワ菌核病。凄まじい感染規模で驚きましたね。 最盛期に鉢植えに2株だけ発生した痕跡を見付けていましたが、ここまでとは・・・。

■ 2013年03月24日 撮影

少し早めに訪れたいつものクワの樹下。まだ魅力的な椀は全然見当たりませんでした。 でも良いこともありました。地面に転がっている古いクワの実をひっくり返すと・・・。 なんとキツネノワンの幼菌です。埋まってないのに出るとか強靭な種ですな。 かなり乾燥しているはずなのですが、やはり菌核は乾燥にめっぽう強いようですね。

■ 2013年04月13日 撮影

2013年は絶好調だったのが本種。色んな場所で出会うことができ大満足でした。 発生時期に良い具合に雨が降ったので、コンディションの良い個体がいっぱい! この後草刈りで一掃されましたが、ちゃんと生き残っているようで安心。


■ 2013年04月13日 撮影

掘り起こすとちゃんと黒い菌核が出て来ました。本当に地下の柄が長いですね。

■ 2013年04月13日 撮影

ちょっと面白かった一枚です。これだと「椀」と言うよりは「袋」に近いですね。 子嚢盤は大型になる個体でも最初は口が狭く、こんな外見になるみたいです。 袋の中に太陽の光が当たって透けて見え、とても良い被写体になってくれました。

■ 2013年04月13日 撮影

ここは標高の高い峠のクワの樹下。発生範囲が広い分、低地より密度は低いです。 ですがここの個体は美しい形状の物が多く、無理して上がってくる価値アリ! この日はまだ早かったのか、相方のキツネノヤリタケの発生は見られませんでした。

■ 2013年05月03日 撮影

少し時期を外して標高の高い峠のクワの樹下まで来ました。良いコンビですね。 丁度この時期はお仲間のキツネノヤリタケも同時に見れるので絶好のチャンス!

■ 2014年04月05日 撮影

初めて本種を発見したクワの樹下に戻って来ました。また許可を得て畑の中へ。 もう畑の持ち主の方とは顔見知りになっちゃいましたね。菌が繋ぐ絆なのか。 まだ少し早いようで幼菌でしたね。でもちゃんと椀になりそうな形してる。

■ 2014年05月03日 撮影

道路工事中でいつもなら数分で行けるはずが20分以上かかってしまいました。 しかしお陰で今年も見事な大群生に出会いました。この峠は良い場所ですね。


■ 2014年05月03日 撮影

やはりここの群生は地面が草に覆われているので汚れず傷みが少ないです。 低地だと雑草で擦れたり雨での泥ハネで汚くなることが多いですからねぇ・・・。 周囲にはワンほどではありませんがキツネノヤリタケも点在しています。

■ 2014年05月03日 撮影

綺麗な群生を発見!範囲的に1つの菌核から発生していると思われます。

■ 2014年05月18日 撮影

近所の公園でワンの大発生に出会ってから一週間後、見上げるとありました! 上空に明らかに変な色合いの感染したクワの実を発見。膨らんでますね。 ワンが肥大でヤリが縮小と聞きましたが、肥大性菌核病だからワンですね。 ただ文献や写真が少なく、もしかしたらこれが縮小性なのかも知れません。


■ 2014年05月18日 撮影

感染果実が手に届く場所にあったので一つ採ってクワの葉に乗せてみました。 一つ一つが膨らんではち切れそうになってます。これが後に菌核化します。

■ 2016年05月04日 撮影

今年は季節的なものかも知れませんがあまり調子が良くなかったワンの方。 今まで見たような立派な群生も見られず、個人的にはちょっと残念でした。 しかも近所のクワの樹が切られたのでもう徒歩で見に行けないよう・・・。

■ 2016年05月04日 撮影

ちょっとホッとした一枚。仲良いね君ら。

■ 2017年04月30日 撮影

またキツネノヤリタケと一緒に出てるのかと思ったら・・・普通のキノコでした。 こうして見ると本種の基部にあるはかなりしっかりしているのが分かります。

■ 2017年04月30日 撮影

綺麗なワンを発見。この場所は沢筋なので地面が苔生していて美しいです。 これ撮影時は気付きませんでしたがヤリの幼菌が写り込んでるんですよね。 今年は雨が少なかったためか全体的に発生が遅れているように思います。

