★Gyromitra esculenta (シャグマアミガサタケ)

■ 2022年04月03日 撮影

以前gajin氏に案内して頂いたフィールドで出会いました。 早春の針葉樹林に現れる和名「赭熊網笠茸」。 その名に相応しい脳みそ状の凹凸を持つ頭部が特徴の子嚢菌類です。 地方によっては「グニャグニャ」や「シワアダマ」などの通称を持っています。 また名前にアミガサタケとありますが、本種はノボリリュウ科に属します。 基本的には針葉樹系のキノコですが、フィールドによっては不思議とサクラの樹下に発生したりします。 ちなみにアミガサタケと同様に種小名の「esculenta」は「食べられる」と言う意味ですが・・・?

ネット普及のおかげで知名度は高くなったと思われます。 危険性が取り沙汰されることが多いですが、実際まぁその通りの危険さでしょうね。 ただし外見的に良く似た種が存在するとされており、安易に判断するのは危険です。 このサイト内でも別種じゃないかな?と疑っている写真があります。


■ 2022年04月03日 撮影

子実体はずんぐりしていて分かりづらいですが、属する科に相応しいノボリリュウ型をしています。 裾が広がったノボリリュウの子実層面の端が更に強く内側巻いた、と考えると想像しやすいでしょう。 柄は淡赤褐色で不規則に波打ち、切断すると断面に不規則な空洞があります。 この辺もノボリリュウと同じ特徴ですね。


■ 2022年04月03日 撮影

頭部を拡大してみました。子実層面(チャワンタケの椀の内側)が外に向いています。 色は赤褐色で表面に著しい脳状のシワが見られるのが「赭熊」の由来。 大型の子実体になると気持ち悪いくらいにシワシワになります。表面積を広げるための工夫ですね。 これは椀形の子嚢盤が子実層面を外に向けて反り返ったもの。そのためこの頭部には表裏があります

どう書くべきか迷いますが、致命的な猛毒菌と書くのが最も適当でしょう。 主な毒成分はジロミトリンとその加水分解物のモノメチルヒドラジン。 後者はロケットの推進剤としても使われ、前者よりも毒性が高いです。 誤って食すと主に肝臓に致命的なダメージを与えて死に至らしめます。 その症状の重篤さは猛毒御三家を彷彿とさせるほどです。 また発ガン性も有しており、このままだと良い所無しのキノコです。 が、本種は海外では美味な食菌として知られています。なぜでしょう? 実は毒素の沸点が100℃以下なので、加熱によって毒抜きできるのです。 きちんとした手順を踏めば、毒素を99%以上除去することが可能なのです。 ただし加熱時に発生する蒸気も猛毒であり、安易に手を出すべきではありません。 ちなみに味は非常に良いとされ、香りを嗅いでみましたが良い香りでした。

■ 2010年04月03日 撮影

初めて出会った子実体です。不思議と針葉樹が全く無い環境に出ていました。 ずっと憧れていただけに初見はテンション上がりまくりました。 やっぱりあの毒性を知っちゃうと出会いたくなりますよね? しかし縦構図を撮影し忘れた上に夕暮れ時で変な色に写ってしまったので、 ずっと差し替えしたいな〜とは思っていたんですよね〜。


■ 2010年04月03日 撮影

頭部を拡大してみました。あまり丸みを帯びず、珍しくノボリリュウ似の子実体でした。 実際にはこの縁部がもっと内側に巻き込んで、あの見慣れた姿になります。


■ 2010年04月03日 撮影

切断したのですが、生の時は弾力が無く、途中で折れてしまいました・・・。 本種の形状を一言で言うなら柄のあるチャワンタケです。 椀形の子嚢盤の基部が伸びて柄になり、子実層面を外側にして子嚢盤が反り返っているのです。 そのためアミガサタケとは全く構造が異なり、子嚢盤の縁部は柄と分離しています。 頭部断面に不規則な空間があるのはそのためですね。要は「椀の外側と柄の間」です。

■ 2014年04月05日 撮影

2010年の発見以降毎年訪れたシャグマスポット。しかし全く出ません。 年が変わる度に諦めずに何度も何度も足を運びましたが結果は・・・。 もうこの場所は絶えてしまったのだろうか。本気で諦めかけていました。 でも続けていれば良い事も有るものです。ちゃんと待ってくれていました。 しかも生えていた場所は奇しくも4年場所と寸分違わぬポイントでしたよ。


■ 2014年04月05日 撮影

拡大するとまだ子嚢面が未熟なのか光沢が有ります。新鮮な証拠ですね。 初発見は丁度4年前の同じ月。オリンピックを待ってる気分でしたよ。 しかもこの子実体は一週間後に奇跡を生むんですが、それはまた別のお話。

■ 2014年04月05日 撮影

探してみると一株だけじゃなかった!少し離れた場所にオチビを発見!


