★Cordyceps roseostromata (ベニイロクチキムシタケ)

■ 2015年09月22日 撮影

どろんこ氏主催の富士山ブナ林観察会にて出会えた美しき紅色の宝石。 ゴミムシダマシ科の甲虫の幼虫を宿主とする冬虫夏草「紅色朽木虫茸」。 虫草屋のどろんこさんが超お気に入りと明言する意味、納得しました。 小型の種でありながら、冬虫夏草の中でも特に美しい子実体を形成します。

子嚢殻が密生するものと粗生するものの2タイプが存在すると言われています。 個体差レベルの違いかも知れませんが。 ちなみにどろんこ氏から擬人化リクエストを頂いていた種でもあります。 「魅力的なら擬人化する」とか言ってたのに見た瞬間一目惚れしてしまいました。 こんなの擬人化するしかないじゃない!


■ 2015年09月22日 撮影

宿主は普通、広葉樹の腐朽が進んだ材の中の比較的浅い場所に居ます。 そのためこのように宿主が最初から外部に露出している場合も有ります。 同じ材にクチキツトノミタケも発生していましたが、宿主が異なります。


■ 2015年09月22日 撮影

子実体をマクロレンズで拡大してみました。非常に鮮やかな色合いです。 柄は橙色で先端に子嚢殻を形成した明るい色の結実部を作ります。 子嚢殻は橙紅色で半裸生型。小型のためかなり透明感が有ります。 種小名の「roseo-」は「バラ色の」の意味ですが、実際はオレンジです。 くもの巣状の白いものは子嚢殻先端から噴出した子嚢胞子と思われます。 本種の子嚢胞子は糸状で、細かい二次胞子には分裂しづらいとされます。

極めて小型の種であり、目立った薬効も特に無いので食不適です。 子実体が乾燥しても美しいため、鑑賞用としての価値の方が高いかも?

■ 2015年09月22日 撮影

場所によってはこんな感じでかなりの高密度での発生が見られました。 不思議とコケの生えていない暗色に朽ちた材表面で多く見付かります。


■ 2015年09月22日 撮影

手前の子実体をピンセットで慎重に削ります。ウジムシがいっぱい・・・。 掘り返してみるとコミムシダマシの仲間の幼虫がひっくり返っていました。 今回は幼虫の尾部から集中して発生しています。まるで尻尾みたいです。


■ 2015年09月22日 撮影

本種最大の魅力はマクロ撮影やルーペ観察した時に感じ取る事ができます。 本種の子嚢殻は半裸生型と言われ、結実部からかなり露出しています。 また子嚢殻一つ一つが非常に細かいため透明感が他種とは別格なのです。 そのため光に透かすと結実部がキラキラと輝いており、まるで宝石のようです。 透明度の高い子嚢殻を持つ種は多いですが、この色合いは本種くらいでは? 子嚢殻が暗色だったり大型だったりする冬虫夏草では有り得ない光景ですね。 ちなみに子嚢殻がこれよりももっと荒く生成されるタイプも存在しています。

■ 2015年09月22日 撮影

恐らくこの日最大の子実体はコイツだったでしょう。掘るのが大変でした。


■ 2015年09月22日 撮影

材ごと綺麗に剥がしてみました。先ほどとは発生状況がかなり違いますね。 宿主が浅い場合は直接出ますが、深い場合は最初白色細根状になります。 菌糸の状態で材中を進み、外に出ると光を感じ(?)子実体を形成する模様。 巣穴の内部は菌糸で真っ白です。この後乾燥させて断面標本としました。

■ 2019年08月17日 撮影

久し振りにどろんこ氏と一緒にリベンジ!実は前年から企画をお願いしていました。 と言うのも本種の美しさを知って以降、しっかり撮影と顕微鏡観察をしたかったのです。 2019年はやや不作ではありましたが、それでも美しい子実体に出会えました。


■ 2019年08月17日 撮影

やはり本種の子嚢殻の赤橙色と透明感は他に追随を許さないと言うオーラが感じられます。 子嚢殻は最終的にはもっと長くなりますが、そうなると以前撮影したような淡い色合いになります。 やはり注目すべきは結実部自体は白色と言う点でしょうか。 これは他のCordyceps属菌とはやや異なる印象です。


■ 2019年08月17日 撮影

先程の子実体から右に5cmほどの所にも別の子実体が。


■ 2019年08月17日 撮影

本種の子嚢殻は先端が丸いのが特徴で、あまりツンツン尖っていません。 そのためこれだけ突出した子嚢殻の持ち主なのにほんわかした外見になります。 そして何よりもこの背景の色が透けて見えるほどの子嚢殻の透明度! まるで宝石が散りばめられたかのようです。


■ 2019年08月17日 撮影

樹皮を剥がしてみたら何と同一宿主から出ていました。 そうとは知らず普通に剥がしたら宿主が真っ二つに・・・。 まぁ後で分かったことですが、すでに宿主は朽ちかけていました。


■ 2019年08月18日 撮影

てことで黒バック撮影!意地で繋ぎ合わせましたよ。どこが継ぎ目か分かるかな? 継ぎ目っぽく見える体節部じゃないんですよ、コレ。凄く頑張りました。 本種は宿主が材の深くに居る場合、このように白い菌糸となって材の外を目指します。


■ 2019年08月18日 撮影

結実部を拡大してみました。子嚢殻の先端から子嚢胞子が噴出しています。 今回は先に胞子観察用のスライドガラスを作っているので安心です。


■ 2019年08月18日 撮影

更に拡大してみました。子嚢殻の出来具合が良く分かります。


■ 2019年08月18日 撮影

旺盛に胞子を噴出してくれたので顕微鏡観察がしやすくてホント助かりました。 本種は糸状の子嚢胞子を持ち、一見すると隔壁なども無いように見えます。 長さは200μm前後のものが多いようです。


■ 2019年08月18日 撮影

実は本種は非常に稀ではありますが二次胞子に分裂することがあります。 運良く分裂した二次胞子を見ることができました。 そして分裂するなら隔壁もあるはず、と言うことでメルツァー試薬で染めてチェック。 写真では見づらいですが15個の隔壁を確認することができました。 つまり二次胞子の数は16個。それらしい数字になってくれましたね。

■ 2019年08月17日 撮影

コチラは採取はしませんでしたが撮影だけはしておいた個体。 恐らく発生の仕方的に同一宿主から出ているのでしょう。 気になったのが菌糸に優曇華のようなものが沢山付いていたこと。 何でしょう?アナモルフとか?
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