■Geastrum triplex (エリマキツチグリ)

■ 2019年07月07日 撮影

地味に見かけない、見かけても晩秋が多い、そんな印象がありますね。 久し振りに地元で綺麗な子実体に出会うことができました。 道路脇などの腐植の多い地上で見付かることが多いようです。 漢字で書くと「襟巻土栗」。由来はまぁその姿を見れば納得ですよ。 パッと見はフクロツチガキやトガリフクロツチグリに似ますが、襟巻きを見れば大体は判別できます。 てかこの場所、すぐ隣にトガリフクロツチグリの群生があるのでいつも境界が紛らわしいです。

上でも書きましたが、和名に「ツチグリ」とありますが、実はツチグリとは縁遠い種です。 形状は似ていますが本種はヒメツチグリ目でツチグリはニセショウロ目。 何と目(もく)レベルで異なるんですよね。こんなに形状が似ているのに不思議です。 縁の無い種同士が同じ方向へ進化する収斂進化とはまさにコレですね。


■ 2019年07月07日 撮影

他のツチグリ系の種と同様に子実体は幼菌時球形。 成熟すると厚い外皮が開裂し、見慣れたツチグリ系の形状となります。 しかし本種は内皮と外皮の間の分厚い中層の基部に襟状の縁取りが出来るのが和名の由来です。 外皮と内皮は薄いですが、中層は分厚くてボソボソした脆い質感です。 胞子を内部に蓄えている内皮は球形で色は淡褐色


■ 2019年07月07日 撮影

内皮を観察する際に注目すべきは胞子を吹き出す頂孔部周辺に円座が存在することです。 真上から見ると尖った頂孔部の周辺に綺麗な丸い縁取りがありますが、これが円座ですね。 この構造の有無で見分けられる別種も存在します。

食不適です。毒は無いみたいなんですが、見た目にもマズそう。 ツチグリもホコリタケも幼菌は食えるのですが、本種はどうなんだろう?

■ 2007年11月18日 撮影

初発見は意外と早く、まだペーペーだった頃に良く訪れていたフィールドでした。 コンクリで塗り固められた急斜面の底と側溝との間の平らな場所に堆積した土の上に出ていました。 そんな場所なので周囲には樹木はありません。腐植生ですしね。 老成して内皮がボロボロになると円座が見づらくなるので注意。

■ 2013年11月09日 撮影

図鑑にも書かれていますが、本種は落葉の多い地上を好むみたいです。 スギ林内の落葉が溜まった場所に群生していました、古かったのが残念。 良く見ると頂孔の周辺にリングが有りますね。これは円座と言います。 これの有無で種をある程度見分けることができるので要チェック。

■ 2020年10月26日 撮影

2019年にTOP写真を変更した子実体が発生していたフィールド、安定の発生量です。 この場所は隣り合うように本種とトガリフクロツチグリが棲み分けしている面白い場所。 実際にこの2種は混生していることもあるんだそうです。 何か中間的な子実体もあって紛らわしかったんですが、今年は顕微鏡観察でしっかり区別できました。


■ 2020年10月26日 撮影

相変わらずこの場所は子実体が綺麗ですね。 この場所は大きなブナ材が朽ちたものが地面を覆い尽くしたような状態。 天然のウッドチップとでも言えば良いでしょうか。 そのため堆積物が少なくても発生に適した有機物が豊富な環境になっているようです。


■ 2020年10月26日 撮影

今まで深く考えていませんでしたが、種小名の「triplex」は「3重の」と言う意味です。 何でだろうなと考えてみて「あっ」と思いました。 通常のツチグリ系キノコが内皮と外皮で2重と考えるならば、 本種はその間にある襟巻きを1枚と数えているから「3重」と言う感じなんですね。 実際には外皮が部分的に剥離しているだけなんですが、これは面白い発想だなぁ。


■ 2020年10月26日 撮影

子嚢胞子は褐色で球形、表面にトゲがあります。 本属菌の胞子は良く似ていますが、紛らわしいトガリフクロツチグリのほうが僅かに小さく淡色です。 並べて見ると違いが分かりますが、単体で見るとまぁまず分かりませんね。

■ 2020年10月26日 撮影

本種は幼菌も地味に特徴があります。今回は綺麗な幼菌が多数見られました。 個人的には今まで見たヒメツチグリ属菌の幼菌の中では一番美味しそうに見えますね。 和菓子っぽくて。


■ 2020年10月26日 撮影

本属菌は開裂の起点となる幼菌頂部が大きく突出する種が多いのですが、 本種は栗きんとんの絞り跡のようにつぼっとしています。 シロツチガキもフクロツチガキも多少、トガリフクロツチグリは顕著に尖っているので判断基準としては結構有効だったり。
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