★Hypholoma fasciculare (ニガクリタケ)

■ 2008年12月06日 撮影

初冬に訪れた自然公園。遊歩道脇を補強している針葉樹材上に群生していました。 ただ別に針葉樹材でなくとも広葉樹材からも普通に出るので、発生環境は各種腐朽材上ですね。 「知ってる毒キノコを挙げろ」と言われれば高確率で名前が出る有名種ではないでしょうか? 「苦栗茸」の名の通り、とてつもない苦さを誇ります。マジでヤバいです。 もうネタバレしちゃってるので書きますが、過去に死亡例もある非常に恐ろしい猛毒菌ですね。

クリタケと似ていると言われますが、実際にはかなり黄色みが強く、個人的には全然違うと思っています。 またひだの色が決定的に違うので噛まなくても肉眼的に判別もできます。噛みますけど。 本種は更に細かい分類の余地もあると言われ、外見的に似た種も多く存在します。


■ 2008年12月06日 撮影

各種腐朽材上に多数の子実体を束生させます。 傘の周囲に綿毛上の鱗片の跡が残っているのはクリタケと同属なだけありますね。 子実体全体が硫黄色をしているのが最大の特徴ですが、ここに落とし穴。 個体差によって傘全体が褐色のものが存在し、「黄色」と覚えるだけでは命を取られます。 注目すべきはひだの色。クリタケが白色から暗紫色に変化するのに対し、本種は最初からオリーブ色です。 最終的には紫褐色になりますが、ほのかに黄色っぽさが残っているので判断基準としては有力です。

最終手段ではありますが、方法は調理前の生の状態で苦味を確認するのも手です。 クリタケも多少苦味がありますが、本種の苦味はその比ではありません。 当然ですが味見は少量で行い、確認した後は必ず吐き捨てるようにして下さい。 ただコレも個体差があるので、最終的には自己責任です。

ここまでで壮大にネタバレしちゃいましたが、極めて致死率の高い猛毒菌です。 バレの必要も無いほど有名。家族6人中4人が死亡すると言う悲惨な事故例があります。 非常に多様な有毒物質を含む恐るべきキノコなので、決して似たキノコを食べてはいけません!


■ 2008年12月06日 撮影

まぁ猛毒菌だからと言って襲ってくることは絶対に無いですからね。 個人的には姿形が美しく、キノコの少ない時期を補完してくれ、噛んで遊べる大好きなキノコです。 師走の空を仰ぐその姿は何とも風情あるものでした。

■ 2006年09月21日 撮影

これが初めて見付けたニガクリかな?以後このレベルの群生に出会うのに時間がかかりました。 初見時が凄まじいとハードル上がってそれはソレで困るんですよね・・・。


■ 2006年09月21日 撮影

だって見上げるとこんな感じでしたからね。一体何なんだこの猛毒天国は! 明らかに土から出てますね。これに関しては色々と議論されてるみたいです。 確かに別種の可能性がありますね。何にせよ毒には変わらないでしょうけど。

■ 2006年12月06日 撮影

ちょっと待ってくれ、今は12月だぞ?こんな時期でも生えてるのかよ! やはり個体数は減りましたが、各々は状態も良くて立派な株が多いように思います。 近頃ニガクリ見ると齧ってみたい症候群を発症してしまったのでガブリ! うん、これこれ、ものごっつい苦い。 生の時に確認さえすれば事故は確実に減ると思うんですけどね。

■ 2006年12月22日 撮影

もう一度言わせてくれ、今は12月だぞ?確かに暖冬ですが限度ってモノがありますよ。 傘が茶色っぽくてクリタケっぽくて美味しそうですが、早とちりはダメです。 ひだはオリーブ色で柄は黄色っぽく、そして噛むと苦いので。 「晩秋〜冬にかけては発生しない」と言われることもありますが、これを見るにそうでもない模様。 チップや枯葉に埋もれて暖かい等、場所によっては発生するのでしょう。

