★Dumontinia tuberosa (アネモネタマチャワンタケ)

■ 2015年04月11日 撮影

本種に出会うため、そのためだけに1000m登ったとかどんなギャグだよ! しかもこの時期の高い山とか他のキノコがないですから、スカしたらオワリでした。 発見が日暮れ前で下山に時間がかかるため、大急ぎで撮影することになりました。 ず〜っと会いたいと思っていたキンカクキン科の「アネモネ玉茶椀茸」です。 その名の通りキンポウゲ科イチリンソウ(Anemone)属の周辺に多数群生します。 本科菌は多少病原性を持つ種が多いですが、本種はその中でも特に高い病原性を持ちます。

園芸的にはデュモンティニア根腐(ねぐされ)病の原因菌として恐れられています。 栽培環境下では属を飛び越えて同じキンポウゲ科のミスミソウ属にも感染します。 キンカクキン科の中では珍しく、感染した植物体が枯死に至ります。


■ 2015年04月11日 撮影

地下には菌核が多数発生するため、基本的に1ヶ所に集中して子嚢盤が発生します。 本種の発生している場所すなわち昨年アネモネが生えていた場所と言うことになります。


■ 2015年04月11日 撮影

子実体は椀形〜鉢型で暗肉桂色。子嚢盤の裏側には柄を持っています。 大きさはツバキキンカクチャワンタケよりも一回り大きい感じでしょうか? ただ子嚢盤に厚みが有り、他のキンカクキン科の種より重厚感が有ります。


■ 2015年04月11日 撮影

掘り出してみました。奥に見えるのはキクザキイチゲ。恐らく宿主でしょう。


■ 2015年04月11日 撮影

掘り出してみました。急いで撮影したのと日が落ちていたのでピンボケてしまいました。 地下には大きな黒い菌核が存在します。これが「タマ」。 これはイチリンソウ属の植物の根に感染し菌核に変化したものです。 実はこの性質、かなり恐ろしいのです。

多くのキンカクキン科菌は花や実などの落下物を食べて菌核を残します。 よって菌に侵されても元の植物体にはこれと言って問題はありません。 しかし本種は生きた根を食らうため植物は生きてゆけなくなります。 そして翌年枯れた場所に無数のお茶椀が出て来ると言うワケです。 山野草を育てる方にとって本種は恐るべき病害菌。出たらオシマイです。

毒は無いみたいですが小型で食不適。嗅いでみたら土臭かったですね・・・。

■ 2015年04月11日 撮影

せっかくなので持ち帰り、新しく買った顕微鏡のテストも兼ねて撮影しました。 この顕微鏡はオオシトネとフクロシトネを見分けるために数日前に購入したもの。 しかし発見が遅れたため結果的に初めて胞子観察したキノコはアネモネタマチャワンタケになりました。 細長いのが胞子を含んだ子嚢、内部の楕円形のが本種の胞子ですね。 まぁ本種の胞子って大きさ以外にあまり特徴が無いので見てみただけです。

■ 2019年04月06日 撮影

アメジストの詐欺師氏をお連れしたフィールドにて久し振りに出会うことができました。 実は氏は初対面したオフにて開口一番「アネモネタマチャワンタケが見たい!」と仰ってました。 チャワンタケ好きの氏はずっと見たかった憧れの種だったそうです。 これならお連れした甲斐があったと言うもの。自分も顕微鏡観察したかったので嬉しい再会でした。


■ 2019年04月06日 撮影

小規模な群生ですが日が差し込み美しい風景でした。 やはりある程度標高を上げるか高緯度地域に行かないと見れない種なので出会えると嬉しいですね。

■ 2019年04月06日 撮影

続けて自分も発見しました。強い日差しの中の影にあったので綺麗に写せませんね。 菌核も採取しようと思いましたが、今回は以前と違って非常に深い場所にありました。 スコップで掘っても良かったんですが、環境が環境のため荒らさずに諦めました。


■ 2019年04月06日 撮影

陰っていた直射日光が射し込んできてしまいました。こう言う場所は撮影が大変なんですよね。 初対面時に匹敵する子嚢盤の量、恐らくかなり立派な植物体を食ったのでしょうね。 やや輪を描くように出るのは植物の成長点を中心に一定距離の場所に菌核が形成されるからでしょうか。 中央に見える小さい子嚢盤のあたりに植物体があったのかな?


■ 2019年04月07日 撮影

初めて顕微鏡観察をしたキノコです。ちょっと感慨深いですね。 子嚢盤は採取したので久し振りの顕微鏡観察リベンジです。 とりあえず子嚢盤をスライスして低倍率で観察。子実層面が分かりやすいです。


■ 2019年04月07日 撮影

撮影技術と撮影機材のレベル差を感じざるを得ません。まぁ初めてなのでお目溢しを。 子嚢と側糸がビッシリ並んでいます。


■ 2019年04月07日 撮影

子嚢と側糸を切り出してみました。子嚢胞子は子嚢内部で1列に並んでいます。 側糸は糸状で基部で分岐隔壁が存在します。


■ 2019年04月07日 撮影

野外観察中にも思ったのですが、非常に活発に胞子を噴出します。 少し衝撃が加わっただけでポフッと胞子が飛び出す光景が撮影中にもよく見られました。 それが顕微鏡観察中にも良く起き、こんな状態に。凄まじい殺意を感じますね。 色んな子嚢菌類を顕微鏡で見ましたが、ここまで吹き出したのは初めてかも。


■ 2019年04月07日 撮影

凄い胞子の量・・・。「アネモネ絶対ぶっ○す!」って気迫を感じます。


■ 2019年04月07日 撮影

子嚢胞子を油浸対物レンズで高倍率撮影してみました。 形状は長楕円形で両端付近に小さな油球を1ないし数個含みます。 にして初撮影時の写真と比べると機材の差を認めざるを得ません。 いや、これでもスライドガラスの作成技術も上がってますから!


■ 2019年04月07日 撮影

メルツァー試薬で子実層面を染めてみましたが・・・あれ?


■ 2019年04月07日 撮影

あれれ?子嚢先端の肥厚部に青い通り道が。どう見ても頂孔アミロイドですね。 図鑑では非アミロイドと書かれていた気がしましたが。 とりあえずこの目で見たものを信じることにします。 国内サイトだとあまり顕微鏡観察されてる方が居ないので自信ないですけど。
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