★Cordyceps farinosa (コナサナギタケ)

■ 2019年01月12日 撮影

かなり小型の種なのですが、その色から森の中でも比較的見付けやすいです。 和名「粉蛹茸」。ハナサナギタケに近縁な冬虫夏草の一種です。 本種はガ、特にかなり小型のガの蛹から発生するのが特徴ですね。 発生時期は当然夏場が最盛期ですが、冬場に地下生菌を探して落ち葉を掻くと良く見付かります。 写真で見るとそこそこ大きく見えますが、高さ1cmにも満たないサイズです。

本種は子嚢菌類でありながら子嚢殻を作らず分生子で繁殖する不完全菌類。 アナモルフ菌類と呼ばれる一群で、白色粉状の分生子を持っています。 以前はIsaria属でしたが、属名統一の流れでCordyceps属として扱うこととなりました。


■ 2019年01月12日 撮影

小さなガの繭から複数の分生子柄束を出しています。 全体的に白色か柄は薄い黄色で、先端部は分生子に覆われて白色粉状になります。


■ 2019年01月12日 撮影

帰宅後にクリーニングしたものを黒バック撮影してみました。 全体的に白く見えた分生子柄束ですが、どうやら分生子が積もっていただけで少し黄色いですね。 薄い繭の隙間を通り抜けるように出ているため、完全なクリーニングは不可能ですね。


■ 2019年01月12日 撮影

繭の反対側を破ってみました。中には菌糸に覆われた宿主が見えます。


■ 2019年01月12日 撮影

分生子柄束を1本だけ切り取って低倍率で観察してみました。 粉状で普通に水封しても気泡だらけになってしまうため無水エタノールで封入しています。 まぁ観察結果はこんな感じで凄まじい量の分生子が放出されています。


■ 2019年01月12日 撮影

本種の分生子柄と分生子形成細胞はこんな感じ。多少枝分かれしますが輪生しています。 外見の似たIsaria属菌やBeauveria属菌は分生子形成細胞が少なかったりジグザグだったりで全く異なります。 ただ時期的に古かったかな?もっとキレイに見えるハズなので最盛期にリベンジですね。


■ 2019年01月12日 撮影

分生子は楕円形で2〜3μm。反っているものが多いのはやはり古さか。 確かに発生時期から半年近く経っている可能性もありますからね。

近縁のハナサナギタケは薬用として人気ですが、本種は利用価値無し。 もしかすると薬効は有るのかもですが、小型で商業価値が低いのかも。 また本種は宿主のサイズに対して子実体が小さいので、それも原因かな?

■ 2014年10月18日 撮影

地元の里山を歩いていて道すがら幾つか白い塊を発見。目立ちますね。 葉の破片を繋ぎ合わせた繭の中に蛹が入っているようです。いざ分解!


■ 2014年10月18日 撮影

周囲にはかなりの発生が見られたので状態の良い3株を持ち帰り、クリーニング後に白バック撮影しました。 まだ撮影技術が足りませんでした。これが限界です。 しかしこんな小さな蛹すら標的となるとは、ガの世界は生き辛いのかも?

■ 2014年10月18日 撮影

柄が褐色を帯びるタイプの子実体。本種は形状にかなりの差が有ります。 普通は短い柄を持っていますが、生育環境ではこのように長い柄になります。 宿主の死骸は繭の中に有り、落葉を糸で繋ぎ合わせて守られています。 ピンセットで慎重に剥がしますが、編まれた糸が邪魔で作業は1時間近くかかりました。


■ 2014年10月18日 撮影

ちなみにこのような長い分生子柄束を出すタイプは稀に子嚢殻を作ることがあるそうです。 正体は不明で、本種のテレオモルフとも少し違うようです。一体何モノなのでしょうか。

■ 2016年10月10日 撮影

コチラはほとんど柄がない子実体です。材に貼り付いた繭から多数の分生子柄束を発生させています。 更に柄が短くなるとボーベリアに似ることがありますが、分生子柄を顕微鏡観察すればイッパツ解決です。
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