■ 2007年09月24日 撮影

あまりに雰囲気が良かったので気合い入れて撮りました。 実は真夏でも何度か見かけたんです。ただ明らかに状態が悪かったんです。 秋になって気温が下がると急に元気出して来ます。怪しげな雰囲気が良い! ちなみにここ、結構人の通る遊歩道の階段の組木だったりします。

■ 2007年09月24日 撮影

裏側です。ひだはオリーブ色で傘周囲にクモの巣状の膜が残ります。 これが本種のつばなのですが、似た物がクリタケにもあるので、最も信頼性の高い判定法はやっぱりでしょう。 小さなカケラを口に入れてみて下さい。噛んでみて想像を絶する苦みなら本種です。 私も実際味見しましたが、それはもうとんでもない苦さです。 ゴーヤみたいな天然の苦みではなく、化学薬品みたいな苦み、いや刺激です。 注意!試す際は多量は口に入れず、味見をしたら必ず吐き出すこと! ただこの苦みは調理法によっては消える場合があるとも言われているのでお気を付け下さい。

■ 2007年11月11日 撮影

キノコの旬は秋。年中見られる本種もこの時期は美しいキノコを形成します。 猛毒キノコだとは言え、森の中でこの明るい黄色に出会うと足が止まります。


■ 2007年11月11日 撮影

奥に見えていた幼菌です。もう破滅的にカワイイですね。 もう食べちゃいたい!てか食べました。でも絶対飲んじゃダメですからね。 いやぁ・・・相変わらず苦・・・にっがぁぁぁあああああ! 唾液がエンドレスで出ますね。ニガクリタケは幼菌でもビリビリと苦い。

■ 2008年04月12日 撮影

俺はこう名付けたい。「猛毒オールシーズンプレイヤー」と。発生期間長過ぎです。 この成長具合だと1週間くらい前にはもう頭を出し始めてた感じですね。 まだキノコ自体があまり見付からない時期だと言うのに・・・。

■ 2008年10月04日 撮影

小型でもこの鮮やかな黄色は歩いていてすぐ分かる!大台ヶ原にも当然発生。 齧ってみたかったんですが、残念ながらココは国立公園なんですよね。 ぐっと涙とつばを飲んで写真撮影でガマンします。他の場所のより鮮やかに見えますね。

■ 2008年12月06日 撮影

死亡例もある猛毒菌だと言うことは重々承知ですが、この愛らしさにはつい口元が緩む。 恒例の噛み癖ですが、当然一本もぎ採ってガジッ・・・うぁ・・・苦っ・・・。 これが苦味成分and本種の主要毒成分であるファシキュロール類の味です。 この成分は発生環境によってかなりの個体差があるので、苦味の強弱はまちまちです。

■ 2009年11月22日 撮影

写真が多いなぁニガクリ。それだけ良く見付かるってことなんですけどね。 気温が低い時期なので最盛期ではないハズなのに、それを感じさせない発生量です。

■ 2010年10月01日 撮影

本種は発生時期の長さもですが、発生樹木の守備範囲も中々のものです。 この立派な個体群は朽ち果てたマツの倒木に発生していました。 スギの切り株などに群生していることも多く、何でもイケるようですね。 ちなみにキレイだったので噛んでみましたが、やっぱり苦いです。 にしてもこの株立、改めて見るとメッチャ綺麗ですね。TOP写真でも良いくらいです。

■ 2012年04月15日 撮影

何度も見てたんですけどね。どうしても写真を撮るのを忘れてしまうのですよ。 あとあまり綺麗な産状が無いのも考えものですね。汚れていることが多い種です。 でもまぁ噛むことは忘れません。一番スキンシップ取ってる猛毒菌かも。