■ 2014年04月05日 撮影

申し訳無いけど一株だけ!観察のために引っこ抜かせて頂きました。 しかしこうして見るとアミガサタケじゃなくて完全にノボリリュウですよね。 いや確かに種としてもそっちと近縁なので当然っちゃ当然なんですけど。 頭部が大きいからアミガサタケに見えなくもないって命名なんだろうか。

■ 2014年04月12日 撮影

一週間振りに様子を見に来ました。先週の子実体はまだ残っていました。 子実層面は熟して胞子を飛ばしたのか、光沢が消えてツヤ消し状態です。 ひとしきり観察し終わった時、ふと斜面の下に目を遣ると・・・あっ!!!


■ 2014年04月12日 撮影

シャ・・・シャグマアミガサタケの群生だぁああああ!!!初めて見ましたよ! タチツボスミレ咲くアミガサの季節に相応しい見事な群生!タマラナイ! この後偶然合流したキノコハンターの鳥居さんと一緒に大盛り上がり。 今まで単生しか見た事が無かったので感激。やっぱ群生は脳汁出ます。


■ 2014年04月12日 撮影

イバラが凄いのでジーンズの上から引っ掻かれながらも夢中で撮影しました。 やっとこのアングルからの写真が撮れましたね。これぞシャグマですよ。 暗赤褐色の赭熊は迫力有りますね。不規則に波打つ柄もカッコイイ!

■ 2015年04月18日 撮影

近所の峠道で実況撮影中に偶然発見しました。感動のあまり絶叫しました。 実は今までの場所は観察会の方が発見した場所を教えて頂いていました。 しかし今回は間違い無く私が初発見の場所だったのです。嬉しいわぁ!

■ 2015年04月18日 撮影

一つ見付かれば周囲にも発生が確認できました。陽の光を浴びてカッコイイ!

■ 2015年04月18日 撮影

美しい子実体を発見しました。この全体的なグニャグニャが魅力ですね。 数も有り食べてみたくはあるのですが、流石に命を賭す度胸は無い! 不思議と食べなければって使命感は有るんですが、まだ置いときます。

■ 2016年04月16日 撮影

今年も出ました例の場所。でも1本だけで昨年と比べるとやや物足りない感じ。 以前から知っている場所も出ておらず、今年はハズレ年だったのかも・・・?

■ 2017年04月22日 撮影

以前見付けたスギ林内を探していると、今年も出ていてくれましたね。


■ 2017年04月22日 撮影

最近気になったんですが、ココに出るシャグマはどうも色が明るいような。 それに傘の色は明るいのに柄の色はむしろ赤っぽいんですよね。う〜ん。

■ 2017年04月22日 撮影

この日の最終目的地。日が暮れ始めた頃に発見した典型的なシャグマさん。 やはりこのドス黒い傘こそ本種らしいですね。格好良いキノコだと思います。 日暮れが近かったので山陰に入って青っぽく写ってしまいましたが、逆に風情がある見た目に。

■ 2019年04月07日 撮影

2018年は結構探したんですが出会えなかったシャグマ、今年はリベンジすることができました。 自分が知っている2ヶ所の発生地のうち1ヶ所で発生を確認。しかも今回は久々に大きい子実体に出会えましたね。


■ 2019年04月07日 撮影

子実層目に砂が付着しているのは、この手前に土がぶら下がっていたためです。 日光に晒されていた部分は黒くなっていますが、隠れていた部分は赤褐色のままです。 頭部の色の違いは個体差と言うより生育環境の差かもですね。


■ 2019年04月07日 撮影

子実層面を拡大です。今回は顕微鏡観察が最大の目的でした。 今までこれだけ出会ってきてキチンと顕微鏡で見たことが無かったんですよね。 確か実況動画でチョロっと触れただけかな? この子実体は成熟している子実層面を少しだけ採取するだけに留めました。 まぁ一週間に来てみたら野生動物かヒトかは分かりませんが消えてなくなってましたけどね。


■ 2019年04月07日 撮影

ちなみに大きさはコレくらいです。意外と小さいと思われるでしょうね。 ただこれでも今まで出会った中では大きい方です。


■ 2019年04月07日 撮影

まずは子実層面を切り出して観察してみました。 肉眼でも色濃く見えていましたが、顕微鏡で見てもかなり色素が多いですね。


■ 2019年04月07日 撮影

倍率を上げてみると子嚢と側糸がハッキリ見えてきました。子嚢内部の子嚢胞子も良く見えます。 側糸は糸状で下方で分岐し、隔壁あり。先端部は少し膨らんで棍棒形になります。 側糸内部には褐色の顆粒が含まれ、これにより子実層が色付いて見えます。


