★Coprinopsis atramentaria (ヒトヨタケ)

■ 2009年11月14日 撮影

美しい子実体が発見できたのが地味に嬉しい!・・・のでムダに写真縦長です。 頻繁に訪れる公園の道路脇に発生していました、って言うか毎年発生しています。 長期間に渡って草地や道端などの人目に付きやすい地上に発生するので見た人も多いでしょう。 和名は何とも風流な響きの「一夜茸」。その理由もとても味のあるものだったりします。 種小名は「インクのような」の意味。海外でも「ink cap」と呼ばれます。

非常にややこしい属名の変更を経験した種です。 以前はヒトヨタケ属として「Coprinus atramentarius」の学名が当てられていました。 しかし学名としてのCoprinus属はササクレヒトヨタケ属に変更となり、 本種を含め多くの種がヒメヒトヨタケ属に変更となりました。 また同時に種小名が男性形容詞から女性形容詞に変更されています。 とは言えヒトヨタケはヒトヨタケなんですけどね。


■ 2009年11月14日 撮影

傘は灰色〜灰褐色で、最初は弾丸のような形状をしていますが、やがて鐘状に開きます。 この細長い柄に縦に長い傘は実にヒトヨタケ系だなぁと思えますね。 傘は繊維状で成長すると縁部が細かく裂けます。 どうも複数株まとまって発生しやすいようで、こんな感じでまとまって生えていることが多いです。


■ 2009年11月14日 撮影

すぐ隣に発生していた別個体です。これ同じ種なんですよね。 本種の和名である「一夜」は「一晩で溶けてしまう」と言う意味を指します。 本種を含むヒトヨタケの仲間の多くは成熟すると傘が黒色に液化する性質があるのです。 これは傘そのものが液化することで胞子を含んだ状態で溶出し、胞子を拡散する性質があるためです。 実際には1日以上かかることもあり、白い柄は残ります。

食べることができるキノコですが、酒と共に摂取すると中毒することで知られます。 毒成分は属名にもなっているコプリン。 このコプリンの代謝生産物がアルデヒド脱水素酵素の働きを阻害し、アルコールが分解されなくなり悪酔いを引き起こします。 死ぬようなことは無いですが、激しい悪酔い状態になります。 しかし味は悪くなく、酒を呑まないには結構人気があるキノコです。 ちなみに別種のササクレヒトヨタケは酒と共に食べても中毒を起こしませんので、コチラは安牌で栽培もされています。

■ 2006年10月20日 撮影

初発見はキノコの趣味を始めた年の晩秋、多分もう行くことの無いであろうフィールドですね。 久々に行ってみたくはありますが、もう道も覚えていないだろうなぁ・・・。

■ 2007年11月11日 撮影

久々に出会えました。やっぱり日の良く当たる草地が好きみたいです。 公園の片隅に10株ほど、適度に間隔を空けて発生していました。 不思議と幼菌に良く出会います。もうちょっと溶けた姿も見てみたいんですけどねぇ。

■ 2007年11月11日 撮影

遠方のフィールドには行けなくなりましたが、地元で安定して発生するフィールドに出会えました。 見付けるたびに食べてみたいなぁとは思うのですが、酒が飲めない人でもちょっと勇気が要りますね。


■ 2007年11月11日 撮影

裏返すと柄の白さとひだの黒さのバランスが絶妙でとても美しいんですよ、本種。 食える個体を探しているのですが、どれもひだが真っ黒で旬の短さを痛感します。 ひだが白い若い菌は食用なのですが、旬も短かさは写真と同じで困りますね。 ちなみに基部に変な段差がありますが、後述しますがこれ実はつばです。

■ 2008年12月06日 撮影

もう12月だと言うのにまだ発生が続いています。息の長いキノコですねぇ。 場所は2006年の写真と同じ草地です。まさかあるとは思いませんでした。 いい加減に黒く液化した姿が見たいのですがね・・・念願未だ叶わずです。


