★Mitrula paludosa (カンムリタケ)
■ 2014年05月03日 撮影 水生キノコ探しに初めて挑んだ2014年に「水生キノコの華」とも言える姿を拝めました。 和名は「冠茸」。春に水没した針葉樹の腐植から発生する可憐なキノコです。 チョロチョロと水が湧き出る流れに漬かり腐植と化したヒノキの落葉から水面に顔を出していました。 珍しい訳ではなく、川でのレジャー中の方が見付けることもあるようです。 一度スカ振りしましたが針葉樹系の種だと思い出して探したらすぐ見付かりました。 ちなみに種小名の「paludosa」は「沼地性の」の意味。 生態にピッタリの素晴らしい命名だと思います。 擬人化もしていますがサイトには掲載されておらず、書籍版のみの擬人化娘です。 ■ 2014年05月03日 撮影 頭部は鮮黄色で形状は球形や楕円形、中には円錐形の物など多種多様。 柄は無色で透明感が有り、上部はやや黄色を帯びる個体も散見されます。 高さは最大でも5cm程度、頭部も大きくて1cmチョイと非常に小型です。 ■ 2014年05月03日 撮影 これが見る限り最大の個体かな?頭部が高さ1.2cm有ります。これでも大型。 足元が水場なので三脚も使えず、ぷるぷるしながらの撮影となりました。 食毒不明とされていますが、極めて小型で肉質も脆く、食用価値は皆無。 数は採れるのですが水没していて非常に泥臭く食欲は湧かないでしょう。 何より見た目が美しいキノコなので、価値はむしろ鑑賞方面に見出せます。 ■ 2014年05月03日 撮影 遠くからも見えました。こんなに大量に発生する種だとは思っていませんでした。 もう発見した時はあまりの感動で絶叫してしまいシカを脅かしちゃったかな? 他の水生キノコにも言えますが、発生環境には一定の条件があるみたいです。 まず落葉落枝が流される強さの水流には発生しないこと。小さな流れもOUT。 かと言って完全に淀んでいる場所も胞子を飛ばせないのか発生はしません。 ■ 2014年05月03日 撮影 重要なのは堆積物が多く常時微かな流れがある場所だと言うことでしょうか。 その堆積物から柄を伸ばし水面に頭部を出して胞子を拡散する種ですからね。 奥に見える緑色の絨毯はコケではなくミズゴケです。手付かずの自然です。 ■ 2014年05月03日 撮影 それにしても完全に水中から出ている姿は今までの経験にはありませんでした。 結構色々なキノコを見て来たつもりでしたが、まだまだ知らないことだらけですね。 ■ 2014年05月03日 撮影 谷の下の方から風が吹き上がり、背の高い個体は微かに揺れていました。 自然と堆積物が集まるので食べ物には困らず、上昇気流で胞子も飛ばせる。 もちろん成長に大切な水分なら心配は要らない・・・良い場所取りですね。 ■ 2014年05月24日 撮影 5月の初めに見付けたカンムリタケは1ヶ月近く経っても傷まないことが判明。 自分もビックリしたんですが、この前見た時と同じ子実体があるんですよ。 頭部の色艶に若干の変化はありますが、ここまで長持ちする種だったとは。 ■ 2015年03月21日 撮影 実況撮影終了間際、少し物足りないので帰り道だからと昨年の場所を訪れました。 発見時より1ヶ月以上前だったので流石にまだ無いと思ってたら・・・あった! かなり早い段階で発生が始まっているんですね。これはまたGW頃が楽しみです。 ■ 2015年04月04日 撮影 2週間ほど経ったので再度見に行ってみました。そしたら大爆発していました。 成長がかなり早いのでしょうか?前回は数えられる程度しか無かったのに! ■ 2015年04月04日 撮影 拡大してみました。もう頭部が大きい子実体もかなりの数見付けられました。 黄色い頭は触ってみると思ったより硬く、指で摘むと意外な感触に驚きます。 しかし何度見ても美しい。キノコ自身もですが周囲の環境が魅力的ですね。 ■ 2015年04月26日 撮影 かなり時間が経ちました。あの幼菌たちはこんなにも立派になっていました。 長持ちするワリには成長が早いですね。太陽の角度の加減でこんな写真に! ■ 2015年04月26日 撮影 拡大してみました。透明感のある柄と鮮やかな頭部のコントラストが美しい! 最近海外の図鑑を見たのですが、どうも形状が違う気が・・・別種かも? ■ 2016年04月23日 撮影 今年もやって来ましたいつもの湿地。カンムリタケはもうピーク過ぎでした。 暖かい日が続いていたので出遅れたようです。もっと群生していたのかな? ■ 2016年04月23日 撮影 やっぱり美しいです。この手前には湿地仲間のミズゴケの群生があります。 ただ生態的に完全に環境に依存している種なので、環境悪化が心配ですね。 幸いこの近辺にもう1ヶ所発生が確認されているので一安心でしょうか? ■ 2017年05月06日 撮影 まだ肌寒い高地の沢をゼェゼェ言いながら登って行くと目指す光景が眼前に。 一面に鮮やかな黄金色の花畑!これを見るためなら苦労など苦労に入らぬ! ■ 2017年05月06日 撮影 あぁ・・・良い・・・。他に感想が出てこない・・・大好き・・・。 ■ 2017年05月06日 撮影 ちょっと頭でっかちの子実体を発見。となりのおチビも頭部が丸っこいです。 