★Elaphomyces persoonii (クロイボツチダンゴ)

■ 2023年09月24日 撮影

しんや氏とめたこるじぃ氏、そして私の3人で開催したキノコオフ。 環境的に冬虫夏草や地下生菌はあまり期待できないと思っていましたが、 何と出ちゃいました。ミズナラの樹下でしんや氏が発見した「黒疣土団子」です。 以前本種と思しきツチダンゴは発見していましたが、表皮や胞子の特徴に違和感がありました。 しかし今回見付かったものは識別図鑑掲載のものと外見的特徴も胞子の特徴も一致。 以前この学名で掲載していたものを不明種とし、写真を全て差し替えました。 国内でも発見例がほとんど無い極めて珍しい地下生菌です。

以前関東と関西で見付けた類似種は胞子の特徴が一致しており、本種とは異なる可能性があるのですが、 胞子写真公開NG(理由は不明種ページ参照)なので比較図を掲載することができません。 しかし「地下生菌識別図鑑」掲載のクロイボツチダンゴとされているものとの相違点が多く、 と言うかパッと見で全然違うので別種とすることにしました。


■ 2023年09月24日 撮影

子実体は平均して1.5cm程度と小型で、アミメツチダンゴとツヅレシロツチダンゴの中間みたいな大きさ。 以前見ていた類似種はかなり大きいので、まず初見で感じたのは小さいなと言うことでした。 子実体は黒褐色ですが、かなり黒色が強いようです。また表面には微細ないぼがあります。


■ 2023年09月24日 撮影

実は最初はトゲトゲして見えるので冬虫夏草だと勘違いしていました。 しかし掘ってみると外見は完全にツチダンゴ。 ほぼ確信を持って子実体を両断すると、やはり灰青褐色の胞子が!


■ 2023年09月24日 撮影

貴重なサンプルと言うことで数個体持ち帰って1つは顕微鏡観察用に、残りは研究者さまにお送りしました。 まずは表皮と断面です。類似種に比べるとミニチュアのようで、かなり小型の印象を受けました。


■ 2023年09月24日 撮影

まずは子実体の表皮を観察してみます。色は先述の通り黒褐色。 注目すべきは表面のいぼが細かいと言うことでしょう。 類似種はアミメツチダンゴのような大型のピラミッド型なのですが、 本種のいぼは非常に背が低く、一見すると亀裂のように見えます。 もっと出っ張っている部位もありますが、脱落しやすいようですね。


■ 2023年09月24日 撮影

断面を作成してみました。外側から順に外皮→内皮→グレバと並んでいます。 外皮は1つ上の写真でも理解るように黒褐色。 内皮は成熟段階で色が変化しますが基本的にはアイボリーです。 そして成熟すると全体的に褐色が増し、内側から内皮の半分ほどの厚みが暗色になります。 これは図鑑に使用されている写真でも同様の特徴が確認でき、類似種とも少し異なるような気がします。


■ 2023年09月24日 撮影

そして顕微鏡観察してこの胞子が見えた時、 本種が以前見たクロイボツチダンゴと思っていた種とは別種であり、 本種が本当のクロイボツチダンゴなのではないかと言う強い疑いを懐きました。


■ 2023年09月24日 撮影

まずは基本構造。こんな外見ですがツチダンゴ属は立派な子嚢菌類なので子嚢が存在します。 ただ子嚢が見られるのは若い時だけで、かなり早い段階で消失してしまいます。


■ 2023年09月24日 撮影

辛うじて見えた子嚢を油浸対物レンズで観察してみました。 子嚢は球形で見づらいですが8個の子嚢胞子がみっちり詰まっているようです。


■ 2023年09月24日 撮影

これを見た時は「やっぱ違う!」とと思いましたね。これが本種の子嚢胞子です。 球形で大きさは20μmチョイ。これも図鑑の記載と一致します。 ただサイズだけなら類似種とほぼ同じなんですが、明らかに異なる点がありました。それは表面の模様です。


■ 2023年09月24日 撮影

※オンマウスで変化します

そう、本種の子嚢胞子の表面には網目模様が現れるのです。 これは隆起しているのではなく、輪郭が網目に沿ってデコボコしていないことからも、 表面にビッシリ生えたトゲが網目状にヒビ割れている状態です。 以前クロイボツチダンゴだと思っていた類似種が別種じゃないかと疑っていたのは、 類似種は網目が途切れまくってこんなキレイな見た目にならなかったためです。

非常に小型で肉は硬質、内部は胞子で粉状なので当然ながら食不適です。 て言うかメチャクチャ珍しいキノコなので食べるなんてとんでもない! 是非研究者さんに連絡を取ってサンプル提供してください。お願いします! ちなみにタッパーにしばらく入れていましたが、あまり不快臭は出さなかったですね。

■ 2023年09月24日 撮影

雨に少し濡れているのでこうして見ると真っ黒に見えますね。 最初は中々目に入りませんでしたが、慣れて来るとメンバー全員が見付けることができました。 最初に見せていただいていたから脳が認識できたものの、これ初見で気付くのはハードル高いぞ・・・。

■ 2023年09月24日 撮影

結構な数が出ましたが総じて小さいんですよね。1〜1.5cmの範囲って感じです。 安定してこの大きさと言うことは多分コレが本種のスタンダードなんでしょう。 表面のいぼが微細なので表面が滑らかに見え、何となく可愛いんですよねコイツ。 そろそろ温めていた擬人化案を世に出すタイミングかな?
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