■Encoelia cubensis (ヤドリツブチャワンタケ)

■ 2022年07月23日 撮影

冬虫夏草が大発生するフィールドにて行われたオフ会にて探索中の青fungi氏が大絶叫。 物静かな氏が叫ぶのも当然。そこにあったのは図鑑でしか見たことが無かった非常に特殊な子嚢菌類! 何とマメザヤタケやオオミコブタケなどの硬質子嚢菌類の子実体に発生すると言う異端児。 つい最近和名が付いた「宿粒茶椀茸」です。かなり発見例が少ないレアチャンワンタケですね。 「cubensis」はそのまんま「キューバの」の意味であり、比較的熱帯地域からの報告が多いです。

Encoelia属については和名が存在しないので、ラテン語読みでエンコエリア属と読む感じ。 一応キンカクキン科に属する種のようですが、国内に類似種が全然無いので情報不足です。 基本的には一般的なマメザヤタケからの発生が多いようです。 宿主のマメザヤタケ自体は凄く多いんですが、そのワリい本種の報告は少ないんですよね・・・。


■ 2022年07月23日 撮影

発生状況はこんな感じ。これを見た参加者さんはもう大興奮ってモンです。 宿主は広葉樹材に発生したマメザヤタケのようですね。 本種に感染したことで生育を阻害されているらしく、良く見るような長さがありません。


■ 2022年07月23日 撮影

少し拡大してみました。これだと何が何だかサッパリ分かりませんね・・・。


■ 2022年07月23日 撮影

更に拡大してみました。これなら分かるかな? 宿主のマメザヤタケの周囲には白い菌糸が見られ、更に宿主表面には赤褐色の菌糸が覆います。 その上にオリーブ色の小さな子嚢盤がビッシリ形成されます。にしても異様な光景ですね。 このような発生の仕方をするチャワンタケは国内ではコイツくらいのものではないでしょうか?


■ 2022年07月23日 撮影

一部削り取って持ち帰り、黒バック撮影してみました。 やはり子実体と近視が剥げた部分が黒いのでマメザヤタケみたいですね。 棍棒状に成長する前に成長を阻害されてしまったため球形になっちゃってます。 しかし黒バックが似合うなコイツ・・・。


■ 2022年07月23日 撮影

これはトライポフォビアの方大歓喜・・・もとい大発狂じゃないでしょうか? 直径は大きいものでも2mm程度で、微細な子嚢盤がビッシリ宿主表面を覆っています。 小型の子嚢菌類は群生するものが多いですが、本種の密度は恐らく最高レベルでしょう。


■ 2022年07月23日 撮影

スーパーマクロ撮影すると本種の子嚢盤1つ1つの特徴が見えて来ます。 遠目にはオリーブ色一色に見えていましたが、実際には縁部が褐色を帯びます。 基部の近視も似た茶色なので、それが子嚢盤の外側にも存在するのでしょう。 若干縁部が反ってはいますが、茶椀形と言うよりは皿形〜クッション形ですね。


■ 2022年07月23日 撮影

子実層面をカミソリで切断してみたのですが、凄く切りづらい! 何でしょう硬いワケでも軟らかいワケでもないのですが、肉質が妙にボソボソしているんです。 そのため普段なら薄く切れそうな新品の刃でも切片がボロボロ崩れて綺麗に撮れませんでした。 これが限界。次回チャンスがあればリベンジしたいですね。 なお側糸に分岐が無く、隔壁があることまでは辛うじて分かりました。


■ 2022年07月23日 撮影

子嚢胞子は長楕円形2個の大きな油球のを内包するものが多いです。 これ!って特徴は無いですが、子実体のワリには小さいような気がするくらいかな? 菌寄生性なので何か胞子に変わった特徴でも無いかな?と期待していましたが、凄い普通ですね。


■ 2022年07月23日 撮影

メルツァー試薬でのアミロイド反応もチェック。記載通りの非アミロイドで青く変色しません。 染色したお陰で側糸に隔壁があるのも見やすくなってますね。

現状食毒不明ですが、本種はマメザヤタケの表面を覆っている部分なので食うトコありません。 あと本種のものではないのでしょうが、菌臭いわ木材臭いわで、仮に無毒でも口に入れるものではないでしょう。 そもそも本種は非常に珍しい種であり、出会えただけでも超ラッキーですよ。愛でて差し上げましょう。


■ 2022年07月23日 撮影

シメは個人的に好きな角度からの1枚。子嚢盤、褐色菌糸、白色菌糸、宿主の形状、全てが見られます。 この周囲の菌糸部分には分生子が形成されるそうですが、この時は知らなくて観察し忘れました。 また出会う機会があれば、子嚢や側糸と合わせて分生子もチェックしたいですね。

■ 2023年06月17日 撮影

約1年振りに訪れた同じ場所。まだ居るかな?と不安でしたが普通にまだ居ました。 ただ以前と比べると子嚢盤が少なく、その後訪れた際は完全に消滅し、菌糸も見当たりませんでした。 宿主自体の発生は続いているので、年中見れるキノコではないのかも知れません。来年も居てくれると嬉しいのですが。
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