■Gelatinipulvinella astraeicola (ツチグリツブタケ)

■ 2020年06月20日 撮影

名前が長すぎて収まるか心配でした。和名は2021年に「土栗粒茸」が提唱されました。 コロナ緊急事態宣言解除を受けて超久々に青fungi氏とオフ会を行った際に発見。 ツチグリの古い外皮にのみ発生すると言う尖った性質を持つ子嚢菌類です。 以前から存在は知っており、探してはいたのですが・・・以外と珍しいのかな? 気生型冬虫夏草が出るような場所なので多湿環境じゃないとダメなのかも。

ツチグリの外皮内面に発生する子嚢菌類は本種くらいなので同定は容易です。 ツチグリそのものは一般的なキノコですが、そのワリに本種の発生報告は少ないです。 これについては誰も古いツチグリなんて気にしないってだけなんじゃないかと。 実際には相当広範囲に分布している種なのではないかと思われます。


■ 2020年06月20日 撮影

少し前にtwitterで発見報告を見ていたので、意識して探そうとした矢先の発見でした。 やっぱ「知ってる」ってのが重要なことですね。 え?どれがキノコか分からない?古いツチグリの残骸しか写ってないって? しょうがないな〜。


■ 2020年06月20日 撮影

少し倍率を上げてみました。もう流石にお分かりですよね。 そう、ツチグリの外皮の内側、白い模様が剥げた後に密生している白い粒が本種です。 え?まだ良く分からない?小さすぎて分からない?しょうがないな〜。


■ 2020年06月20日 撮影

もう良いですかねこの展開。もう少しだけ拡大してみました。 朽ちた外皮内面に小さな子嚢菌類が生えています。これが本種です。 外皮外面や内皮には発生せず、必ずこの外皮の内側に発生します。 でも確かにこれは分かりませんよね。 ツチグリの裂けた外皮のサイズから考えれば、いかに小さいかは想像できるかと。


■ 2020年06月20日 撮影

いくらなんでも小さいので、帰宅後に高性能マクロレンズで撮影してみました。 子実体は透明感があり、直径は0.3mmくらいしかありません。 直径300μmとか頭オカシイんじゃないかと思えて来ます。


■ 2020年06月20日 撮影

幼菌は淡黄色の透明感のあるいぼのような状態です。 やがて薄黄色の薄皮のようなものが破れ、灰色の子実層面が露出します。 チャワンタケのような構造ですが、椀形にはならずクッションのようにゆるやかに膨らみます。 破れた薄皮は椀の外側に破片となって残っているのが確認できます。 こうして見ると確かに子嚢菌類だなぁって形状をしていますね。


■ 2020年06月20日 撮影

正直小さすぎて綺麗な顕微鏡写真は撮れないだろうなと諦めかけていました。 しかしダメ元でカミソリで切った断面が意外と綺麗に子実層面を捉えていました。


■ 2020年06月20日 撮影

とても綺麗に子嚢と側糸が切り出せました。 子嚢は長いものでも80μmと短く、8個の子嚢胞子でほぼいっぱいいっぱいです。 面白いのが側糸で、基部で分裂するのはありふれていますが、さらに途中で分岐するようです。 このような不規則な分岐を起こす側糸はあまり見ない気がします。


■ 2020年06月20日 撮影

子嚢胞子はやや片側に反った長楕円形で、長さは12〜14.5μm。 内部には無数の油球様内包物が存在します。 子実体のサイズのワリには胞子は大きく、見た目もキレイなのでポイント高いですね。 観察中に褐色の球形のものが混ざっているので何だろうと思ったら、これツチグリの胞子だ。


■ 2020年06月20日 撮影

メルツァー試薬での染色結果は非アミロイドでしたが、側糸が見やすくなって分かりやすくなってます。 所々に見える側糸は基部で分岐していますが、明らかに上方で分岐しているものが見られます。


■ 2020年06月20日 撮影

子嚢が小型なので油浸対物レンズでも全体が写せますね。 この通りどこも青くならない非アミロイドです。 何かちょっと赤っぽくなってる気がしないでもないですが。 子嚢胞子は8個ですが、子嚢が短すぎて先端付近は2列になって詰まってます。

食不適に決まってます。0.3mmですからね。言わせないで下さい。


■ 2020年06月20日 撮影

実はこのツチグリの残骸を発見した場所にはかなりの数の残骸がありました。 しかし発生が確認できたのはTOPの2つのみ。他のものはルーペで見ても幼菌すらありませんでした。 どう言う条件で発生するのかイマイチ良く分かりません。 ただ残骸の追培養で発生することもあるそうなので、単に見えていないだけなのかも知れません。

■ 2020年07月11日 撮影

しばらくしてから同じ場所を訪れてみると・・・あー時期間違えたなコレ。


■ 2020年07月11日 撮影

これ前回観察時は最盛期じゃなかったですね。凄まじい発生量です。 しかも梅雨の長雨で水分が豊富なのか子嚢盤の状態も良いようです。 でもこの日は本命が居たのでしっかり撮影はせず。惜しいことをしたかも。


■ 2020年07月11日 撮影

うわ、これトライポフォビアの人はアカンやつや。子嚢盤の数が凄まじいです。 いや、実際には数は前回観察時と変わってないんですよね多分。 未熟だった子嚢盤が開いてるからこんな感じなんでしょう。

■ 2022年09月10日 撮影

亜高山帯にも普通に居ました。と言うか存在を知ってからバンバン見付かりますね。 逆に言えば存在を知るまでは目に入らなかったってことになります。 そりゃ古いツチグリの残骸なんて意識しないとわざわざ見に行こうとしませんもんね。 まさに「知っていること」の大切さを体感できる種です。


■ 2022年09月10日 撮影

拡大してみると外皮内面にウジャウジャ。しかし本種はどのタイミングで感染するんでしょう? 宿主となるツチグリが発生する前はどこで待機しているのか不思議です。 古すぎる外皮には出ていませんし、比較的新しい残骸に出ているのも気になります。
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