■Descolea flavoannulata (キショウゲンジ)

■ 2018年09月09日 撮影

やや稀なキノコとされており、自分も出会ったのは大台ヶ原のこの日が初めて。 針葉樹林でも広葉樹林でもあまり関係なく各種林内地上に発生する「黄正源寺」です。 その名の通りショウゲンジに良く似た、と言うか2Pカラーのようなキノコです。 ちなみに種小名は「flavo-(黄色い)」と「annulata(輪の付いた)」の意味。つばのことかな? 形状は似ていますが傘に鱗片があったりと良く見ると細部がかなり異なっています。

しかし何と本種はショウゲンジとは別属! キショウゲンジ属であり、フウセンタケ科ではありますがフウセンタケ属ではありません。 ここまで外見が似ていながら属レベルで異なると言うのは結構驚きですね。 本種は傘表皮の細胞が柵状になっている点でショウゲンジと決定的に異なります。


■ 2018年09月09日 撮影

傘は表面に放射状のシワがあるあたりも無印と共通です。 しかし決定的な違いは傘が黄土色〜帯褐黄土色でかなり黄色みが強いこと。 また表面にテングタケ属菌のように黄色い綿屑状の被膜片を散在させる点です。 本種は無印同様に基部に不完全なつぼを持つので、原理は同じですね。


■ 2018年09月09日 撮影

抜くことはできないので地面に突っ伏して撮影です。 ひだは縁部がギザギザしており、黄褐色でのちに肉桂色になります。 柄は繊維状で下方に太くなり、全体的に黄色で下方は褐色。 途中に膜質の大きなつばを持ち、基部には不完全なつぼを持ちます。

無印のショウゲンジは美味な食菌として有名ですが、本種は食毒不明です。 無毒と言う話も聞きますが、美味しくないとも同時に聞きますので基本スルーで良いと思います。

■ 2018年09月09日 撮影

あまり雨に濡れていないので傘の粉っぽさがまだ残っています。 下の子実体はつばが脱落しています。触ってみると確かに落ちやすそうな雰囲気。 無印ショウゲンジはあまりつばが落ちているのを見ないような・・・?

■ 2018年09月09日 撮影

最初に発見した子実体です。見た瞬間に「黄色いショウゲンジ・・・キショウゲンジ!」と和名に辿り着きました。 しかし傘表皮の綿屑状被膜片が脱落していて一瞬ツチナメコかな?とも思いましたけどね。 本種の被膜片は雨で簡単に流されてしまうようです。


■ 2018年09月09日 撮影

生えてる場所が斜面だったため裏側がキレイに撮れました。 ひだの縁部が鋸刃状なのが分かりますね。 ひだは柄に対して直生〜上生しているため柄の周辺が一気に落ち込んで見えます。

■ 2021年10月02日 撮影

今年も前回見た同じ場所で遭遇。乾燥しているとより橙黄色が強烈ですね。 ちょっと訪れたのが遅かったので辛うじて被写体になれたのはこの子らだけでした。 珍しいとは聞きますが確かに色んなフィールドを回ってここでしか出会ってないですね。

■ 2022年09月10日 撮影

薄暗い森の中で再会。昨年はあまり良い発生状態に出会えなかったので嬉しいです。 幼菌だと傘表皮の鱗片がとても分かりやすいです。 コレを見ると確かにショウゲンジとは結構縁遠いのかな?と思えますね。

■ 2022年09月10日 撮影

TOP写真にしようか真剣に迷った子実体です。凄く良い被写体になってくれました。 若干老成していますが本種の特徴が良く現れていると思います。 ただちょっと残念なのが2021年を除き悪天候に邪魔されてるんですよね。 新鮮な状態で乾いた傘を見てみたいんですけど・・・。まぁ水も滴る良いキショウゲンジってことで。


■ 2022年09月10日 撮影

傘表皮の鱗片は雨で脱落しやすいため、やや老成した傘では鱗片がほとんど見られません。 それでも傘に走る放射状のシワは本種らしいなぁと思います。 また今回はつばが下に垂れずに上向きになっていました。こんなこともあるんですね。 確かに本種のつばには厚みがあって頑丈なので、そうなっても不思議は無いですけど。


■ 2022年09月10日 撮影

今回が今までと違うのは採取OKと言うこと!これでやっとちゃんとした裏側が撮影できました。 ひだは黄褐色を帯びていますが、成熟すると肉桂色になります。 ひだの縁部が鋸歯状で粉を吹いたようになっているため、全体的に薄汚れて見えます。 柄は繊維状で基本的に傘と同色ですが、つばを挟んで上部が淡色、下部が濃色。 厚みのあるつばは無印ショウゲンジと良く似ており、別属だと言うのが不思議です。
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