■Inocybe atroumbonata (ナカグロトマヤタケ)

■ 2021年04月24日 撮影

定点観察している「赤いトリポ」の近くを歩いていて見慣れないキノコを発見。 最初は属名すら分かりませんでしたが、帰宅後の顕微鏡観察の結果、何となくアセタケ属っぽいなと感じました。 しかし発生時期に違和感があり、不明種としていましたが、gajin氏にご指摘頂き、当たっていたことが判明。 各種林内地上に発生しますが、発生が春と言うちょっと変わった「中黒苫屋茸」です。 初発見時は典型的な姿ではなかったのでリベンジしています。

1965年に故本郷次雄氏により発見されて以降、2010年まで45年間見付からなかった経歴の持ち主。 その後はチラホラ発見報告がありますが、それでも圧倒的に少ないですね。 恐らく発生時期が特殊なため探す人が居ないのが理由と思われます。


■ 2021年04月24日 撮影

傘は「苫屋」と表現されるだけあって最初円錐形で、傘が開き切っても傾斜や傘中央の突出が残ります。 表面は繊維状で白地に褐色の繊維が放射状に走っている状態です。 また和名で「中黒」と表現されているのはナカグロモリノカサと同じ理由で、 褐色繊維が傘中央部に集中しているため傘中央が暗色になるのが理由ですね。


■ 2021年04月24日 撮影

柄は傘と同色で繊維状、柄の上部は白くなります。 またアセタケ属らしく幼菌時はクモの巣膜が存在しますが、すぐに消失します。 印象的だったのが灰白色のひだで、この切り立った感じがアセタケっぽいなと思っていました。

赤字で食毒不明としたのは属が属だけにって感じですね。 小型のアセタケ属菌はムスカリンを含む種が多いので、食えないと思っておいて良いはずです。 また採取時に感じたのが非常に青臭いなと言うこと。 土臭いと言えば良いのか・・・とにかく美味しくなさそうな香りでしたので、手を出す必要は無いです。

■ 2021年04月18日 撮影

初発見は1週間前のこと。目的は同じ冬虫夏草の観察でした。 雨が降った直後だったのですが、その時はこんな感じで全然雰囲気が違ったんです。


■ 2021年04月18日 撮影

雨の後で傘が吸水していたのですが、まるで粘性があるかのような質感になっていました。 このためアセタケ属と言うのがすぐに浮かばなかったんですよね。 この形状で傘に粘性があるキノコ・・・何だ?って感じになってました。


■ 2021年04月18日 撮影

裏返してみても分かりませんでした。この時幼菌を引っこ抜いていれば本属菌を疑えたんですけどね。 若い時はひだが真っ白で、アセタケ系は有色のイメージがあったので余計に惑わされました。 ただ良〜く見てみると傘の周囲に皮膜の痕跡がありましたね。


■ 2021年04月18日 撮影

で、分からないので子実体を1つ持ち帰って顕微鏡観察してみました。 ただこの全景を見た段階で本属菌を疑いましたね。雰囲気がタマアセタケの時に似ていたので。


■ 2021年04月18日 撮影

意外と綺麗に切片が作れたので担子器もシスチジアも良く見えます。


■ 2021年04月18日 撮影

この時もまだちょっと本属菌を疑ってましたね。 別にそんなこと無いんですが、アセタケの胞子は表面が凸凹してるって思い込んでいたので。 実際には平滑な胞子も白いひだも普通にあるんですよね。思い込みって怖い。


■ 2021年04月18日 撮影

シスチジアを拡大してみました。縁も側も形状は同じっぽいですね。 形状はフラスコ形で形状以外に表面構造等の特徴はありません。 アセタケ属は亜属がメチャクチャ多いのですが、シスチジアの特徴が結構判断基準に入るんですよね。 ただ柄シスチジアを見ないとダメらしく、今回は見忘れました。


■ 2021年04月18日 撮影

担子器もしっかりと観察。4胞子性が基本ですが、3胞子性の担子器も多い印象。


■ 2021年04月18日 撮影

担子胞子は楕円形〜紡錘形。ひだが白っぽいので分かりませんでしたが、胞子紋は暗褐色でした。 観察を終えて乾燥用にキッチンペーパーの上に傘を伏せて置いておいたらむしろ黒に近かったです。 確かに顕微鏡で見ても結構色はありますね。

■ 2021年04月18日 撮影

これを見てもそりゃピンと来ませんって。ましてや知名度の低い本種ならなおのこと。 「中黒」の由来である傘表面の褐色表皮は水を吸うとこんな感じのねっとりした質感になります。 ただこの傘中央に表皮が残る感じはタマアセタケやキイロアセタケで見たことある気はしました。

■ 2021年04月24日 撮影

この日はどろんこ氏をお招きしての冬虫夏草オフだったんですが、良い状態の子実体を発見したので沢山撮影できました。 この段階ではもう本種の存在はしっていたので、頭に入れた状態での観察だったのでしっかりリベンジできて良かったです。


■ 2021年04月24日 撮影

確かにこうして見るとナカグロモリノカサの配色と似ている気がしますね。 でも良く考えてみると傘の中央の色に特徴があって、それが和名に反映されている種ってあまり無いような。 中央を「中」と表現するのも、一般的には無い考え方な気がします。
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