■ 2019年04月07日 撮影

子嚢胞子は長楕円形・・・と言うかラグビーボール形と言うか。 細胞膜は薄いですが、ピントを調節するとやや厚みがあるのが分かります。 また内部に2つの大きな油球を含むのが特徴です。 オーソドックスな子嚢菌類の胞子って感じですね。


■ 2019年04月07日 撮影

未熟な胞子も見られたので撮影してみました。この段階では大きな油球は確認できません。 その代わりに内部には微細な内包物が見られます。 観察する際は成熟した子実体を用いないと間違うかも知れませんね。


■ 2019年04月07日 撮影

メルツァー試薬で染めたものを油浸対物レンズにて撮影。 青く染まっている部分が確認できないので非アミロイドみたいですね。 子嚢は薄膜で先端には頂孔らしきものも蓋らしきものも見られませんね。 観察したかったミクロの部分をやっとしっかり見れたかな?

■ 2020年04月05日 撮影

2017年の発見以降、2年間に渡って姿を現さなかった地元のスギ林フィールド。 今年はしっかりと出ていてくれました。早い時期から下見もしていたので、単に見落とし? 後ろに見える小さな白い花はミヤマカタバミです。満開でした。


■ 2020年04月05日 撮影

このフィールドに出るものは姿形は似ていますが全体的に小型のような気がします。 もう1つのフィールドに出るものはどれも大型なので、個体差なのか別種なのか・・・。 発生環境もかなり違うので、成長の差なだけかも知れませんけど。


■ 2020年04月05日 撮影

前回しっかりと顕微鏡観察はできていますが、個人的に気に入らない部分を撮り直し。 まずは前回よりも大き目に縦構図で子実体断面を撮影。 子実層面はハッキリしていますが、その下の層の菌糸はグチャグチャでアミガサタケのように層になっていません。


■ 2020年04月05日 撮影

側糸先端部ももちっと拡大。やはりこの部分に色素が集中しているようです。 本種の側糸はかなり先端近くに隔壁ができます。これ意外と珍しですよね。 子嚢菌類の側糸は隔壁が付け根のほうにだけあるってのが多い気がしますので。


■ 2020年04月05日 撮影

そう言えば胞子を低倍率で撮影していなかったなと思いだしてパシャリ。 こうして見ると長楕円形と言うよりはラグビーボールのような紡錘形要素が強いですね。


■ 2020年04月05日 撮影

子嚢胞子も観察してみました。今回はある意味これがメインです。 実は大型の子実体と胞子の比較をしてみたかったんですよね。 結論から言うとほとんど差は無いです。 小型のもののほうが胞子が大きい気はしますが、決定的と言うホドではありませんので。


■ 2020年04月05日 撮影

前回の観察時には良い写真が撮れず掲載を見送ったメルツァー試薬で染めた子実層です。 薄く切ることができずに失敗しちゃったんですよね。今回はしっかり撮れました。 縁遠いですがアミガサタケ同様に子嚢が赤く染まるようです。


■ 2020年04月05日 撮影

子嚢先端を高倍率で撮影しても、やはり非アミロイドなので青く染色された部位は見えません。 ここまで見た感じだとやはりサイズは違えど顕微鏡レベルで別種と思える違いは見られませんでした。 現状、同種と考えて良さそうです。

■ 2020年04月05日 撮影

今年は2個体発見。やっぱ小さいですね。スギ林ってことに原因があるのかな。 でもそこそこ大き目のも見ているし、影響状態とかもあるのかも知れませんね。 何にせよ地元で、と言うか近所で見られるのは非常に助かります。

■ 2021年04月11日 撮影

gajin氏、すず姉氏、そして私の3人で実施した春の子嚢菌類オフにて出会いました。 このサイズの子実体を見たのは2019年以来です。地元のは妙に小さいもので・・・。 と言うか地元のフィールドでは今年は出なかったので、もう今年中は出会えないと思っていました。 人のほとんど通らないであろう林道脇の狭い範囲にボコボコ出ていました。

■ 2021年04月11日 撮影

奥に見えるタチツボスミレが妙に良い雰囲気だったので撮影した1枚。 この子実体はもう老成して乾燥が進んでおり、ツヤのある子実層面が剥離してパサパサになっていました。

■ 2021年04月11日 撮影

この日見た中で一番大きかった子実体です。これくらいのサイズになれば食べたいなと思えますね。 まぁ普通にメッチャ怖いので食いませんけど。 あといつも行くフィールドもそうなのですが、針葉樹が無いんですよね。 地元は一応スギ林なのですが、ここは地面を見ても分かるように広葉樹ばかりです。
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