■Dicephalospora rufocornea (ニセキンカクアカビョウタケ)

■ 2007年09月16日 撮影

キノコ狩り経験の有る方の多くが足元の落枝上にその姿を必ず見ているのでは? 和名「偽菌核赤鋲茸」。長ったらしい名前ですが覚えておくと面白いかもですよ。 見れる時期はほぼ年中。地面に落ちた細い小枝などに群生を作ります。 ビョウタケに似ていますが、赤っぽくて小さい点で判別は容易です。 色の濃さにかなりの差があり、濃いものだと赤に近くなりますが基本的にはオレンジ色です。

土や落葉に埋もれるなど水分がしっかり保たれた材から発生します。 そのため埋もれ木や枯れた木の根から出ている場合は地上生のように見えるので注意。 またさらに小型で落葉の葉脈部から発生するオチバノアカビョウタケが存在します。 ニセキンカクアカビョウタケも幼菌時は赤っぽいですがより大型で、成長するとオレンジ色になります。


■ 2018年05月26日 撮影

子実体は中心に柄を持つ皿形で、色は橙色ですが若い内は赤みが濃いことが多いです。 似た雰囲気のビョウタケは老成で色濃くなることはあっても幼菌時は鮮やかな黄色。 また本種はビョウタケとは異なりあまり周囲が反らず、深い凹みになりません。

食毒不明なのですが、大きくても直径2mm行くかいかないかです。 仮に無毒だったとしても食用価値無しですね。採るほうが大変なレベル。

■ 2018年05月26日 撮影

以前から何度も何度も見ていたのに顕微鏡観察したこと無いなと思い採取することに。 ここ数日雨が降っていなかったのであまり状態は良くなかったですね。 このフィールドはこの時期になると足元の落枝のいたる所に大発生します。 ありふれていると逆に注目しなくなる、悪い癖ですね。


■ 2018年05月26日 撮影

乾燥気味のためか子嚢盤がややしぼんでいるのかな? 普段は反っていて見えない縁部が見えています。 ただ少し乾いてるくらいが切片は作りやすいので逆に良いかも。


■ 2018年05月26日 撮影

横から見てみました。ちょっとこの子実体は典型的ではないかも。 子実体は有柄皿状で真横から見ると画鋲のような形状をしているのが特徴です。 右側の子実体は典型的でしたが・・・写す子実体を間違えたかも知れません。


■ 2018年05月26日 撮影

子実層を顕微鏡観察してみました。全体的にオレンジ色を帯びているようです。 ただ色々と入り乱れていて良く分かりません。何かつぶつぶしたものは見えていますが・・・。


■ 2018年05月26日 撮影

子嚢を単体で取り出してみました。が。何だこれ。中の胞子が変だぞ。


■ 2018年05月26日 撮影

これ知らなかったんですが、本種の胞子はメチャクチャ面白いので顕微鏡観察のし甲斐がありますよ。 子嚢胞子は長紡錘形なのですが、内部に油球が一直線に並んでいるので、コレ自体が単体で生物のようです。 このような胞子は見たことが無かったので衝撃を受けましたね。顕微鏡をお持ちの方は是非観察することをオススメします。


■ 2018年05月26日 撮影

もう少し倍率を上げて観察してみました。何かセンチュウみたいで若干気持ち悪いかも? 両端は平のように見えますが、どうもここには粘液状の付属物が存在するそうです。 やっぱこれで材にペタッとくっつくのかな? 個人的に気になったのは油浸対物レンズでしか見えなかった中間部の丸い皮膜です。 低倍率ではハッキリ写らずゴミかと思いましたが、どの胞子にも見られるので本種の特徴なのでしょう。


■ 2018年05月26日 撮影

やたらと子実層が密に見えたのはこの側糸が原因のようです。 分岐の無い細長い側糸がビッシリ並んでいます。 切片作成時に刃を入れた感触が妙にしっかりしていたのはこの密度ゆえでしょうか?


■ 2018年05月26日 撮影

メルツァー試薬で染色すると側糸に隔壁があるのが分かりますね。 しかしアミロイド反応を見ようと思ったのですがあまり変化が分かりません。


■ 2018年05月26日 撮影

と言うことで高倍率でメルツァー試薬による反応を観察してみました。 確かに記述通り子嚢の先端だけが青くなる頂孔アミロイドですね。 ただ他の種と比べると反応はかなり弱いみたいで、この写真を撮るまでにかなり試行回数を重ねました。

■ 2015年07月11日 撮影

図鑑などの写真ではそこそこのサイズに見えますが、実際はこんなサイズです。 色が派手だから気付けるものの、これ地味なキノコだったら絶対にラッキーでしか見付けられません。 ビョウタケに比べて小型でかなり赤く、厚みが無いのですぐ分かります。

■ 2020年07月12日 撮影

何の変哲も無い写真ですが、注目すべきは右の隠れた幼菌です。そう、かなり赤いんですよね。 この状態だけの子実体だとオチバノアカビョウタケだなと思ってしまいそうになります。 ですがこれ放っておくと普通にニセキンカクアカビョウタケになります。 オチバノアカビョウタケは幼菌段階でずっとずっと小型で、もっと明確に赤い点で区別しましょう。

■ 2020年08月10日 撮影

8月に入って雨が全然降らなくなってしまいました・・・。 低地の里山は転んだら擦り下ろされそうなくらい地面がカリカリ。 仕方無くガスが期待できる高地へ。しかし雷雨に見舞われ早期撤退。 その道中で綺麗な子実体に出会えたので急いで撮影。


■ 2020年08月10日 撮影

正直TOP写真に差し替えようと思ってたんですが、いざ帰宅して写真を確認したら暗かった。 なので普通に掲載です。成長段階によってこれだけ色が違います。


■ 2020年08月10日 撮影

和名に「鋲」とありますが、大型の子実体だと特徴的な子嚢盤の形状が見やすいですね。 子実層面は鮮やかですが裏面は淡色で、柄の辺りはほぼ無色です。 不思議と細枝を好むようで、材に邪魔されず裏側が確認しやすいです。
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