■ 2013年10月27日 撮影

芦生原生林で初っ端出会ったのはコイツでした。ここは採取禁止ですけどね。 なので毎度欠かさずやってるスキンシップが残念ながらできませんでした。

■ 2013年11月13日 撮影

芦生は採取禁止だったので地元で見付けりゃそりゃ噛みますよええ。


■ 2013年11月13日 撮影

見ると最早落ち着く色合いです。もうどれだけ味見したか分かりませんね。 蓄積される毒だったらもうヤバイんじゃないかってレベルの噛み方です。 しかし紛らわしいと言う割に中毒事故例が少ない毒キノコなんですよね。

■ 2016年09月22日 撮影

走行中の車中からでも暗い森の中の原色イエローはハッキリ分かります。 しかしあまりにも子実体一つ一つが大きいので別種だと思いましたよ。


■ 2016年09月22日 撮影

あまりにも大きいのでカオリツムタケとかキナメツムタケとか思いましたが、すぐに本種だと分かりました。 大きいとは言えオリーブ色のひだはまさにニガクリのソレ。 確認のため齧ってみたら口に広がる爽やかな苦味。 ただニガクリにしては弱すぎる気がするので、本当に別種かも知れません。

皆さんは味の違いで別種を疑えるレベルになるまで味見はしないで下さい。

■ 2018年04月15日 撮影

子嚢菌類を探して歩いていたスギ林の中を通る林道。その道すがら発見。 切り株に生えていたので久々の味見です。うん、すっごく苦くて良いですね

■ 2019年10月20日 撮影

ミズナラ林で綺麗な幼菌を発見しました。しかしこの時期にまだ幼菌? この日はツキヨタケの幼菌と老菌が同時に見れたりと、この年の天候不順を感じる1日でした。 しかしミズナラ材から出ているとニガクリタケも高級感がありますね♪


■ 2019年10月20日 撮影

まぁ何に生えていようと苦いんですけどね。ええ、苦いですよ。

■ 2020年10月11日 撮影

少し肌寒いと感じ始めた10月半ば。ちょうどキノコ狩り最盛期に顔を出すコイツ。 多くの人が訪れる公演の脇、暗い森の中に異様な黄色さを発見。 近付いてみるとニガクリの超巨大な株立ちでした。


■ 2020年10月11日 撮影

驚いたのはその大きさ。1本1本のキノコがデカいんですよ。 苦味の無いやや大型の類似種が居るんですが、噛んでみたら普通にクソ苦かったです。 しかも久々に悶絶するレベルの苦さでした。間違い無く本家ニガクリですね。


■ 2020年10月11日 撮影

裏返してみるとやっぱひだがオリーブ色なのでニガクリだなぁと実感できます。 一応胞子の色が同属のクリタケと同じなので少し暗紫褐色を帯びています。 ですがクリタケが全体的に紫色になるのに対し、本種は黄緑色っぽさが残ります。

■ 2020年10月11日 撮影

やっぱ大型のに出会うと嬉しいですね。 個人的には本種はクリタケよりも一回りも二周りも小さいと言う印象です。 今回はクリタケと同サイズだったので観察し甲斐がありました。

■ 2021年11月27日 撮影

※オンマウスで変化します

ちょうどこの頃、Twitterでまことしやかに囁かれているウワサがありました。 それは「ニガクリタケは紫外線で蛍光する」と言う内容のもの。 蛍光する毒素と言うとフウセンタケ属が持つオレラニンとかが有名。 でもニガクリタケもそうだっけ?と思い試しに持ち帰ってみると・・・光ったし!


■ 2021年11月27日 撮影

※オンマウスで変化します

しかもこの日は運が良いことにクリタケも同時に採取できたんですよね。 と言うことでクリタケでも同様に試してみたんですけど、ほぼ光らないんです。 となるとどうもニガクリタケの持つ成分に反応しているのは確実ですね。 これは確かに2種の判別に役立つかも知れません。過信は禁物ですが・・・。 ちなみに2種とも味も確かめました。ニガクリはやっぱりクッソ苦いですね。 クリタケも少し苦味がありますが、UVで反応するほどの成分は無いのかな?
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