■Gyrodon lividus (ハンノキイグチ)

■ 2022年09月10日 撮影

青fungi氏とのオフ会にて発見。亜高山帯のブナやミズナラの立ち並ぶ広葉樹林で意外な出会い! 最初は隣に生えていたシラウオタケを撮影していたんですが、隣のキノコに違和感が。 膝を突いて覗き込んだ瞬間に本種と気付き、大声で和名を叫んでいました。 主にカバノキ科ハンノキ属と菌根を形成する「榛木猪口」です。 ハンノキ類自体は日本中どこにでもあるのに、本種の発生は極めて少ないと言う特徴があります。 初見時の北海道で十分な観察ができなかった心残りのある種の1つだったので本当に嬉しかったです。

和名に「イグチ」とあり、裏側も綺麗な管孔なのですが、こう見えてヒダハタケ科です。 属としてはハンノキイグチ属ですが、確かに同日に見たヒダハタケと上からの見た目はソックリでした。 そもそもヒダハタケ科はイグチ目ですので、根っこは同じなんですけどね。 樹種は正確には不明ですが、周囲にヤシャブシと思しき樹木が多かったので、これが宿主で間違い無いでしょう。 「コミノクリイロイグチ」の別名があります。


■ 2022年09月10日 撮影

この場所では良くヒダハタケを見ていたので、普通にそうだと思っていました。 しかし傘表面に妙に粘性があることに疑問を感じました。


■ 2022年09月10日 撮影

傘はこんな感じで褐色で所々に濃淡があります。 テカっているのは濡れているせいもありますが、傘に弱い粘性があるためです。 北海道で見たものと比べるとちょっと赤みが強い気がしますが、個体差のレベルでしょう。 この濃淡がある感じもヒダハタケっぽいですよね。


■ 2022年09月10日 撮影

地面に顔を近付けて横から見た段階で本種だとは分かっていましたが、正直まだ信じられない! と言うことでoso的儀式をやっと!やっと執り行うことができました!


■ 2022年09月10日 撮影

ハンノキイグチ最大の特徴。それは管孔が柄に垂生することです。 垂生と言うとアミタケが思い浮かびますが、本種は孔口が微細なので全く印象は異なります。 どちらかと言うと管孔に厚みのないニセアシベニイグチに似ていると思いますが、 ニセアシベニは柄が長く色が淡いのに対し、本種は背が低く色濃いです。 またひだの名残りなのか孔口が放射状に並んでいるのも独特です。 また変色性も独特!青変ののち褐変します。 ヒダハタケが褐変性を持っているので、その名残りなのでしょう。 ヒダハタケとイグチの中間みたいで面白いですね。 儀式として管孔部に「ハンノキ」と書くことができ、oso的には大満足です!

ヒダハタケ科と聞くと有毒種が多いので若干不安ですが、普通に食菌で比較的美味しいです。 持ってみても分かるほど肉質は軟らかいので、歯応えには期待できません。 しかし肉の舌触りと香りが良いので、油を用いた料理に合うのだそうです。 ただ流石に今回は撮影に徹底していたのでスルー。いつかは味見してみたいキノコの1つですね。

■ 2019年09月21日 撮影

北海道遠征2日目の日本地下生菌研究会主催の調査。 肝心の地下生菌の収穫はそこそこでしたが、集合時間に遅れそうな帰路にて遭遇したのが初対面。 ずっと出会いたいと願っていた種だったのでマジで嬉しかったです。 現地の方に伺ったのですが、本種は名前に似合わずハンノキの樹下以外にも発生します。 と言うのもカバノキ科の範囲まで菌根を作るんだそうです。 このフィールドではハンノキ属樹種は存在せず、落葉を見るにダケカンバが宿主のようです。 言われてみればハンノキ属はカバノキ科ですもんね。


■ 2019年09月21日 撮影

北海道でようやくお会いできたtwitterフォロワーのତ.Fungi.ତ氏と駐車場への帰還中に発見。 集合時間に遅れそうでマトモに写真が撮れなかったのが悔やまれます。 傘表面は黄褐色繊維状。写真でも分かるように傘には湿時粘性があります。かわいい。 成長すると繊維が相対的に薄まり、全体的に淡色になります。


■ 2019年09月21日 撮影

ハンノキイグチの面白さは何と言ってもこの垂生する管孔! そして傘と同色の柄と黄色い管孔の境界が明確なのもニワタケの柄みたいで面白いです。


■ 2019年09月21日 撮影

管孔部が青変ののち褐変する様子までは何とか大急ぎで撮影しましたが時間切れ。 マトモに観察もできず、写真撮影後ダッシュで集合場所に戻りました。 そのため北海道遠征で唯一最大とも言える心残りでした。 なので2022年に本州で再会できたのは本当に、本当に嬉しい出会いだったんです。

■ 2022年09月10日 撮影

と言うことで2022年に戻って来ました。 このフィールドの何が素晴らしいってコケとのコントラストですよ! シラウオタケが出るような環境ですので冷涼多湿でコケの状態が素晴らしい! 左上にチラッとシラウオタケが見えてるのがこの写真のミソですよ?


■ 2022年09月10日 撮影

うーん、これは確かにコレだけ見るとヒダハタケっぽいですね。 傘の濃淡もそうですが、この平らな感じの傘の形状と背の低さがそう感じさせるのでしょう。


■ 2022年09月10日 撮影

今回はちゃんと裏側を撮影するために文字は書かずに撮影です。 個人的に好きなのがこの柄の色の変化です。 基部は傘と同様あるいは傘より濃い褐色なのですが、垂生する管孔付近で急激に単色になります。 その結果柄と管孔の境界がハッキリ現れるんですよね。毛の生えてないニワタケみたい?


■ 2022年09月10日 撮影

拡大してみると分かるのが孔口に方向性があると言うことです。 イグチの孔口の形状あサイズは基本均一ですが、 ミダレアミイグチやアミタケなどの一部の種は孔口が放射状に並びます。 これはひだだった頃の構造の名残りであり、本種にも若干それが感じられます。

■ 2022年09月10日 撮影

同行者の青fungi氏も今回の発見にはビックリ!直前まで撮影していたシラウオタケが霞む大発見でした。 しかし樹種的には普通なのに、このような亜高山帯に来なければ見れないと言うことは、 本種が冷涼な環境を好むと言うことなのでしょう。 低緯度地域の低地で見られないことや、北海道などの高緯度地域で良く見付かるのも納得できますし。
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