■Cordyceps fumosorosea (赤僵病菌)

■ 2018年08月04日 撮影

2014年に見て以降、本格的に冬虫夏草を始めるまで出会えませんでした。 和名は・・・じゃない、読みは「せっきょうびょうきん」で良いのかな? 小型のガの蛹から発生するアナモルフ菌類です。 コナサナギタケに良く似ていますが、分生子の色やサイズが異なります。

カイコの病害菌ですが、白僵病菌(ボーベリア)と比べ病原性は高くないようです。 以前は虫草的な扱いからはやや離れていましたが、何とCordyceps属に! 確かに分生子の色は特殊ですが、冬虫夏草との共通点は多いですしね。


■ 2018年08月04日 撮影

分生子柄は白く短い柄の先端に薄紫色の分生子を付着させたコナサナギ風。 コナサナギとの大きな違いは分生子の色もですが、分生子の付着している部分の質感です。 コナサナギがきめ細かいのに対して本種はボサボサしているのが特徴。 宿主のガは沢の斜面や岩盤など浅い場所に居るので採取は容易ですね。


■ 2018年08月05日 撮影

採取した標本を黒バック撮影してみました。 コケと一体化しているため土繭だけを完全に残すことは残念ながらできませんでした。 ちなみに2個体を同倍率で撮影していますが、一般的な大きさは下(幅4mm)のほうで、上の標本は異様に大きいです。 宿主がガの蛹だと言うのがハッキリ分かって良かったです。


■ 2018年08月05日 撮影

顕微鏡低倍率で観察した分生子柄束の表面です。 粉状で水を弾くため水封すると気泡が大量に入ってしまいます。 そのため無水エタノールで封入して撮影しています。


■ 2018年08月05日 撮影

分生子柄です。切り出してみましょう。


■ 2018年08月05日 撮影

切り出してみました。分生子柄は枝分かれしており、その先端にフィアライドが付いています。 フィアライドはでき方も数も形状も不規則で、それが特徴のようですね。 これだけだとコナサナギタケと同じように見えますので、分生子を確認してみましょう。


■ 2018年08月05日 撮影

分生子は多すぎて逆にどこを撮影すれば良いか迷うレベルです。 連鎖するのはアナモルフ菌類に多く見られる特徴です。


■ 2018年08月05日 撮影

分生子は楕円形で大きさや形状はやや不規則。 平均して3μm×1.5μmくらいでしょうか? コナサナギタケと比べると細長いのが特徴ですね。

ただの病原菌でカビみたいなものなので食不適です。カビた虫ですし。 本種に関してはどちらかと言うと生物農薬としての利用のほうが有名でしょう。 アブラムシやアザミウマ、コナジラミなどに病原性を発揮するため、普通に販売されています。 しかし気生型のため高湿度を必要とするなどの条件付きではありますが。

■ 2014年10月25日 撮影

初発見は京都遠征時。ガガンボさんが林道斜面で発見した小さな虫草。 採取して土繭を剥がすと、内部には小型のガの蛹が確認できました。 この時は二人ともコナサナギタケだと断定し、満足して帰ったのでした。 ちなみに間違って新版擬人化図鑑に載せちゃいました。ごめんなさい。 この時は暗い森の中で撮影したので色が変になったものとばかり・・・。

■ 2017年06月11日 撮影

背景に見覚えが有るなと思った方、正解です。TOP写真と同じですね。 この場所では毎年安定して発生します。かなり乾いた場所なのですがお構いなしのようです。 暗い場所で撮影したので変な色に写ってしまったため、リベンジしたかったんです。

■ 2018年08月04日 撮影

分生子柄束の長さにはかなりの個体差があります。 暗所だと分生子の色が分かりにくいので、このような短いタイプはコナサナギと見間違えそうになります。 そう、間違えやすいんです。だから俺は悪くないです

■ 2023年10月07日 撮影

青fungi氏とのオフ会にて超久し振りの再開となりました。 最初はコナサナギタケかと思いましたが、その分生子の色ですぐに分かりましたよ。 じつは2018年以降に地元のフィールドが崖崩れを起こして発生ポイントが消滅。 断崖好きの本種は目にしなくなっていたんです。これは予期せぬ再会!


■ 2023年10月07日 撮影

少し古かったようで分生子柄束にカビのようなものが生えていますが、特徴的な赤っぽい分生子は健在。 分生子柄の1単位がハッキリしているため、コナサナギタケよりも荒っぽく見えるのも本種らしいですね。
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