■Lanzia huangshanica (オチバノアカビョウタケ)

■ 2020年09月13日 撮影

図鑑にチョロっと載っているのは以前から知っていました。 しかし見付けたのは毎年何度も何度も訪れ、地表もしっかり見ていたはずのフィールド。 意識しないと見えてこない、そんなキノコの典型例だと思います。 夏から秋にかけてシイの葉柄に発生する「落葉赤鋲茸」です。 このフィールドではスダジイの葉柄に発生するようですね。 ネット上の写真でもこの樹種の葉柄からの発生と思しき写真が多く見られます。

掲載されてる図鑑が少なく、サイズも極めて小型なので知名度は低いと思われます。 似たキノコとなると落枝に発生するニセキンカクアカビョウタケが有名です。 ですが本種は発生状況、サイズ、色などなど相違点は多いです。


■ 2020年09月13日 撮影

普通に立って歩いているとまず気付けないと思います。 何せ子嚢盤の直径は大きいもので1mm。 色が派手なので意識さえしていれば視界に入って来ると思います。 ただフィールド持ち出しの機材えはこのサイズが限界ですね。


■ 2020年09月13日 撮影

Canon製の「MP-E65mm F2.8 1-5×マクロフォト」の本領発揮! 帰宅後に黒バック撮影してみました。 フィールド用のマクロレンズでは倍率に限界がありますからね。


■ 2020年09月13日 撮影

同一の子嚢盤を別角度から撮影したものを並べてみました。 子嚢盤はいわゆるビョウタケ形ってヤツですね。短い柄を持つ皿形です。 皿形ではありますが成長するとこんな感じでちょっとぷっくりします。 最大の特徴は何と言ってもこの色。とても彩度の高い赤橙色です。 ただし柄はやや黄色っぽく、柄の基部は黒色になります。


■ 2020年09月15日 撮影

日付が変わって翌日・・・じゃなくて翌々日です。途中で日付が変わっちゃいました。 順番が前後しますが、前日は綺麗に切片が切れず、胞子観察で時間切れ。 何たって直径が1mmしか無いんですからね。実体顕微鏡も無いので切片作成は大変でした。 何だかんだで綺麗に切れたんじゃないでしょうか?


■ 2020年09月15日 撮影

子実層面です。子嚢と側糸が綺麗に並んでいます。側糸の先端に特徴があるようですね。 この光景を14日に見れるハズだったのですがちょっと厄介だったんです。


■ 2020年09月15日 撮影

ちなみに子嚢盤の縁部はこんな感じです。境界がハッキリ分かれてます。


■ 2020年09月14日 撮影

日付に注目。前日に顕微鏡観察が失敗した理由、それは色素の流出でした。 最初は普通に切ったばかりの切片を水封したのですが、こんな感じになっちゃいました。 フワフワと漂い、とてもじゃないけど顕微鏡観察どころじゃなかったのです。


■ 2020年09月14日 撮影

色素は側糸先端部分に含まれているようですが、それは他の子嚢菌類でも同じこと。 ただここまでの溶出を見たのは初めてです。どうも本種は色素が漏れ出しやすいようですね。


■ 2020年09月14日 撮影

色素の流出は酷かったですが、子嚢と側糸はしっかりと観察しました。 子嚢も側糸も100μm前後ですが側糸のほうが若干長いでしょうか。 子嚢胞子は子嚢内部に8個。子嚢に対して胞子が大きいためかみっちり詰まって見えます。 側糸は分岐なし、隔壁あり。先端部が緩くカールします。


■ 2020年09月14日 撮影

子嚢胞子はせっかくなので色素とツーショットにしてみました。 超長楕円形と表現すれば良いでしょうか、弓反りになるものも多いです。 内部には一直線に油球が並んでいるのはニセキンカクアカビョウタケに似ていますね。 注目すべきは両端に球状の皮膜があることです、見えにくいですけど。


■ 2020年09月15日 撮影

最後は子嚢菌類の観察には必要不可欠なメルツァー試薬による呈色反応です。 弱くて分かりづらかったですが、油浸対物レンズで見るとしっかりと頂孔アミロイドでした。 先端の肥厚部が結構厚いのが良く分かりますね。

毒性に関しては不明ですが、サイズ的にもそもそも食不適でしょう。 と言うか小さく可憐なキノコですので食べようとか思わないであげて下さい。

■ 2020年10月11日 撮影

1ヶ月ほど経ちましたが発生は続いていました。小型ですが長期に渡って発生するようです。 奥に見えるのは似ていると言われているニセキンカクアカビョウタケです。 発生しているのは落枝、色はオレンジ・・・こうして見ると全然違いますね。 奥にあるのに同じ大きさに見えるように、サイズも倍以上あります。

■ 2020年10月11日 撮影

一通り観察して思いましたが、メッチャ好きです。 このサイズで生態にも外見にもハッキリした個性がありますね。 今まで意識してませんでしたが、今後も探したくなる盤菌だと思います。

■ 2021年07月03日 撮影

今まで本種を見たことがあるのはとある1ヶ所のフィールドでしか見たことがありませんでした。 しかし遠く離れたフィールドでも見付けました。以前の場所と同じで沢筋でした。 恐らくその発生状態から葉が多くの水分を含んでいることが必要なのでしょう。
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