★Hygrophorus russula (サクラシメジ)

■ 2020年10月27日 撮影

ブナの原生林を貫通する渓谷沿いの遊歩道で久し振りに出会うことができました。 実はこの場所で出会うのは13年振りだったりします。 地元で見付かるも以降全く発生が見られず、擬人化もしたのにリベンジできていませんでした。 全体的に和名の通りのサクラ色。独特な色合いを持つ美しいキノコ「桜占地」です。 大きな菌輪を良く作ることで知られ、森の中に行列を作る事が多いです。

巨大なフェアリーリングを作ることから、狭い範囲を見れば一列に並んで見えることがあります。 これを軍隊の隊列に例えて「ヘイタイキノコ」と言う地方名が付きました。 また長すぎる菌輪が峰を超えてしまうと言う意味の「ミネコシ」も有名な地方名です。 似たような理由で「タニワタシ」なんて呼び名もあるようです。 なお、名前が名前なのでシメジ属かと思いきや、実はヌメリガサ属だったりします。


■ 2020年10月27日 撮影

傘は本属菌としては極めて大型で、10cmほどにまで大きくなります。 色は赤ワイン色を帯び中央は濃色で、周辺部は白っぽくなります。 表面に濃色の鱗片のようなものが付着しますが、度合いは結構個体差があります。 またヌメリガサ属菌なだけあって傘にやや粘性があります。


■ 2020年10月27日 撮影

裏返してみました。柄もひだも基本的には白色ですが、無数の赤ワイン色のシミを生じます。 傷んでいると言うワケではないのですが、この変色の仕方は心臓に悪い・・・。 特に柄はシミが全体に広がり、柄そのものが傘と同色になっていることも。 ひだは柄に対してやや垂生し、ベニタケ科菌に形状が似るため、種小名がベニタケ属と同じになっています。

やや苦みがありますが、流石は「占地」と名が付くだけあって美味な食菌です。 私も頂きましたが、歯ざわりが優れており、美味しく頂くことができました。 ただ個人的にはこの時期の食菌の中ではややランクが低いかな?とは思います。 ちなみに加熱調理するとこの美しい桜色は消え、全体が黄〜オリーブ色に変化するためビックリします。 収量が多いのもキノコ狩り的には美味いですね。

■ 2007年11月09日 撮影

初発見は晩秋の渓谷。初めての出会いはこのフィールド初訪問時でした。 紅葉が美しく今でもその光景が脳裏に焼き付いています。 そんな中で出会った本種、まだまだ初心者でしたが色合いと発生状態ですぐに本種だと気付けました。


■ 2007年11月09日 撮影

本種はこの傘の独特な配色がいかにも本種って感じがしますよね。 サクラシメジらしさは一見すると傷みとも思える赤ワイン色の不規則さなんですよね。


■ 2007年11月09日 撮影

幼菌の頃はキレイな白色のひだなのですが、成熟するとこんな感じでシミだらけ。 オキナクサハツやカキシメジのように褐色のシミは見慣れてますが、桜色のシミとはまた風流な。 別に古くて傷んでるワケではないので普通に食べられます。


■ 2007年11月09日 撮影

これは巨大な菌輪の一部だったりします。 上記の通り、本種は極めて巨大な菌輪を作る種。 各地に数多く存在する地方名の中にもこの特徴に由来する物が多いです。 かなりの発生量だったため少し採取して食べましたが、苦味はあれど安定した美味しさです。 ですが加熱で色が抜けることを当時は知らず、鍋の中で「どこ行った?」と探したのも思い出です。

なお、この後でこのフィールドにヤマビルが出ることが判明。 以後足が遠のき、同時に出会う機会を失ってしまいました。

■ 2010年10月16日 撮影

久し振りに見れたと思ったら近所かつ何度も通った林道でした。灯台下暗しとはまさにこのことか! 以前の場所はヤマビル発生に従い足が遠のいていたので嬉しかったです。 巨大な個体が広範囲に見られ、鍋用に〜と持ち帰る方も居られましたね。


■ 2010年10月16日 撮影

以前見た個体と比べるとひだがあまり傷んでいません。ひだはやや密です。 赤ワイン色のしみを生じる前はほぼ白色か、少し赤みが差す程度で穏やかな色合い。 この色もやっぱ安心できるんでしょうね。

■ 2011年10月01日 撮影

昨年はかなりの個体数が確認できた近所のフィールドですが、今年は不作か? 数え切れないくらい生えてたんですが、今年はこいつを含めて3株だけでした。 雨に濡れて色素が溶け出し、赤い汁を垂らしていたのが印象的。

■ 2011年10月10日 撮影

食べ頃の個体を発見!良く見ると小さなのが隣に居ますね。 触ってみると分かるのですが、肉が非常に硬いことに驚かされますよ。 肉質の硬さは図鑑でも触れられていますが、市販キノコに慣れてると新鮮。 しかしこの発見を最後に地元での発生は途絶えてしまいました・・・。

■ 2020年10月27日 撮影

2011年の発見を最後に全く出会わなくなってしまった本種。 擬人化図鑑にも載せたのに写真更新できないのがずっと気になっていました。 なので10月も後半に慣ればヤマビルも居らんやろ!と思い切って超久し振りに始まりの地へ。 結果的には予想外の出会いの連発でしたが、本種もちゃんと居てくれました。


■ 2020年10月27日 撮影

あぁもうマジで可愛いなぁ!何なんだこの愛らしい色合いは! 実はこの独特な赤ワイン色って意外と他のキノコに無いんですよね。 この色見たら何となくサクラシメジだなって思えるくらいには特徴的だと思っています。 なおヌメリガサの名に恥じないペトペトした質感の傘です。

■ 2020年10月27日 撮影

てことで久し振りにリベンジできてもう大満足!来た甲斐がありました。 なお傘の裏に居るのはヤマビルではなくてヤスデです。お邪魔しましたね。
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