■Dacrymyces pezizoides (ダイダイアカキクラゲ)

■ 2020年01月05日 撮影

ガガンボ氏、青fungi氏と合同で春の地下生菌オフを実施するも暖冬の影響かほとんど収穫は無し。 そんな中で出会ったのは念願の再会。 記録ではサワフタギから発生するとされているアカキクラゲ属の「橙赤木耳」です。 オンレジなのか赤なのか・・・は和名命名者も触れておられましたね。 ただ他の発見例でも今回のものでも樹種はアセビで間違い無いようです。

実は本種、菌類学者の故小林義雄氏が1939年に原記載されて以降、発見例が無かった激レア種。 アマチュアからの報告を元に検証を白水氏が検証を重ね、2018年についに和名が付きました。 実は点々と発見報告は有るようで、意外と普通種だったりして?


■ 2020年01月05日 撮影

冬季の立ち枯れとあってかなり乾燥気味ですが、材と色ですぐ本種だと分かりました。 乾燥すると白く粉を吹いたような質感になるようですね。


■ 2020年01月05日 撮影

子実体はその名の通り橙色。キクラゲ型だから「担子器果」と言うべきかな?まぁいいや。 種小名「pezizoides(チャワンタケ属に似る)」の通り、下向きの有柄茶椀形の子実体を持つのが特徴です。 また幼菌時はやや黄色っぽく、少し毛羽立った質感をしており、その名残は成菌でも基部に見られます。


■ 2020年01月05日 撮影

超拡大してみました。表面の白い鱗片は湿時は水分を含んで目立たなくなります。 担子器は下向きになったお茶椀の内側に形成されます。


■ 2020年01月05日 撮影

軟質なので乾燥させずに薄く切るのはカミソリとは言えど難しいですね。 初発見時は叶わなかった顕微鏡観察をようやく行うことができました。 子実層面はこんな感じで表面に担子器が並び、その内側は柔軟な菌糸で満たされてるキクラゲ型らしい構造。


■ 2020年01月05日 撮影

肉はこのように柔軟な菌糸がゆったりと折り重なっています。 これがあのゼラチンのような弾力を生み出すのですね。


■ 2020年01月05日 撮影

担子胞子は一端に担子器と繋がっていた名残りの突起が残る楕円形。 私はハムスターの糞と呼んでいます。 未熟な胞子は油球を含んでいますが、成熟すると有色の内包物に満たされます。 また成熟した胞子には1〜3個の隔壁が見られ、写真でも1個と2個の胞子は確認できますね。 一番上の胞子が3個隔壁っぽいかも?


■ 2020年01月05日 撮影

フロキシンで染色した子実層面です。担子器が飛び出しているのが良く分かります。 観察しやすいのはしやすいんですが、やっぱフロキシンは色が派手すぎますね。 こうなるとコンゴーレッドが欲しくなるなぁ・・・。


■ 2020年01月05日 撮影

上の写真でも何となく分かりますが、本種の担子器は分岐します。 未熟な状態だと1本の棒状ですが、成熟すると先端が二又に別れます。 そして丸みを帯びていたそれぞれの先端が細く伸び、その先端に担子胞子を形成します。 右の担子器がちょうど先端に胞子を作り始めた、まさにその状態ですね。 今回の発見で本種のミクロな部分がしっかり観察できたのは素晴らしい経験でした。

上述の通り発見例が少ないキノコなので食毒不明としておきます。 アカキクラゲの仲間は猛毒はおろか有毒種の話も聞かないので、本種もそうだとは思いますが・・・確証なしです。 むしろ見付けたら採取してじっくり観察するか、然るべき場所へサンプルとして提供したほうが良いかも?


■ 2020年01月05日 撮影

黒バック撮影してみました。やはり水分を含ませると白い鱗片が吸水により目立たなくなりますね。 本種はガガンボ氏との芦生オフにて出会った思い出のキノコ。 今回もガガさんと一緒に見れたのは運命的なものを感じますね。ガガさんも懐かしがってました。

■ 2013年10月27日 撮影

初対面はガガンボ氏との芦生原生林オフにて出会った見慣れないキノコ。 写真をネットに投稿した際に菌類研究者の白水貴氏が即座に反応されていましたね。


■ 2013年10月27日 撮影

最初はフェムスジョウタケだと思っただけあって子実体の雰囲気は良く似ています。 この時は沢筋の材に発生していたので立ち枯れと比べて明らかに水分を多く含んでいます。 それでも基部には鱗片の名残りが見られますね。


■ 2013年10月27日 撮影

下から見上げてみました。子実体は一応下方向に成長して傘のような形状になっています。 残念ながら芦生原生林は採取禁止なのでサンプル採取や顕微鏡観察できなかったのが悔やまれました。 そもそも発見段階ではそんな貴重なキノコだとは思いもしませんでしたので。

■ 2020年01月05日 撮影

久し振りの再会は乾燥した冬ではありましたが、それでも雨のお陰でみずみずしい個体が見られました。 キクラゲ型は被写体的にどうしても降雨の影響を受けやすいですからね。


■ 2020年01月05日 撮影

そう言えば下から撮影した写真を撮ってなかった! 子実体はこんな感じでチャワンタケがうなだれたと言った感じ。 タテガタツノマタタケを思い浮かべると分かりやすいかも知れません。 担子器はこの凹んだ裏側の面に形成されます。
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