■Lactarius sp. (アカシミヒメチチタケ)


■ 2019年11月04日 撮影

とある自然公園。雑木林に囲まれたその芝生の端に毎年必ず発生します。 様々な図鑑を見たのですが、特徴の多いチチタケの仲間にしては同定できませんでした。 しかしある日、ネット上でまさにこれだ!と言う子実体が仮称と共にアップされているのを発見。 ようやく和名が分かりました。漢字だと「赤染姫乳茸」になるのかな? 芝生に出ていますが間違い無く周囲のシイやカシと共生関係にありますね。

しつこいですが、この和名はあくまでも「仮称」です。種小名も未決定ですし。 全国的に発見されており、それほど珍しい種でもないみたいですね。 一応「北陸のきのこ図鑑」に掲載されています。


■ 2019年11月04日 撮影

傘は幼菌時に暗乳白色で、成熟するとこんな感じで全体的に淡褐色になります。 注目すべきは傘の所々に赤色のシミができることです。 このシミは比較的早い段階で発生し、ほとんどの個体に見ることができます。 なのでこの種の特徴として本種の仮称に採用されているのでしょう。 り傘にはやや光沢がありますが、ぬめりはそれほどではないです。


■ 2019年11月04日 撮影

シミが分かりやすい傘を撮影してみました。所々にうっ血したような赤いシミがあります。 これだけ傘が色付いても良く分かるので、幼菌だともっと鮮明に見えます。


■ 2019年11月04日 撮影

個人的には本種の特徴は傘のシミだけではなくひだと柄のカラーリングだと思っています。 肌色のひだに濃い目の肌色の柄。この組み合わせは意外とありそうで無いんですよね。


■ 2019年11月04日 撮影

カッターナイフでひだを傷付けると白色の乳液が滴り落ちて来ました。 本種はかなり乳液の量が多いです。写真では少し透けていましが、基本的に透明感はありません。 臭気も別に特殊な感じではなく、普通のキノコの香りです。

不明種ですので当然ながら食毒不明でしょう。ただ赤字にはしたくないかな? これは自分の経験から感じる独断です。何となく毒ではない気がするだけです。 あくまで管理人osoの独断と偏見ですので信用なさらぬよう。 ちなにに口に含んでも味は温和で甘みのような・・・後味に違和感を感じます。

■ 2011年10月22日 撮影

相変わらず同じ場所で目にします。まぁ他の場所でも稀に目にするんですけどね。 最近色んな図鑑を調べていたら、ヒメチチモドキも外見的には似てそうですね。 ただカバノキ属の樹下に発生するらしいし、そもそも赤いシミがね・・・。

■ 2014年06月28日 撮影

水分を多く含んで色が黄色っぽくなった子実体。フヤケすぎたのかな? それでも裏返してみるとひだと柄のカラーリングが完全に本種でした。

■ 2019年10月27日 撮影

今回の撮影までほぼ毎年出会っていたのに撮影せず、サイトでも不明種扱いでした。 今回はしっかりと顕微鏡観察も行い、この仮称を和名として掲載して良いと判断しました。 多分相当普通種のはずなのですが、ここまで命名を免れて来たのは何か理由があるのかな?


■ 2019年10月27日 撮影

かなり老成した子実体で、傘全体が赤みを帯びています。 別に乳液が変色するワケでもないですし、部分的に赤くなる仕組みが良く分かりませんね。 光沢があるので強い粘性があるかと思いきや、触ってみるとペトペトしていて粘性無し〜弱粘性です。


■ 2019年10月27日 撮影

裏返してみるとこんな感じ。やっぱ乳液量は多いですね。 若い子実体はこんな感じで落ち着いた色合いの象牙色なんですよね。 今回は胞子観察とかをしてみたくて左の子実体を持ち帰りました。


■ 2019年10月29日 撮影

忙しくて中々観察ができませんでした。日にちが経ってるのはそれでですね。 今回は胞子のとある試薬に対する反応が見たかったんですが、ひだの表面もしっかり観察しておかねば。 珍しく綺麗に切片が作成できましたし。


■ 2019年10月29日 撮影

ひだの表面には担子器がビッシリ。シスチジアはハッキリ分かりません。 ただ文献を見るに先端が丸くなく尖っているのが本種のシスチジアなのかな? そう言えば今まで見てきた他のキノコのひだの断面と担子器より下の構造が違うような。 明らかに繊維状じゃないですし、これがベニタケ科の子実体の脆さの理由ってヤツかな?


■ 2019年10月29日 撮影

担子器をフロキシンで染色してみました。 これなら透明感があって見づらい形状も良く分かります。 見た感じ2胞子性のようですね。


■ 2019年10月29日 撮影

担子胞子もキッチリ観察できました。 球形〜類球形で不規則なと小さなに覆われています。 脈は所々で繋がって網目のようになり、またそれが途切れて疣のようになっていると言った感じ。 典型的なベニタケ科の胞子だなって印象ですね。


■ 2019年10月29日 撮影

そもそもメルツァー試薬は「ベニタケ科のためにあるような試薬」と言っても過言では・・・あるか。 でも染色結果は大満足!非常にくっきりと胞子表面の隆起が青く染まるアミロイド反応を示しました。 以前リュウコクヒナベニタケでも観察しましたが、その時よりも明確に浮かび上がっています。


■ 2019年10月29日 撮影

胞子そのものに試薬の色が沈着してしまったので隆起だけを染めたくてリベンジ。無事成功しました。 この染まり方によって胞子の表面構造が容易に把握でき、この違いで別種であると分かることもあります。 点と線で構成されるこの染色パターンは文献で見る本種の胞子の図そのものですね。

■ 2019年10月27日 撮影

良いシミが出来た子実体を発見!左下に虫刺されのような赤いシミがありますね。 幼菌の頃はほとんど見られませんが、こんな感じで全体に赤みが増してくると出て来るように思います。

■ 2019年10月27日 撮影

あー!これ!これです!これが私が見慣れた本種の立ち姿かもですね。 ちなみにこの写真はTOPにしようか迷いましたね。 ただ状態が良いせいで赤いシミが確認できず、採用には至りませんでした。


■ 2019年10月27日 撮影

上から覗いてみました。こんな感じで赤いシミが無い子実体も普通にあります。 砂粒や落葉が貼り付いているのを見るに、多少は粘性があるようですね。 しかしコレと言って尖った特徴がある種ではありませんが、そのワリに印象に残る種です。
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