■Clavaria zollingeri (ムラサキホウキタケ)

■ 2022年10月15日 撮影

しんや氏をウメムラセミタケの発生坪へご案内した際に期せずして遭遇。 今まで何度も見ては来ましたが、文句無しの過去最高クオリティだったと思います。 非常に特徴的な紫色が美しいホウキタケ形のヒダナシタケ型菌「紫箒茸」です。 各種林内地上に発生しますが、この場所はヒノキの植林。好き嫌い無しですね。 元々あまり大型化しない種なんですが、ここのものはどれも中々のサイズでした。 ちなみに名前に「ホウキタケ」とありますが、属名を見ても分かるようにシロソウメンタケ属です。

また小型のものの中にはヒナサンゴタケと言う別種が紛れていることも。 ただ学名の「Ramariopsis pulchella」で海外の図鑑を見ると先端付近の形状や基部の色が異なります。 国内で見られる小型のムラサキホウキタケと思しきものには見られない特徴です。 そのためこのページでは小型のものも全て本種として掲載します。 ちなみにムラサキホウキタケモドキは色も形状も、属さえも異なります。


■ 2022年10月15日 撮影

和名の通り紫色のホウキタケって感じの見た目です。 子実体は複数分岐を繰り返してホウキタケ型になり、色は爽やかな紫色。 状態によってはちょっと赤紫色っぽかったり青紫色っぽかったりします。 にしてもこのサイズは凄い・・・ここまで大きい子実体にはそう出会えないでしょう。 なお右側の凹んだ部分にはヒノキの枝が乗っていました。


■ 2022年10月15日 撮影

ヒナサンゴタケとの違いとしては、本種は先端が丸みを帯びる傾向が強いってことですかね? あと本種の肉にはあまり透明感がありませんが、ヒナサンゴタケは透明感があります。 それにしても不思議なキノコです。この色を自然界の菌類で見ると衝撃がデカいですね。


■ 2022年10月15日 撮影

少し古い子実体を胞子観察用に引っこ抜いてみました。 本種は子実体表面全体が子実層面なので白っぽく粉を吹いたようになっています。 成熟することで淡色に、そして赤っぽくなる傾向があるように思います。 周囲に破片が散っていますが、本種は肉質が脆いので簡単に崩れるんですよね。


■ 2022年10月15日 撮影

胞子観察のために子実層面を観察。肉質が脆く、生の状態で薄い切片を作るのは難しいですね。 恐らく乾燥させてから切るのがベストなんだと思います。一応ノルマの担子器は確認できました。 本属菌は4胞子性だと思うのですが、見付かるのは2胞子性のものばかり。合ってるかな? この倍率で見ても紫色っぽいのが分かりますね。


■ 2022年10月15日 撮影

担子胞子を観察してみたんですが・・・あれ? 図鑑では楕円形とされているのですが、ほぼ球形に近いレベルの楕円形ですね。 海外の写真だともっと細長いんですが、この胞子で間違い無かったです。 海外の写真だともっと枝が太くて分岐も少なく、草っ原に出てるんですよね。本当に同種? とりあえず広義のムラサキホウキタケとするしかありませんね。

こんな違和感MAXな見た目ですが風味も良く食菌として利用可能です。 ただ肉質が脆く収量も見込めないことなどから利用は一般的ではありません。 仮に食用に利用するにしても彩り程度ですし、ウォッチング価値のほうが高いでしょう。

■ 2015年07月18日 撮影

初発見はどろんこさんのフィールド。冬虫夏草を探した後でした。 猛烈な暑さの中でしたが、なぜか本種を見ると涼しげな雰囲気が。侘び寂び? 図鑑で見た時からずっと見たいと思っていたので、邂逅叶った時は嬉しかったですね。


■ 2015年07月18日 撮影

拡大してみました。子実体は全体的に紫色で非常に美しいです。 肉質はかなり脆く、写真でも少し当たっただけで折れた部分が見えます。 子実体は早い段階から細かく分岐し、まるで陸にサンゴが生えたかのよう。

■ 2016年10月09日 撮影

今まで他県でしか出会っていなかった本種、地元に普通にありました。 しかもここ竹林なんですよね。樹種はあまり関係無いのかな? もう老成してきているようで、基部や先端部が黄色くなっています。

■ 2017年07月09日 撮影

地元で見る本種はモドキに毛が生えたような分岐しか無いことが多かったです。 ですが今回見付けた子実体は良い感じに枝分かれが多くてホウキタケっぽい!


