★Ciboria sp. (アケビタケ)

■ 2016年10月22日 撮影

イトヒキミジンアリタケの坪を訪れた際にふとアケビの落果を目にしました。 もしかして居るかな?と軽い気持ちで覗いてみたら本当に居てビックリ! 前年に落ちた各種アケビの果皮を菌核化して発生する「木通茸」です。 キツネノワンと同じキボリアキンカクキン属の子嚢菌類の一種だそうです。 しかしクワやハンノキ等に比べて知名度が低く、あまり知られていません。 ちなみに学名はまだ提唱段階。この和名もまだ仮称段階なので注意。

ここのはミツバアケビでした。当然ですがヤラセで横に置いてます。 本種に関しては現在はキボリアキンカクキン属とされていますが、そうではない可能性が指摘されています。 今後属名レベルで変更される可能性があるので要注意。イグチ氏ー!


■ 2016年10月22日 撮影

子実体は有柄椀形で暗赤褐色。赤さはモクレンのアイツの比ではありません。 かなりドギツイ色をしているので根本の黒い菌核との対比が見事です。 ただ古くなると赤みが失せて灰紫色に近くなり、全然印象が変わります。


■ 2016年10月22日 撮影

子実体の椀の外側が印象的で、何と赤い粗毛に覆われています。 キボリアキンカクキン属の外側ってもう少しのっぺりしてるんですけどね。 この属名も変更になる可能性があります。今後の研究が待たれます。

菌核は大きいですが子実体自体は極小。アケビ食ったほうが良いです。 しかし鮮やかな紫色の果実とのツーショットは実に写真映えしますね。 特定植物体で菌核を作るタイプの子嚢菌類好きなら押さえておきたい?

■ 2016年10月22日 撮影

コチラは少し離れた場所で発見した菌核。表面に無数の子実体が見えます。 周囲には古いアケビの果皮が多数転がっており、感染も起きていそうです。


■ 2016年10月22日 撮影

子実体は小型で新鮮ですが、色は赤っぽくなく灰紫褐色って感じです。


■ 2016年10月22日 撮影

菌核を観察してみました。本種はアケビの果皮をまるごと一個利用します。 カッターの刃が通らないほど硬いので手の力で一部引き裂いてみました。 アケビの果皮の形状をそのまま残して菌核化しており、内部は空洞です。 また果皮は劇的に縮んで菌核の厚みは全然ありません。干し肉みたい。 モクレンに例えれば、花弁をまるまる置き換えているような感じですね。

■ 2016年10月22日 撮影

菌核が埋もれていますが、不自然に赤い子嚢盤が・・・居ますね。

■ 2016年10月29日 撮影

本種の知名度が低い原因は恐らく「アケビに出るとは思えない」からかと。 確かに山を歩いてみても落ちた実は見ても観察しようと思いませんしね。


■ 2016年10月29日 撮影

比較的綺麗な子実体です。菌核から沢山子実体が出るって意外な印象。 培養する際は果糖を培地に加えるとすくすくと成長してくれるそうです。 キツネノワンでもそうですが、当分が大好きな甘党さんなんでしょうね♪

■ 2017年10月18日 撮影

一番大きなアケビの木が切られて心配していましたが、何だかんだで無事でした。 流石に数が減っていましたが、新しい果皮の供給もあり、とりあえずは一安心かな?


■ 2017年10月18日 撮影

本種の基本は暗赤色〜灰紫褐色なのですが、このようなオレンジ色もあります。 見た目的に若い子実体だと思うのですが、赤黒い幼菌も普通に存在しています。 コレは単なる成長段階の違いなのか・・・2種類あるってウワサも聞きますし。

■ 2018年10月20日 撮影

新しい顕微鏡で見てみたかった子嚢菌類の1つでした。 何よりネット上にも情報が少なく、しっかりとミクロのレベルで観察したいと思っていました。 地元のフィールドは自然保誤のせいで吹き飛んでしまったので別の場所を見付けておいて正解でした。


■ 2018年10月20日 撮影

乾いた場所なのですが状態は良いですね。乾燥に強いのは流石の菌核持ち。


■ 2018年10月20日 撮影

やはり2色あると言うのは成長段階と言うか生育段階の違いで良さそうですね。 ただ別に胞子が積もっているワケでもないですし、何でここまで子実層面の色が変わるのかは謎ですね。


■ 2018年10月20日 撮影

子実層面を顕微鏡観察してみました。特徴としては側糸が2種類あると言うことです。 1つは褐色で隔壁が確認できないもの。下半分には隔壁があるのかな? 子実層面が赤く見えるのはこの側糸に色素が含まれているからみたいですね。


