■Elaphomyces japonicus (キツチダンゴ)

■ 2019年02月05日 撮影

地元で見付かった非常に大きなツチダンゴ。照葉樹林のコナラの樹下にて発見しました。 初発見時は低地だしどうせアミメツチダンゴだろうと思い、写真も撮らずに持ち帰りました。 しかし帰宅後に断面を見て驚愕!最終的には地下生菌のスペシャリストO前氏の元へお送りしました。 思い込みはダメ、そう教えられてしまいました。 多方面から「黄土団子」そのものの可能性大との指摘を受け、不明種から格上げです。

本種は外皮断面に大理石模様を持たないツチダンゴ亜節に属する種です。 このような種は世界的にも珍しく、古くから地下生菌の分類が盛んな欧州でも3種類しか知られていないのだそうです。 国内でも数種新種記載されていますが、その後同定されたものが無く謎多き種。 O氏にお送りした標本から何か分かればサイトの記述を変更しようと思います。


■ 2019年02月05日 撮影

子実体は扁平な球形で表面は黄褐色のとげに覆われています。 和名に「黄」と入っていますが、まだアミメツチダンゴやその類似種のほうが黄色い印象です。


■ 2019年02月05日 撮影

表面を拡大してみました。とげの隙間に木の根がみっちり入り込んでいます。 いやむしろ木の根を避けるようにとげが発達したようにも見えます。 現地でできるクリーニングはこれが限界。こりゃ帰宅後が大変だ。 これを見た段階で気付くべきだったのですが、アミメツチダンゴと比べて色が鈍く、とげも低くて微細です。


■ 2019年02月05日 撮影

初発見時も印象的だったのがやたらと大きいと言うことです。この子実体で3cm。 確かにアミメツチダンゴも大きくはなりますが、コンスタントに2.5cmに達してきます。 そのぶん潰れた形をしているのですが、それにしても大きいですね。


■ 2019年02月05日 撮影

掘っていたらコメツキムシの幼虫が出てきちゃいました。 放っておいたら自分で潜ってゆきましたが、これも無関係ではありません。 実は本種埋まっている場所が深いんです。 アミメなんかは良く地表に露出していますが、本種はかなり掘らないと出て来ません。

大きいのは大きいですが、土臭いわ中は粉っぽいわで食用価値無しですよ流石に。 と言うかツチダンゴ類は食毒を語ることすらしたくないレベル。有毒って説もありますしね。

■ 2019年02月03日 撮影

初めて発見した子実体です。直径は2.5cmですが、厚みは1.5cmしかありません。 これは最も大きく見える角度から撮影したもの。断面も同様です。


■ 2019年02月03日 撮影

とげの隙間に入り込んでいた木の根はおおかた除去しましたが、流石に全てを取り去るのはムリでした。 堪忍してつかぁさい。


■ 2019年02月03日 撮影

この断面を見てアミメツチダンゴだと思いこんでいた私は大いに驚くと同時に後悔するハメに。 外皮断面には大理石模様は無く紫褐色。隙間を埋める菌糸も胞子も少し紫色っぽく見えます。 これは流石に予想していませんでしたね。


■ 2019年02月03日 撮影

もう少し詳しく見てみます。外皮は淡い紫褐色で内部に向かいほど暗色になります。 胞子の詰まったグレバは暗赤褐色で隙間を菌糸が埋めていますが、本来白いはずの菌糸も少し紫色っぽいです。 断面が全体的に小豆色っぽく見えるのは見間違いではなさそうです。 断面が紫色を帯びる種としては「E.asperulus」が存在しますが、その後の胞子観察で否定されました。


■ 2019年02月03日 撮影

胞子観察でも面白いことが分かりました。本種の胞子には2タイプ存在するのです。 これは標本を実際に観察したO氏からも同じ報告を頂きました。 まずは1つ目が大型で褐色のもの。もう1つが小型で暗褐色のもの。

この段階で本種であるとの可能性があるとのご意見をO前氏より頂きました。 この段階では当サイトでキツチダンゴとして未成熟個体を載せていましたが、それとは別種とのこと。 タンポタケモドキが良く発生するとされ、大型になる種と言うのも一致します。今後要検討とします。


■ 2019年02月03日 撮影

小型の胞子は最初皮膜のようなものに覆われていますが、後にこの被膜は消失します。 子嚢胞子は球形で暗赤褐色。アミメツチダンゴに比べると赤みが強いです。 右下のような表面のトゲがパッチワーク状にひび割れた胞子も確かにあるのですが・・・。


■ 2019年02月03日 撮影

ほとんどの胞子は表面の棒状のとげに均等に覆われています。 これは無印ツチダンゴや「E. asperulus」の特徴とは一致しません。 地下生菌識別図鑑にて「sp.1」とされているものとも似ていますが、表面に網目は存在しません。


■ 2019年02月03日 撮影

ゴミは多いですが胞子は綺麗に撮影できたので載っけておきます。 これと言った特徴はないですが、今まで見た本属菌のどれとも違う、そんな外見ですね。


■ 2019年02月03日 撮影

日付の違いに気付かれましたでしょうか?実は非常にこっ恥ずかしいエピソードがあります。 この日は昼飯にラーメンを食べようと思ったのですが、お目当ての店が大混雑。 そのため客が減るまで時間を潰そうと30分程度で帰れる近場へ・・・そんな時に発見したのです。 ですがすぐ戻るつもりだったためカメラを持たずに山中へ。 結果残っているのは手に持っているこの写真一枚。自然下の写真を撮っていなかったのです。 まぁアミメツチダンゴと思い込んでいたので当然ですわ。 なので翌々日に有給取って探しに行きましたよ。出る保証は無いのにな! でも結果的に再発見できたので良かったです。それが2月5日のTOP写真と言うワケ。 先入観はホント良くないですよ。
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