■ 2017年07月09日 撮影

緑色の苔の中に生えているとやっぱ色合い的に浮いて見えます。綺麗です。 ただ流石に幼菌時の透明感と鮮やかさは若干失われてしまうみたいですね。 やはり先端が黄色くなる手前くらいが一番良い状態になりそうな感じかな?

■ 2017年10月18日 撮影

長らく初代TOP写真だった子実体です。毎年同じ場所に出るので安心感があります。 そう言えば全体的に細いものはヒナサンゴタケの疑いアリとのことですが・・・? でも属が違うだけあって基本構造がそもそも違う気がするんですが、どうなんでしょう?

■ 2018年10月18日 撮影

地元の観察会にて小さいながらも美しい色合いの子実体を発見。 参加者の皆様にも好評で良い被写体となっていました。 ヒノキの植林内なのですが、樹種とかあまりコダワリは無いのかな?

■ 2019年06月16日 撮影

安定のムラサキホウキフィールドです。サイズに差はありますが、安定して毎年発生します。 個人的にはこんな感じで枝分かれが長いものより、根本が太い子実体が被写体としては好きですが。

■ 2019年07月13日 撮影

約1月後に訪れたいつものムラサキホウキタケフィールド、何と言うかまぁこの安定感は他のキノコも見習って欲しいです。 本当に安定していますし、見られる期間も梅雨〜秋とかなり長いので安心できますね。 あと個人的には背景のコケの緑と本種の色が絶妙にマッチするのがまた何とも堪りません。

■ 2021年10月09日 撮影

2代目TOP写真です。この時は「これは中々抜けないぞ〜」と思ってたんですけどね。 まさか1年後にとんでもないのが出るとは思わなかったので・・・。

■ 2022年10月08日 撮影

TOP写真となった大発生ですが、実は1週間前に発生は確認していました。 ただまだこの時は幼菌であまり大きくなかったので採取しませんでした。


■ 2022年10月08日 撮影

拡大してみるとこんな感じ。美しい青紫色です。まだ枝分かれが少なく分岐先も短いです。 周囲のコケの緑とのコントラストもまた良いんですよね。 比較的目にするキノコではあるのですが、被写体として優秀なのでつい撮っちゃいます。


■ 2022年10月15日 撮影

思えばこの子実体の発見が大発生発見に繋がったんですよね。 1週間後の同一子実体ですが、ここまで見た目が変わるとは思いませんでしたね。 子実体の成長はもちろんですが、色の変化が一番の驚きです。 あの鮮やかな青紫色は淡紫色に変化していました。 担子器が形成されたことで白っぽくなるのは当然ですが、色もかなり抜けちゃうんですね。

■ 2022年10月15日 撮影

不自然にコケが剥げた場所から発生しています。シカにでも食われたのかな? 何か因果関係があるのかとも思いましたが、普通に奥にも出てるので偶然でしょう。 ツチダンゴは動物が掘った後に出ると聞きますが、あれは元々そこにあって掘らせてるんでしょうし。

■ 2022年10月15日 撮影

と言うことでこの日はこれ以外にも複数の美しいムラサキホウキタケを見ることができました。 この日はコレ以外にも複数のRamaria属が見付かり、ホウキタケ型好きなしんや氏もこれには大喜び。 その中にカエンタケが含まれていたのはちょっと面白かったですが。
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