★Exsudoporus ruber (アカネアミアシイグチ)

■ 2016年09月25日 撮影

もろぞーさんに同行させて頂き、ガガンボさんと富士山で出会うことができました。 以前から一部で「幻のイグチ」と囁かれてきた和名「茜網脚猪口」です。 長野や山梨のコメツガやシラビソ等の亜高山帯針葉樹林に発生します。 しかし発見は長野県や山梨県のかなり狭い範囲に限定されているようです。 ちなみに種小名の「ruber」はルビーと同じで「赤色の」と言う意味のラテン語です。

当サイト掲載段階で写真が記載された図鑑は1冊のみと言う知名度の低さ。 発生地域の狭さに加え発生量も少ないため、見れたら奇跡ってレベルですね。 そして以前は「Boletus kermesinus」と言う学名だったのですが、2022年に学名が変わりました。 「kermesinus」は「カーミン紅色の」の意味なのでピッタリで好きだったんですけどね・・・。


■ 2016年09月25日 撮影

実は群生する事自体が稀で、案内して下さったもろぞーさんも驚いていました。


■ 2016年09月25日 撮影

傘は強い粘性のために光沢を持ち、色は見事な暗赤色。まるで血のよう。 ちなみに和名に有る「茜色」はPC的には「■ #9d2932」と表示されます。 また傘にオオキノボリイグチに似た淡色の斑点が出来るのも特徴ですね。 また傘の周辺部は脱色し白色っぽくなるため、縁取りが美しいです。


■ 2016年09月25日 撮影

本種の魅力はやっぱり裏側。管孔は黄色で孔口は暗赤色で青変性あり。 傘も裏側も赤いので裏返した時のインパクトはハンパじゃないですね。 ただこの写真では本種最大の特徴が解説しづらいので、下で改めて・・・。


■ 2016年09月25日 撮影

一番手前の子実体を拡大してみました。一番手前の子実体の管孔に注目。 管孔部に水滴が滴っているのが見えますでしょうか? 実はこれが本種が新属となった最大の理由であり、本属菌の持つ最大の特徴なのです。 本種は若い時に管孔部から黄色を帯びた汁を出すことが分かっています。 属名の「Exsudoporus」も「管孔から沁み出す」と言う意味ですからね。

そもそも発見難易度自体が極めて高く、情報不足で完璧に食毒不明です。 亜高山帯の針葉樹を宿主とする菌根菌のイグチは食も猛毒も存在します。 そもそもメチャクチャ貴重なキノコなので食べないであげて下さいね。 キノコ屋さん的には本種と出会うこと自体がステータスとなり得るくらい珍しいんですから。

■ 2015年09月05日 撮影

もろぞーさんとオサダさんに同行させて頂き、富士山で初対面した子実体。 初見時の衝撃は尋常じゃなかったです。もう「言葉にできない」が流れます。 上でも書きましたが本種はこのように単生しているのが一般的です。


■ 2015年09月05日 撮影

傘です。写真でも粘性の高さが想像できるくらいにテカっていますね。


■ 2015年09月05日 撮影

名前に「ウラベニ」と入っていないのが不思議なくらいの赤い管孔です。 鮮やかな緑のコケの中に置くと色相環の反対側である赤は引き立ちます。


■ 2015年09月05日 撮影

しかし本種最大の特徴はこの独特な柄です。これは他に類を見ないですね。 柄は傘と同じ暗赤色で表面には暗色の網目があります。そう、初めは。 柄が伸びても表皮は不思議と伸びずにひび割れて柄の所々に残ります。 そのため赤い部分にのみ網目があり、他は肉が露出するのです。 肉はやや黄色を帯びた白なので、柄が紅白で縁起が良い感じになります。 また柄の下部では色が淡くなり、基部には黄色の菌糸が見られます。

■ 2015年09月05日 撮影

幼菌です。この段階ではハナイグチっぽいですね。環境が全然違いますけど。 てかもうこの段階で柄に亀裂が入り始めてますね。不思議な性質ですね。

■ 2015年09月05日 撮影

本種は不思議と単生する事が多く、このような2本立ちでも結構レアです。 手練3人がかりで数時間かけて計4本しか発見できないくらい珍しいのです。 何とかこれを自力で見付けられた時は大歓喜でしたよ。貴重な経験でした。

■ 2016年09月25日 撮影

遠目にも分かる圧倒的違和感。この赤さはマムシグサの実の比じゃない。


■ 2016年09月25日 撮影

近付いてみると子実体単体としては過去最大サイズの立派なやつでした。 黄色い斑点のある深紅の傘に赤と黄色のだんだら模様の柄、素晴らしい! 低地で見るどのイグチとも違うので「ここは日本か?」と思ってしまいます。


■ 2016年09月25日 撮影

変色性が有るならやはりやってみたい!てことで「アカネ」と書いてみました。 本種の青変性はかなり強く、指で軽く擦るだけで瞬時に変色を起こします。 ただ管孔部が赤色なので青と混じって黒に近い色合いになりますけど。 それにしても毎度毎度トビムシに集られてますね。好物なんでしょうか?

■ 2017年08月12日 撮影

この日は頑張って探してはいたのですが歩けども歩けども見付からないアカネ。 ・・・普段の冬虫夏草眼が役に立ちましたね。帰り際に何とか幼菌を発見です。

■ 2023年09月09日 撮影

本当に久し振りに「世界一アカネに近い人物」と私が勝手に呼んでいるもろぞー氏とのオフ会へ! そんな氏をもってしても確実に会えるとは限らないと言うほどには出会いづらいのが本種。 しかし不思議と私がお邪魔した時は必ず出会えているんですよね。 今回はいつも昼食を取っている休憩場所で発見! 今まで見た中では一番標高が低かったです。ちょっとボロかったですけど・・・。

■ 2023年09月09日 撮影

登山中に新規個体発見!先を急いでいて行きに撮り忘れたので下山時に撮影しました。


■ 2023年09月09日 撮影

アカネと言えば何と言ってもこのだんだら模様のように残る柄の外皮ですよね。 この感じは唯一無二って感じがして良いですよね。生物にとってオンリーワンは褒め言葉。

■ 2023年09月09日 撮影

下山を始めた直後に同行していたしんや氏が発見!根に隠れていたのにファインプレーすぎます! しかもこの日見た中では文句無しで一番美しい子実体だったと断言できます。 あとやっぱ背景の緑にアカネの赤ってのがまた最高に映えますねぇ。


■ 2023年09月09日 撮影

本種の特徴でもあるカーミン紅色に全体が染まったこの姿!これを見るために来たようなものですよ。 まぁ実際にこれを見るために来たんですけどね。この子実体は傘の黄色い色ムラも良く出ています。 何でこんな模様が出来るんでしょう・・・不思議です。 でもこれがあるから柄の黄色い部分もバランスが良く見えるんでしょうけど。


■ 2023年09月09日 撮影

ローアングルで特徴的な柄も撮影することができ、その他にもレア菌が多数見られて大満足のオフ会となりました。 このフィールドのポテンシャルともろぞー氏の案内レベルの高さ、両方あってこそでしたね。
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