■Hymenochaete campylopora (ワヒダタケ)

■ 2022年04月28日 撮影

春の菌生冬虫夏草オフにて図らずも出会ってしまいました。ずっと出会いたかった種の1つ。 全然見られると思っていない中での出会いだったのでテンション上がりましたね。 広葉樹材上に発生する半背着生のヒダナシタケ型菌「輪襞茸」です。 上から見ると薄い傘が折り重なるように発生しているだけに見えますが、 裏側にキノコ界でも非常に珍しい構造を持ちます。完全にネタバレになりますけど、 同様の特徴を持つ種と言うと自分は本種とウズタケくらいしか知りませんね。

以前の学名は「Cyclomyces fuscus」でした。属名は「環状のキノコ」の意味です。 属名も「ワヒダタケ属」でしたが、現在はタバコウロコタケ属となっています。 個人的には旧属名が本種の特徴を良く現していて好きだったんですけどね。 現種小名は「湾曲した孔の」の意味なので、着眼点が属名から種小名に移ったワケですね。


■ 2022年04月28日 撮影

傘は旧種小名の「fuscus」の通りの黒褐色・・・いや、暗赤褐色くらいかな? 傘1枚1枚は貝殻状で、普通にパラパラと生える場合もありますが、 基本的にはこのように傘が折り重なる重生が多いです。 表面は短い毛が密生したビロード状で、同心円状の環紋が見られます。 正直上から見ると何の変哲も無い、スルーしそうになる地味なキノコです。


■ 2022年04月28日 撮影

しかし裏側を見るとそんな考えは吹き飛んでしまうでしょう。 この写真、上下を間違えたワケではありませんからね?


■ 2022年04月28日 撮影

少し離れた場所に生えていた別個体を裏返して並べて置いてみました。 キノコに詳しい方であればこの異様さにお気付きになるかと思います。 そう、ひだが変なんです。


■ 2022年04月28日 撮影

拡大すれば一目瞭然。本種のひだは傘の付け根を中心とした同心円状なんです。 それのどこが珍しいの?とお思いかも知れませんが、これがマジでクソ珍しいんです。 ひだを持つキノコのほぼ全てが傘の付け根を中心として放射状のひだを形成します。 世界的に見て他にも存在するかは私が無知ゆえ自信がありませんが、 私が知る限り同様のひだを持つ種はワヒダタケとウズタケの2種だけですね。 もし他にあったら教えて頂けると非常にありがたいです。よろしくお願いいたします。


■ 2022年04月28日 撮影

拡大してみましたが、見れば見るほど異質なひだですね。 自分が本種に出会いたかった理由は同心円ひだ2種をコンプしたかったためです。 ウズタケは地元で何度も見ていたので、残る1種を切望していました。 ただ珍しい性質を持ってはいますが珍しいキノコではなく、ワリと普通に見られます。

強靭な肉質の硬質菌であり、当然ですが食不敵です。 カワラタケとかシハイタケなんかと同じような肉質だと思って頂ければ、と。 毒があるかは不明ですが、そもそもそんな硬さのキノコなので食用価値を見出そうとしないで下さい。
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