■ 2008年12月06日 撮影

縦に割ってみると今まで気付かなかった本種の面白い構造が良く分かります。 まず柄ですが、下方につばがあります。これは幼菌時に傘が縦に長いためです。 また傘に厚みがあまり無く、柄が傘の頂部まで貫通しているように見えます。 随分厚みがある傘に見えますが、断面を見るとほとんどひだで占められてます。 傘の周囲からすでに黒化が進行し始めています。まだ先端部は食えるんでしょうか。

■ 2009年04月27日 撮影

良い雰囲気だったので思わずパシャリ。シロツメクサとスギナに囲まれてました。 傘の周囲が液化しだした所で雨がパタッと降らなくなり、乾燥が進んでこの状態で現在休止中のようです。 やはり春は良いものですね。周囲が華やかだとキノコも映えます。


■ 2009年04月27日 撮影

液化途中で乾燥してしまったので裏側も溶けずに残っていました。 こうして見るとひだの密さに驚かされます。 風による胞子拡散よりも液化による流出を優先するなら、表面積を増やす工夫としてはパーフェクトです。

■ 2010年04月17日 撮影

見覚えのある写真だなー。このページに似た時期、似た背景の写真がありますよね、すぐ上に。 そうです全く同じ場所なんです。毎年この時期になると欠かさず顔を出します。 こんな直射日光ガンガンで盛り土なんて乾いた場所でも力強く育っています。

■ 2010年10月10日 撮影

やっぱ群生してるとヒトヨっぽさ倍増ですね。ちなみにTOP写真と同じ場所です。 どの図鑑を見てみても一ヶ所からワッと生えている姿ばっかりですし。 結構柄が長いのでネナガノヒトヨタケを疑ったりもしましたが、やっぱ無印っぽいです。

■ 2013年05月03日 撮影

自分でも良く見付けたなと感心します。何という保護色・・・。 本種も撮影日時を見れば分かりますが時期外れのオールラウンダーです。 毎年春と晩秋に発見が集中しています。不思議とキノコの多い時期に不在です。


■ 2013年05月03日 撮影

引っこ抜いてみました。やはりこの白黒のコントラストは見事としか言えません。 胞子がもう飛び始めており、柄の上向き部分に黒い胞子が降り積もっています。

■ 2013年05月18日 撮影

不思議な事にたまにこう言う濃色の鱗片を傘に持つ個体が居るんですよね。 小さい個体で見れて大きい個体で見れないこともあり、生育不良とも思えません。 傘が開いた個体も綺麗ですが、本種の仲間はこれくらいが一番愛らしいですよね。

■ 2013年05月18日 撮影

上の写真の子実体のすぐ近くに出ていたのですが、やたら色が薄くて鱗片もありません。 別種とも思えないですし、個体差なんでしょうね。

■ 2014年10月26日 撮影

道路の側溝脇に液化状態が良く分かる感じの株立ちを発見しました。 傘の周囲から真っ黒な粘液状になって垂れて行く様子が良く分かります。 溶ける前に傘の周囲から上向きにカールします。

■ 2016年04月23日 撮影

冬虫夏草を探して沢筋を歩いていたら道の上に生えていて危うく踏みそうになりました。 色が地味なのでもう少し小さかったら木っ端微塵になっていたでしょうね。 本種は春にも晩秋にもたまに出て来るのでこの時期には貴重なハラタケ型です。


■ 2016年04月23日 撮影

可愛いので引っこ抜いてみました。もうかなりひだが黒色に変化しています。 所々にくっ付いている赤い粒々はダニではなくマルトビムシの1種です。 ミクロの虫を撮影している方でも同定は難しいのだそうですが、一体何者なんでしょう?

■ 2017年05月04日 撮影

またオマエか!昨年と同じ場所・・・って言うか毎年決まってココに出ます。 そして毎年決まってこの赤いマルトビムシの仲間がヒトヨを貪り食ってます。 キノコなら結構何でも行けるらしく、良くニセヒメチチタケとかも食ってます。

■ 2017年05月04日 撮影

いつものフィールドで黒い花が咲いているかのような光景に遭遇。 雨が多かったのですが樹下だったため雨粒を免れていたようです。 傘の周囲が放射状に裂け、その隙間に液化した傘が伸びたような黒い水かきが見られます。 傘が大きく開くと傘の周囲が盛り上がって相対的に傘中央が凹んで見えますね。
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