■ 2017年05月06日 撮影

個人的に大ヒットだった一枚。カエデの実生苗を傘にして生えていました。萌え

■ 2018年04月15日 撮影

一昨年辺りに発見した低地と言うか近所の発生地。大きな道のすぐ横です。 何でこんな所にって場所に1本だけ立派なクワの木が・・・切られないでくれ! ただ良い場所ではあるのですが、人通りが多い!視線が痛い!見るな!


■ 2018年04月15日 撮影

そう言えば最近は撮ってなかったなと思い、久々に菌核を掘り出してみました。 ワンの菌核はヤリに比べて浅い場所にあるので、「掘る」と言うか「拾う」です。 この小さな菌核のどこにこの数の子実体を出すだけのパワーがあるのやら。

■ 2018年04月15日 撮影

菌核ゴロゴロ。この黒い不規則な形状をした塊、その全てが本種の菌核です。 これだけの密度となると恐らく木自体の病害も相当なんじゃないでしょうか。

■ 2018年04月15日 撮影

Twitterに投稿したら不適切画像に認定されてしまった一枚です。どこが? まぁ恐らく察しは付きますけどね。多分蓮コラ的な扱いになってるんでしょう。 ここは草に隠れた場所が湿度が高く、掻き分けると相当な数が見られます。

■ 2018年04月21日 撮影

平日に見事なクワの樹を発見。しかし時間が無かったためチラ見してスルー。 休日に出直すとそこはキツネの楽園でした。今までで一番良い場所かも?

■ 2018年04月21日 撮影

理想的な写真も撮れましたが、こう言う時に悩むのが主役をどちらにするか。 今回は手前にあると言う理由でワンに軍配が上がりましたが悩ましいですね。 この2種はどうやっても一緒に映る機会が多いので・・・仲が良いのも困りもの。

■ 2018年04月28日 撮影

gajin氏とのプチオフにて最大目標だった本種。1ヶ所目では不作でした。 しかしモリシア属菌を探してヤシャブシのポイントを訪れた際に新発見! 良い感じに群生しており、納得のゆく構図を写真に収めることができました。 ただす誤ってすぐ隣のイラクサに触れてしまい、一日不快な思いを・・・。

■ 2018年05月05日 撮影

新顕微鏡で撮影するためアメジストの詐欺師さんとオフ。私はメイン標本採取。 見慣れたキノコだけどやっぱり見てみたいと思い適当な子実体を持ち帰り。 子嚢内部に並んでいる胞子は8つ。子嚢自体も大型で見応えがあります。


■ 2018年05月05日 撮影

胞子は楕円形で内包物が見えます。細かな油球なのかな?


■ 2018年05月05日 撮影

メルツァー試薬で染色しました。子嚢自体は全体に赤く染まる偽アミロイド。 子嚢の先端は頂孔アミロイドなので先っちょだけが青く染まっています。 右端の胞子が抜けた子嚢を見ると先端だけ青くなっているのが分かりやすい。

■ 2019年04月27日 撮影

この年はほとんどの地点で例年に比べて発生量が乏しかったです。 雨のせいか気温のせいかは分かりませんが、今年は外れ年でしたね。 それでも美しい子実体は見れましたので、一応は及第点でしょうかね?

■ 2021年04月27日 撮影

ワンもヤリも大不作だった2020年の地元。 しかしコイツを見ないと落ち着かない!と思って探すも見付かるのは既にヤリ。 ヤリのほうが発生が遅いハズなので、そうなるとワンはもう手遅れです。 なので意地でも会いたくて季節が遅れているであろう標高の高い場所まで見に行きましたよ。


■ 2021年04月27日 撮影

ねっとりと這い回るジャゴケに囲まれて発生していて、これもまた良い感じです。 やはり本種はこの厚みと深さがある子嚢盤が凄く魅力的ですよね。 キンカクキン科菌は平らな椀になるものが多いので、この安定感のある形状は見るとホッとします。
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