■ 2018年10月20日 撮影

結実部を切り出してみるともう1つの側糸、無色で隔壁を持つもの。 有色の菌糸と比べると細いですね。子嚢内部に見える子嚢胞子は8個。


■ 2018年10月20日 撮影

メルツァー試薬で子実層面を染色してみると全体が褐色に染まりました。 子嚢胞子が成熟した子嚢も染まっているところを見ると偽アミロイドっぽいですね。 子嚢の割合が大きいためかか全体的に褐色になってます。


■ 2018年10月20日 撮影

先端を高倍率で観察するとちゃんと通り道が見える頂孔アミロイドでした。 肥厚部がかなり発達していますね。


■ 2018年10月20日 撮影

子嚢胞子は楕円形で両端に小さな油球を内包しているのが特徴です。 ただこの油球は油浸対物レンズなどの高倍率で観察しないと確認できないので要注意ですね。 実際に中々見れなくてこの写真も撮るのに苦労しました。


■ 2018年10月20日 撮影

外皮層を切り出してみました。一番外側の細胞は球形


■ 2018年10月20日 撮影

球形細胞の最外面を拡大してみると丸い細胞の中にパラパラと褐色のものが混ざっているのが分かります。 これも本種の特徴として知られているもののようですね。

■ 2018年10月20日 撮影

この場所は近くに池も川も沢も無くかなり乾燥した場所なのですが、発生量はかなりのものですね。 面白いのが菌核を持ち上げると直下に白い菌糸が張っていることが多いんですよね。 これがアケビタケのものかどうかは分かりませんが、少なくともそれくらい多湿環境になっています。 菌核も一部腐ったようにグズグズになっていたりします。


■ 2018年10月20日 撮影

ちなみに菌核と化した果皮を顕微鏡で見てみましたが、見た目で菌体だなって部分が見当たりません。 キツネノワンやモクレンのキンカクキンなどは菌核を切れば白っぽい組織が見えるんですけどね。 普通に顕微鏡で見ても菌糸の混じった植物体の残骸のようなものが見える程度です。

■ 2018年10月20日 撮影

メッチャ頑張ってヤラせました。 これバラしてしまうと高い枝の先に置いて撮影してるんですよね。 落下した果皮と並べて撮影するのは簡単ですが、まだ生っている果実とのツーショットはあり得ませんからね。 手前の枝は手に持ってます。


■ 2018年10月20日 撮影

椀の外側はこんな感じ。短い柄があり、表面は淡黄褐色で放射状のしわがあります。 また表面は鱗片状で他のキンカクキン系と比べるとちょっと異質な感じですね。 基部は黒色に近付きます。鱗片が赤褐色になってくると全体的に赤っぽくなります。

■ 2019年10月13日 撮影

秋も深まるハズが一向に訪れない秋。ヌメリイグチとハツタケが出るポイントもスカ。 しかし探している最中にアケビの果皮が落ちていることに気付き、地面を探してみると・・・。 ありました!この場所では初発見です!


■ 2019年10月13日 撮影

発生状態は良い感じですが、このフィールドのアケビタケは妙に褐色なんですよね。 暗赤色〜暗紫色って印象だったので、ここまで茶色っぽいのは意外かも。 流石に別種ってことは無いでしょうけど、ここまで色の個体差があるのは珍しいかも。

■ 2019年11月02日 撮影

どろんこ氏をお招きしての地元オフ会。 ターゲットはウツロイモタケでしたが、ちょうど行きしなにフィールドがあるので立ち寄ってみました。 冬虫夏草好きの氏ですが、その生体が冬虫夏草に通じると興味津々でした。 自分がキンカクキン科が好きな理由がまさにソレなのでメッチャ同意ですよ。

■ 2020年10月11日 撮影

今年も出ていました。安定して発生するフィールドを見付けられて一安心。 ここは開発の危険も無いでしょうし、毎年出会えるのは大きいですね。 しかしまぁいつ見ても色が安定しないこと。

■ 2023年10月21日 撮影

この日は地元フィールドを中心に散策。カキノミタケの有性世代が見付かる大収穫でした。 お腹いっぱいではあったのですが、せっかくなのでアケビタケポイントへ。 落葉に埋もれて探しづらかったんですが、何とか綺麗な発生を見ることができました。 ちなみに後ろのヤラセのミツバアケビを人生初試食しましたよ。甘〜い!


■ 2023年10月21日 撮影

マツの葉っぱに埋もれていましたが、お陰で状態は良かったですね。 立派な菌核から大量の子嚢盤を発生させていました。


■ 2023年10月21日 撮影

子嚢盤は発生最盛期って感じですね。やっぱり赤褐色と灰色の2色が存在しますね。 別種と言うワケではなく、成長段階によって子実層面の色が変化するようです。 しかし結構大きい子嚢盤がこれだけの数発生していると迫力ありますね。


■ 2023年10月21日 撮影

ひっくり返してみると特徴的な裏側が確認できました。 本種は子実層面は赤系なのに裏側が黄色なの凄い違和感あるんですよね。 やっぱ他のキンカクキン科とはちょっと違うような気がします。
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