■Microglossum rufum (キシャモジタケ)

■ 2019年09月22日 撮影

北海道遠征にてセンボンキツネノサカズキを探している最中にミズナラ林にて発見した見慣れない子嚢菌類。 発見当時はカバイロテングノメシガイだと思ってたんですが、胞子を見たら全然違う! よくよく調べてみたらコイツが居ましたね、秋に各種林内地上に発生する「黄杓文字茸」です。 図鑑の写真と雰囲気が違うので、印象に残っていませんでした。

先述のカバイロテングノメシガイやその変種のキイテングノメシガイに似るとされています。 しかしこの両種は顕微鏡的に全く異なるだけではなく、乾燥すると暗色に変化すと言う点で区別可能です。 図鑑のカバイロテングノメシガイはかなり黄色い若い子実体が掲載されていたりするので注意。


■ 2019年09月22日 撮影

子実体は棍棒形で、真っ黒なテングノメシガイの色だけが濃黄色になったと言う感じ。 実は前日にも小さな子実体を見ていましたが、その際はもっと明るい黄色でした。 子実層面を作る頭部と微粉状の柄からなり、その境界はハッキリしています。 頭部に大きな縦長のくぼみが形成されることが多く、その場合は平らになって「しゃもじ」らしくなります。


■ 2019年09月24日 撮影

帰宅後に顕微鏡を行いました。 ここでチャワンタケ大好きアメジストの詐欺師氏からも指摘がありました。 自分でも確認を行い、本種であることが確認できました。


■ 2019年09月24日 撮影

まずは子実層面、ここでまず注目すべきは側糸の先端部分の形状です。 切断の際に少し断面が崩れてしまいましたが、側糸先端が大きく湾曲しているのが分かります。 これは本種の大きな特徴。カバイロテングノメシガイは緩やかに屈曲する程度です。


■ 2019年09月24日 撮影

これは綺麗に切り出せたなぁ。子嚢は160μmくらいかな? 子嚢胞子は8個が折り重なるように先端に詰まっています。


■ 2019年09月24日 撮影

子嚢胞子が大量に放出されました。あまり見たことの無いタイプの胞子のような。 まぁもっと前の時点で本種と確定してるんですけどね。


■ 2019年09月24日 撮影

子嚢胞子は緩やかに弓なりに反ったソーセージ形で、長さは23〜38μmとバラバラ。 もうこの段階で子嚢胞子が100μm超えのカバイロテングノメシガイは候補から消えたワケです。 胞子内部には一直線に複数の油球が並んでおり、まるで藻類のようで美しいです。 同属菌のマツバシャモジタケよりもずっと長く、観察していて楽しい胞子でした。


■ 2019年09月24日 撮影

メルツァー試薬での染色は予想通りの結果に。 染色すると胞子内部の油球が見えなくなって、ソーセージ感が増してますね。


■ 2019年09月24日 撮影

同じシャモジタケ属菌で見ているので予想は付いてましたが、見事な頂孔アミロイドです。 本種の子嚢は先端があまり肥厚しないので、浅く青くなっているのが観察できました。 あとオマケですが、染色すると90度に折れ曲がった側糸が観察しやすいですね。


■ 2019年09月22日 撮影

話は戻って発見当日、古い子実体が褐変している写真が残っていました。 いや、この濃さは褐変と言うよりも黒変に近いレベル。でも文献では特に触れられていませんでした。 本種の特徴7日、単に環境的なものなのか、それとも微生物によるものなのか。 謎は残りますが、顕微鏡観察の結果的には文句無しでしょう。細かいことは気にしない!

大きくても2cm程度の小型菌であり、普通に食不適で良いでしょう。 色味は綺麗かも知れませんが、あえて使うようなものではないと思います。 仮に料理に入ってても「モヤシの先端か?」くらいにしか見られないでしょうし。
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