■Hypocrea peltata (オオボタンタケ)

■ 2019年07月15日 撮影

gajin氏とのキノコ散策オフにて久し振りの発見となりました。 林道脇の広葉樹の朽木に奇妙な物体を見付けました。 普通種のようで意外と狙って出会うことのできないワリと珍しいヒポクレア。 和名は「大釦茸」で良いのかな?多分「牡丹」じゃなくて「ボタン」ですよね? 種小名の「peltata」は「盾」を意味しており、子実体の形状に由来します。

非常にややっこしいことに、同和名の別種が存在しています。 そちらは「H. grandis」で、断面に扇状の模様ができ、赤みを帯びるのが特徴です。


■ 2019年07月15日 撮影

子実体は肉色で本当にボタンのような形状をしています。 この状態だと良く分からないですが、表面に子嚢殻がビッシリ形成されています。 新鮮な状態ではこの色ですが、老成すると真っ黒のこぶのようになります。


■ 2019年07月15日 撮影

試しに切断してみると、内部は無色半透明で水分を多く含んでいる質感です。 同じ和名の「H. grandis」はもっと厚みがあり、成長点から放射状に模様ができます。 断面も赤くなるため、明確に別種だと分かります。 上面の色帯びた層に子嚢殻が埋生しています。


■ 2019年07月15日 撮影

本種が種小名で「盾」と表現される理由はコレです。 基本的にHypocrea属は裏面が存在せず、全体が材に貼り付くように子実体を形成します。 しかし本種は材に接触しているのは基部だけで、裏面が浮いているのです。 これが盾のようなのでこの学名が与えられています。 ちなみに裏面には基部から放射状に広がる不規則なしわが存在します。


■ 2019年07月15日 撮影

子実体表面を観察してみると、表面にはビッシリと子嚢殻が形成されています。 子嚢殻は埋生で先端の頂孔部がやや突出し、子実体の色よりもやや濃色です。 この無数の頂孔から胞子が噴出します。


■ 2019年07月15日 撮影

肉は前述の通り無色半透明で弾力があります。ぷにぷに。 断面に子嚢殻が並んでいるのがこの倍率でも分かります。


■ 2019年07月15日 撮影

胞子観察用に持ち帰ったケースの中身を帰宅後に見てビックリ! 内部の結露が何故か白濁していますが、これ実は子嚢胞子です。 gajin氏も現地で仰っていましたが、本種の子嚢胞子の噴出量は凄まじいです。


■ 2019年07月15日 撮影

子嚢胞子を観察していて違和感。何か胞子のサイズにバラツキがあります。 調べてみて分かったのですが、本種の子嚢胞子には大小2種類のサイズが存在するのです。 元々子嚢菌類の胞子は大きさに一定の範囲が存在することが多いですが、明確に分かれるってのは少数派かも。


■ 2019年07月15日 撮影

子嚢胞子を油浸対物レンズで観察してみました。 大型の胞子は楕円形で5μm×4μmくらいのものが多いですが、中にはもっと長細いものも存在します。 小型の胞子は球形で直径3μmほどのものが多く、形状は安定しているようです。 共通の特徴としては表面に微差な突起がポツポツと出ていることと、複数の油球を内包することでしょうか。

子嚢殻を持つタイプの子嚢菌類であり、味も香りも食感も全てが食不適です。 見た目は甘食みたいで美味しそうですが、触ると思いの外硬いので驚きます。

■ 2015年06月27日 撮影

林道を走っていて沢筋に倒れ込んだ朽木に発生していました。これが初見。 最初は正体が分からず「ホオズキタケ?」とか思っていたらご指摘を頂いてしまいました。 だってこんな大きいの、Hypocreaだなんて思いませんもの!でも普通にこれくらいにはなるそうです。


■ 2015年06月27日 撮影

非常に大きい子実体で、不規則に波打っていますが直径は4cmくらいあります。 十分に成熟しているようで、表面にやや光沢があります。 広がりすぎた縁部は反対に反ったりシワが寄ったりして、流動体のような形状になります。 個人的には噛み終わったガムを叩き付けたみたいだと感じました。

■ 2017年10月07日 撮影

沢沿いでハナビラニカワタケを撮ってて気付きました。久し振りの発見です。 よくよく考えてみると色似てますね。このモニョッとした形状も。


■ 2017年10月07日 撮影

今回はしっかりと観察しますよ!拡大してみました。やはり不気味な形状です。 朽木の表面に粘着質の物質が貼り付いているようにしか見えないですからね。 当然ですが触ってみると弾力こそあれ、しっかりした肉質をしています。


■ 2017年10月07日 撮影

初発見時は知らなかったので、今回はぬかりなく表面の拡大写真も撮影してます。 肉眼では観察が難しいですが子実体の表面に無数の子嚢殻が並んでいます。 点々に見えるのが子嚢殻の先端部で本種の子嚢殻は子実体に埋生しています。


■ 2017年10月07日 撮影

断面も確認しました。やはり内部は白っぽくて透明感があります。 これだけ子嚢殻形成する範囲が広ければ、子嚢殻の数は相当でしょうね。 また本種の子実体の縁部が巻き込む様子が断面を見ても良く分かります。 ちなみに発見時にまた間違えて「ホオズキタケだ!」って言ってました・・・。
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