■Cryptoporus volvatus (ヒトクチタケ)

■ 2021年03月14日 撮影

いつも通っているフィールドの大きなマツの立ち枯れに大量発生していました。 結構どこでも見られる一般的な種なのですが、それ故か気合いを入れて撮ったことがありませんでした。 ですがいざ撮り始めたら魅力の塊みたいな素晴らしいキノコでしたね。 和名は「一口茸」。とにかくマツ材が大好きで、 マツが枯れた際に待ってました!とばかりに一番乗りすることで有名です。

種小名の「volvatus」は「外側を包むものがある」と言う意味のラテン語。 この由来は本種の構造を知っていればうんうんと頷きたくなるでしょう。 ちなみに和名の「一口」は一口サイズ的な意味ではないので注意です。 そう思いたくなるのは分かるんですけどね。


■ 2021年03月14日 撮影

本種はいわゆる「サルノコシカケ系」と括られる硬質菌の1種のハズなのですが、 他の種とはあまりにも雰囲気が違うんですよね。


■ 2021年03月14日 撮影

いや、いやいや、可愛すぎるでしょ。


■ 2021年03月14日 撮影

すみません、取り乱しました。気を取り直して解説しますね。 本種は比較的小型種で子実体はハマグリ形と表現されます。 表面は褐色〜赤褐色ニス状光沢を持ち、実際に少し粘るのが特徴です。 下半分は若干色が淡いのが普通ですね。 にしても可愛い上に美味しそうな見た目ですね。こんな和菓子ありそうですし。


■ 2021年03月14日 撮影

一口でパクッと行けそうだし良いネーミングだなーと思われるかも知れませんが、違うんですよね。 本種は成熟すると下半分を覆っていたニス状の表皮がパキパキと割れて剥がれ落ちます。 そして最下部に穴が1つ開くんです。そう、口が1個あるからヒトクチタケなんです。 でもどっちの意味も個人的にはピッタリ来すぎてて好きですね。


■ 2021年03月14日 撮影

硬質菌なのに管孔が無くね?と思われたそこのアナタ、正解です。 実は本種の管孔は厚い包皮の中にあるのです。 厚く見えた子実体は実は下半分は空洞だったんですよ。 管孔は黄土色で孔口は褐色に染まります。 胞子は最下部に開いた穴から外に放出されます。

また本種は硬質菌としては珍しく強い干し魚臭を放ちます。 この臭気はかなり強く、近くを通るとヒトの臭覚でも感じ取れるほどです。 キノコが臭気を持つ理由は地下生菌がそうであるように生物を寄せる目的が多いです。 実際にこのヒトクチ部屋の中にコウチュウ目が隠れていることが結構あるんですよね。 本種は甲虫の食孔跡から子実体を発生させていることがあり、生物に胞子を運んでもらっている説もあります。


■ 2021年03月14日 撮影

胞子は意外にも白色でしっとりしており、形状は楕円形で内包物も見られません。 管孔は黄色で孔口は茶色、そして胞子は白色と言う何とも不思議な配色です。

和名が「一口茸」なので食べれそうですが、とんでもない!圧倒的食不適です。 干し魚のような強い臭気を持ち、肉質も強靭で食べられるようなキノコではありません。 小さくともサルノコシカケ科ですので、当然でしょうね。

■ 2007年09月08日 撮影

初めて発見した子実体です。ちょうど下半分の表皮が破れ始めた状態です。 このアカマツに生える子実体はどうも淡色の系統なのでしょうか? 本来はかなり濃い褐色の傘を持つキノコなのですが・・・。 しばらくしてこの立ち枯れは安全性確保のため公園管理の一環で伐採されちゃったんですけどね。

■ 2008年04月24日 撮影

立ち枯れアカマツが切り倒されて以降、しばらく訪れていませんでした。 久し振りに訪ねてみると、あった!ありましたよ!切り株0なってもまだ生えていました。 しかも以前より色が濃くて形も良い個体です。久し振りに萌えさせて頂きました。 ちなみにこれでもまだ傘の色は薄い方。図鑑ではもっと濃いですね。


■ 2008年04月25日 撮影

嬉しくて翌日再訪問!同じ個体をひっくり返して、近くにあった幼菌とツーショットさせてみました。 内部が空洞なのは知っていたので、確認のために訪れたのですが、包皮が超強靭でビックリ。 全力で破ったのですがのびーっとなって簡単には破れてくれませんでした。 こうして見ると管孔自体は黄色系なのに孔口がチョコレート色なのが違和感凄いです。

関係ないですが、手で引きちぎったら手が凄まじい干物臭に・・・。

■ 2009年07月11日 撮影

久々に見た・・・。平面に生えてると何だか良く分かりませんねコイツ。

■ 2013年05月18日 撮影

旧TOPを飾っていた子実体です。これメチャクチャ大きかったんですよね。 基本的にはハマグリみたいな縦方向への幅があるんですが、この子実体は横に広かったです。


■ 2013年05月18日 撮影

下から見上げてみました。穴のサイズと位置的にどれだけ横に広がっているか、 如何に大きいかが想像できると思います。 ここまで大きな子実体はコレ以降見れていない気がしますね。 そして周囲に立ち籠める干物臭・・・くっせぇ!

■ 2013年05月18日 撮影

本種は子実体全面をニス状の表皮で覆われています。 成熟すると下半分の表皮がパキパキと破片状になって崩れ落ちます。 その内側にある包皮は強靭なので破れませんが、表皮は硬いので伸長に耐えられずに割れるようです。 上半分の表皮は脱落しませんが、亀裂が入ることはあります。

■ 2021年03月14日 撮影

幼菌は成菌よりもニス状光沢が強いのでテッカテカにテカっています。 とてもキノコの幼菌だとは思えない見た目ですね。 ちなみにこの子実体は甲虫の食孔跡から発生しているのが良く分かります。 食べカスが子実体の周囲に少し残ってますし。

■ 2021年03月14日 撮影

もうメチャクチャ愛おしいですわ。左の幼菌は発生初期でまだ色付いていません。 右の幼菌は中央が濃くなっているので光沢と相まってまるで透明感があるかのように錯覚してしまいます。 見た目は軟らかそうに見えますが、当然ながら硬質菌ですので硬いですよ。

■ 2021年03月14日 撮影

初発見から10年以上経ってやっとしっかりと観察した2021年でしたね。普段はスルー気味なんですが、 強い日差しを受けて照り輝くこの姿が目に入ったからちゃんと撮影しようと思い立ちました。 ブランクも長かったですが、見付けたらまた撮ってみますか。
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