■Geastrum lageniforme (トガリフクロツチグリ)

■ 2019年10月13日 撮影

本種なんだろうな〜と思いつつも自信が無くて掲載を先延ばしにしていました。 2020年に紛らわしいとされる種と比較して明確な違いを見出だせたので掲載決定です。 ブナ材が朽ち果てた跡に発生しています。有機物が豊富な地面に発生する「尖袋土栗」です。 外見はツチグリに似ていますが、実は目レベルで異なります。 胞子の拡散手法は同じなので、所謂「収斂進化」と呼ばれる現象ですね。 ただツチグリとは異なり水分によって外皮は開閉しません。

掲載を踏み止まっていた理由は外見が極めて良く似たフクロツチガキの存在です。 今回しっかりと観察することができたので本種で良いと判断しました。 ちなみに成長具合によってはシロツチガキエリマキツチグリにまで似て来ます。


■ 2019年10月13日 撮影

子実体はツチグリの色違いと言った見た目。 外皮が放射状に裂け、その中にある球形の内皮が露出すると言うもの。 ここに雨粒を受けることでグレバ内の胞子が衝撃で頂孔から噴出されます。 原理までツチグリそのまんまですが、外皮が分厚く、外皮内面に模様は無く乳白色〜淡褐色、 乾燥しても外皮が開閉しないと言った明確な相違点が数多く見られます。


■ 2019年10月13日 撮影

ここまでは外見の似たシロツチガキと共通なのですが、最大の違いが頂孔付近にあります。 富士山のように尖った頂孔の周辺に円座と呼ばれる丸い縁取りが見られるのが分かりますか? 実はコレ、シロツチガキには全く存在しないのです。これでやっと本種として掲載する決心が付きました。

ツチグリは幼菌時食用になると聞きますが、ヒメツチグリ属菌では聞きませんね。 食不適としておきますが、仮に無毒であっても恐らく食用価値は無いでしょうね。

■ 2019年10月13日 撮影

円座を持つと言うここまでの特徴までは、これまた類似種のフクロツチガキと共通。 そこで決定的な違いとなるのが、この幼菌の異常な尖り具合です。 クワイ形と表現されるこの異様な形状こそ、本種の和名に「尖」の字が入っている理由です。 種小名も「瓶形の」と言う意味であり、この幼菌の形状に由来しています。

■ 2019年10月13日 撮影

幼菌の外皮が開裂を始めたところなんですが、多分結構な人数の方がとあるものを思い浮かべるのではないでしょうか。 そう、エイリアンの卵です。

■ 2019年10月13日 撮影

何かエリマキツチグリっぽく見えませんか? 実は本種、生育具合によっていは内皮周辺の外皮内面が剥離し、襟巻き状になることがあります。 これはフクロツチガキやシロツチガキでもたまに見られる現象。紛らわしいったらありゃしない。


■ 2019年10月13日 撮影

ですがこの円座は結構特徴的かな?シロツチガキには円座はありませんし、フクロツチガキにしては背が低い。 エリマキツチグリには似ているかもですが、幼菌の形状が全く異なります。 チェック項目が多くて困りますわ。

■ 2020年10月16日 撮影

今年も同じ場所に大発生していてくれました。 ただブナ材がほぼ完全に朽ちてしまったので、ここの栄養を使い切ったら恐らく終了でしょう。 一体いつまで発生してくれるでしょうか・・・?


■ 2020年10月16日 撮影

本種は他のヒメツチグリ属菌と比べて先端が尖っているため、開裂した外皮の先端が長くなります。 そのためかこのように裂片先端がねじれる光景が見られます。 ただこれは開裂直後だけで、すぐに反り返って見えなくなってしまいます。


■ 2020年10月16日 撮影

顕微鏡観察もやってみました。胞子は褐色球形で表面にとげが見られます。 すぐ隣に発生しているエリマキツチグリと比べると極わずかに小さくて色がやや淡色のようです。 並べてみると結構違いが分かるのですが、比較対象が無いと判別には役立たなそうです。

■ 2020年10月16日 撮影

開裂が始まったばかりの幼菌を見付けたのでパシャリ。 こうして見ると異様な先端の尖り具合と、面白いほどのキレイな裂け方が印象に残ります。 タマネギに見えて来て困ります。
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