■Cortinarius obtusus (サザナミニセフウセンタケ)

■ 2020年10月11日 撮影

とある自然公園の端に毎年アカシミヒメチチタケやズキンタケに混じって発生しています。 多分コイツだろうなと思いつつフウセンタケ属は自信が無く、ずっと掲載を避けて来ました。 今回はしっかりと顕微鏡観察し、本種で良いと判断しました。 図鑑通り周囲にはアカマツとコナラが存在します。 和名は「近江偽風船茸」ですが、「近江」を「サザナミ」と読むみたいです。 種小名は「鈍頭の」の意味のラテン語で、傘の形状に由来します。

調べてみると「さざなみの〜」と言う枕詞が琵琶湖西南部の地名「大津」や「志賀」にかかるようですね。 「近江」自体を「サザナミ」と読むと言う記述はざっと探した感じ見当たらなかったので当て字かな? 種小名は外見は似ていますが傘中央が突出するトガリニセフウセンタケとの違いを示しているのかな?


■ 2020年10月11日 撮影

傘は栗褐色と表現されるだけあって赤みが強く感じます。 傘中央部がやや突出するものの全体的にまったりした形状で、湿時周囲に条線が浮かびます。 傘表面は全体的に微毛状で光沢は無く、傘周囲は薄くなって細かな切れ込みが入ります。 外見の似たトガリニセフウセンタケはケコガサタケ属のように傘中央が顕著に突出します。


■ 2020年10月11日 撮影

裏返してみました。ひだは湾生、最初は白色ですが成熟すると肉桂色に変化します。 また面白いことにY字分岐が所々に見られ、本種の特徴の一つです。 柄は白色ですが、水分を吸ったり老成したりすると若干肉桂色を帯びます。 本当は繊維状のつばを持つのですが、消失性なので色の違い的な名残しか見られません。


■ 2020年10月11日 撮影

子実層を顕微鏡観察してみると、シスチジアは見当たりませんが担子器は簡単に見付かりました。 4胞子性ですが横から見るとちょっと分かりづらいですね。


■ 2020年10月11日 撮影

角度が付いた場所を見てみるとあからさまに4胞子性だと言うことが分かります。


■ 2020年10月11日 撮影

担子胞子は褐色楕円形。表面は微細ないぼに覆われています。 ただこれらの特徴は本属菌の近縁な連中のほとんどに共通なので、あまり判断基準になりませんね。 そのため今回の同定も大丈夫だろうなとは思いつつも絶対の自信は無かったりします。

どの図鑑を見ても食毒不明以上の情報は出て来ませんね。 フウセンタケ属菌には猛毒菌も存在するので、食べないのが吉ですね。 あと触った感じでも分かりますが柄は中空でスッカスカ。持つと軽いので仮に美味でも食い出が無いでしょう。

■ 2020年10月11日 撮影

これは鈍頭ですわ。特徴が無いのが特徴みたいなキノコなので同定に自信無いなぁ。 でも個人的には傘周囲の白い縁取りはヒカゲシビレタケに通ずるものがあって結構好きかも。

■ 2020年10月11日 撮影

雨の後だったので全体的に水分量が多かったですが、乾湿で結構雰囲気が変わる種のようですね。 通常状態だと全体的にもっと白っぽい気がしますし。 老菌だと吸水によって反り返り、見る影も無いほど変形し、自壊していました。
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