■Hypocrea sinuosa (ヒポクレア シヌオサ)

■ 2020年10月18日 撮影

竹林内を歩いていたら数少ない広葉樹材にどっかで見たようなボタンタケを発見。 そう言えば以前から似たような緑色系の種は何度か見ていました。 和名は存在しませんがブナ科樹木のような広葉樹材に発生します。 最近ではアナモルフの関係からか属名を「Trichoderma」に統一する流れのようですね。 ただその辺は良く分からないので比較的普及している学名を採用しました。 種小名は「波状の」と言う意味ですが、詳細は不明です。

アナモルフは「Trichoderma sinuosum」です。 国内で「H. gelatinosa (オリーブボタンタケ)」と呼ばれている種があるのですが、 この種は種小名の通りゼラチン質で子実体に透明感があり、より黄色〜赤っぽいです。 決め手は顕微鏡観察の結果とは言えこの同定は全く自信無いですが、 少なくとも「H. gelatinosa」ではないと思います。


■ 2020年10月18日 撮影

子実体は大きいものでも2mm程度と極めて小さく、遠目では白い点にしか見えません。 しかし近寄ってみるとほんのり緑色っぽいのが分かり、更に近寄ると子嚢殻が存在するのが分かります。


■ 2020年10月18日 撮影

更に拡大してみました。結実部は白ではなくベースがやや緑色を帯びています。 そこに緑色の子嚢殻の先端が突出しています。 まぁ実際には緑色なのは子嚢殻そのものではないのですが、それは後述。 重要なポイントは白い基質が存在すること、これ注目です。


■ 2020年10月18日 撮影

高倍率マクロレンズMP-E65mm F2.8 1-5×マクロフォト」で黒バック撮影してみました。 子実体は不透明でベースは淡い緑色。そこに見える濃い緑色の点が子嚢殻の先端です。 子嚢殻の先端には頂孔が存在し、そこから胞子を噴出します。 こうして見ると基部に白い土台があり、そこから色素を持つ組織が形成されていることが良く分かります。 ただ緑系のヒポクレアは多い上に乾湿で雰囲気がガラリと変わるので同定は難しいです。


■ 2020年10月18日 撮影

子嚢殻を顕微鏡で観察してみました。埋生で縦長の楕円形です。


■ 2020年10月18日 撮影

ちなみに私はコレを見るまでてっきり子嚢殻が緑色なんだと思っていました。 しかし実際には胞子が緑色であって、子嚢殻そのものはほぼ無色だったんですね。 何か抹茶パウダーが漏れ出したみたいな絵面になってます。


■ 2020年10月18日 撮影

子嚢胞子は緑色でほぼ完全な球形の他に楕円形や弾丸形が入り混じっています。 ここで重要なのが表面に微細ないぼが存在することです。 実は本種の同定にあたりHypocrea属の論文を幾つか見ました。 そこで子実体の外見、白い基質、胞子表面のいぼの3点が揃うのは本種しか見付けられなかったんです。 国内の菌類一覧には載っていないので自信は無いんですけどね・・・。 なのでこの同定は消去法みたいなものなのであんま信用しないで下さいね。

極めて小型の菌ですので、そもそも食不適です。 トリコデルマと言えば同属にあの猛毒菌のカエンタケが居ますので一応注意です。 まぁ仮に猛毒でも中毒するほどの量を集められるかと言うといささか疑問ではありますが。


■ 2020年10月18日 撮影

オマケで黒バック撮影全体像です。 何とも言えない「和」な緑色をしているので個人的に大好きです。 こうなるとアナモルフも見てみたかったですねぇ。
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