■Fuligo septica (ススホコリ)

■ 2019年08月11日 撮影

粘菌ですね!変形菌ですね!恐らく我が国の変形菌の代表種ではないでしょうか? 和名は「煤埃」。キノコ屋さんなら多くの方が変形体や子実体を見たことがあるのでは? 夏季に各種林内地上、特に広葉樹材上に発生する極めて一般的な変形菌の1種です。 変形体だけでは判断は難しく、外見の良く似た種も存在するので同定はやや難しいですが。

外見が良く似たものに別品種のキフシススホコリ(f. flava)が存在します。 ススホコリ属はは細毛体が石灰節と連結糸から成りますが、キフシはその名の通り石灰節が黄色です。 子嚢が白色のものはシロススホコリと言う別種です。


■ 2019年08月11日 撮影

ススホコリの成熟した子実体です。良くオムレツと表現されるようですが、うん、納得です。 変形体は鮮やかな黄色ですが、成熟するとこのような穏やかな黄褐色に変化します。


■ 2019年08月11日 撮影

奥に見えていた子実体です。本種の子実体は変形菌的には着合子嚢体と呼ばれます。 これは子嚢同士がその名の通り着合して大きな塊のようになった構造を指します。 基部に見える白い菌糸は変形体が這い回った跡ですね。 本種は石灰節が白色のため、成熟するとこのように子実体表面が白っぽくなります。 しかし品種のキフシススホコリではこの状態になっても鮮黄色を維持する点で区別できます。 本来は顕微鏡観察すべきなのですが、残念ながらココは東吉野国立公園大台ヶ原なんですよね。 採取禁止です。

食えるモンなら食ってみろ!ナイフで掻き採って集めてみろ! ・・・と言いたいトコロですが、海外だと食用にする地域もあるのだそうです。信じられねぇ。 でもどちらかと言うと飼ってみるほうが面白かったりするかもですね。 ある程度の水分と有機物があれば飼育することが可能なようです。

■ 2009年07月04日 撮影

コチラは10年前の初発見、と言うか初撮影時の写真です。 立ち枯れに這い上がっていたので遠くからでも良く分かりました。


■ 2009年07月24日 撮影

コチラが有名な変形体と呼ばれる「粘菌」と言われて浮かぶ姿ですね。 これは移動しつつ自身の栄養となる有機物などを探して食べている状態。 そのため必要最低限な菌糸を残して、菌体の大部分は進行方向へと移動してゆきます。 まるでアメーバのようにねっとりと広がって行くさまはまるで地球外生物のようです。 事実、海外では大発生時に宇宙生物と勘違いされて騒ぎになったこともあるそうです。


■ 2009年07月24日 撮影

コチラは変形体が子実体を形成している状態です。 十分な栄養を摂り、胞子の拡散に適した場所に到達すると子実体形成が始まります。 こうなると変形体が一気に1ヶ所に集まるため、周囲に変形体の這った跡だけが残ります。


■ 2009年07月24日 撮影

変形体は互いに絡み合って細かな網目状になり、これが着合子嚢体になります。 何となく硬そうに見えますが、触ってみると粘液状でねちょっと手に付きます。付きました。

■ 2009年07月24日 撮影

巨大な子実体を発見!これだけ大きければ発見は容易、と言うか見落とすほうが難しいと言うもの。


■ 2009年07月24日 撮影

ミカンのネットを彷彿とさせる形状ですね。流動的だった名残を感じます。 本種は変形菌の中でも特に大きな子実体を作るため肉眼での観察も容易。 子嚢が互いにくっ付き合って形成される巨大な着合子嚢体は圧巻です。

■ 2009年07月24日 撮影

コチラは地衣類によじ登っている子実体です。 やはり胞子を飛ばす際は高い場所を求める性質があるようです。合理的ですね。 そのため本種の子実体は周囲に比べると少し高い場所に形成されていることが多いですね。

■ 2010年06月21日 撮影

コチラは老菌。成熟して子嚢が破れ、褐色の胞子が露出しています。 表面は白く退色してしまっていますが、良く見ると少し黄色っぽさが残っていますね。 この状態でもキフシススホコリはもっと黄色が残ります。

■ 2019年08月11日 撮影

この日はTOP写真もそうですが大台ヶ原がススホコリ天国でした。 道を歩けばススホコリに当たるってレベルでそこかしこに不自然な黄色が落ちてる始末。 綺麗な子実体が選り取り見取りで良いことではあるんですが、流石にこれだけ見ると飽きるぜ。


■ 2019年08月11日 撮影

ちょうど子実体形成の真っ最中でした。この状態になれば成熟はすぐです。 広範囲に広がった鮮やかな変形体も綺麗ですが、集合していると鮮やかさが引き立って好きですね。

■ 2019年08月11日 撮影

コチラは成熟した子実体です。注目すべきは変形菌そのものではなく・・・。


■ 2019年08月11日 撮影

拡大してみると分かりますが、今回注目すべきは「動物」です。 パッと見ただけで甲虫の成虫と鱗翅目の幼虫が確認できます。 変形菌の子実体には数多くの動物が集まり、貴重な食料として利用します。 そしてこれらの生物の身体に胞子が付着することで散布者としての仕事をするのです。
■図鑑TOPへ戻る