カンムリタケの頭部の形状は本当に様々で、何度見ても飽きが来ませんね。 ■ 2017年05月06日 撮影 まだ若い子実体達。透明感のある柄がたまりません。ガラス細工のよう。 実際かなり肉質が脆く、少し力を入れただけで簡単に潰れてしまう儚さです。 それがまた本種の魅力なのでしょう。毎年ココに通うのが楽しみですね。 ■ 2017年05月06日 撮影 水面に奥の森が写っていますね。これ実は結構重要な特徴だと思っています。 ピンタケのような落枝に生える水生キノコは流れの強い沢で良く見付かります。 しかし針葉樹の葉などの堆積物に出る本種は流れのほとんど無い沢に出ます。 そう、流れが強いと堆積物は流されてしまうのです。流れの弱い沢を探そう! ■ 2018年04月15日 撮影 ちょっと早いかな?と思い立ち寄ってみましたが、もう出ていました。早い! ■ 2018年04月15日 撮影 ただ早く来て良かったこともありました。良い感じの幼菌が多かったんです。 一番小さい子実体は頭部にも透明感が有ります。本当に儚く美しいキノコ! 当然ですが5月に入った段階で最盛期を狙って訪れてみたいと思います。 ■ 2018年04月28日 撮影 4月末のgajin氏との子嚢菌類観察会。何とかそれなりの数は出てくれました。 しかし例年に比べると減っていますね。来年あたりはまた復活して欲しい。 ■ 2018年04月28日 撮影 このフィールドでは水没して腐食したヒノキの落葉が発生源のカンムリタケ。 ですがスギやマツなどのその他の針葉樹からも発生した記録があるそうです。 そうなると樹種よりも適度な流れを持つ湿地と言うのが重要な条件なのかな? ■ 2018年05月05日 撮影 アメジストの詐欺師氏をお招きした最大の目的でした。 しかし今年は例年に比べてやや発生量が少な目。それでも満足して頂けたようです。 撮影するでもなく林床に伏せて同じ目線でただただ愛でる彼を私は温かい目で見守っていました。 ■ 2018年05月05日 撮影 無論ただ見守っていただけではありません。しっかりとサンプル採取もしましたよ。 子実層はこんな感じで子嚢先端がやや尖っている以外は普通の子嚢菌類って感じですね。 ■ 2018年05月05日 撮影 実は以前、古い顕微鏡で観察済みではあるのですが、今回は新顕微鏡でリベンジしたかったんですよね。 結果は大勝利で良いでしょう。子嚢胞子は長楕円形で、一般的な子嚢菌類の胞子と比べると長細い方だと思います。 やはり胞子が長いのは着生植物の種子と同じで風による飛散を目的としての進化でしょうか? 同じ水生キノコのピンタケとは明らかに異なる目的を持った形状でしょう。 ■ 2018年05月05日 撮影 メツルァー試薬で染色すると分かりやすい頂孔アミロイドでした。 子嚢先端の尖り具合は同じ水生キノコのピンタケに良く似ている気がします。 子嚢菌類は子実層にかなり特徴があるので顕微鏡観察が楽しいですね。 ■ 2019年04月27日 撮影 春のキノコ狩り実況の終盤に訪れたいつもの場所、ちょっと早いかと思いましたが大丈夫でした。 ただ最初に見付けた時のような大群生にはあれから出会えていないのがちょっと心配ですね。 ともあれ「安定」と言う点では安心できそうです。 ■ 2019年04月27日 撮影 試しに自ら引き上げてみると面白いことが分かりました。 本種が発生している針葉樹の腐植ですが、想像していた以上に少量だったんですね。 もっと広い範囲に菌糸を広げているのかと思ったら腐植が落ち葉の器に隔絶されていました。 てことはかなり栄養を吸収する能力に長けているのかな? ■ 2019年04月27日 撮影 しかしいつ見ても水との相性グンバツの外見ですよねぇ。 ■ 2019年04月27日 撮影 派手な色合いの頭部も美しいのですが、個人的にはこの柄の透明感が何ともはやタマラナイのです。 ガラス細工のようで、触れただけで壊れてしまいそうで、その儚さがビンビン来るのです。 これからも変わらずここに居て欲しいと願うばかり。 ■ 2019年04月18日 撮影 少し早いですが地元のフィールドを見に行ってみました。 以前よりも発生量は減りましたが、細々と生きていました。 まだ幼菌なので黄色い部分が小さいですが、柄の透明感は流石。 ■ 2019年05月03日 撮影 半月ほどたって再度訪れてみると、見事なまでの大発生! ここまで出ていたのは本種を初めて発見した時以来でしょうか。 激しい雨が降っていなかったため子実体の傷みが少なく、素晴らしい被写体が多かったです。 ■ 2019年05月03日 撮影 こうして見るとヒノキの腐植から出ているのが良く分かります。 本種は針葉樹材を好むので、広葉樹材を好む他の水生キノコとは発生環境が違います。 なので両者が同時に見れたならば良い感じに環境が入り混じっていた証です。 ■ 2019年05月03日 撮影 数があったので黒バック撮影用に少量採取しました。 しかしいざ黒バックにしてみたら腐植が見えない! 子実体が明るい色なのに腐植が黒いので完全にコントラストが狂ってしまいました。 ちなみに腐植との繋がっている部分は非常に脆く、簡単に外れてしまいます。 ■ 2019年05月03日 撮影 前回顕微鏡観察時は新顕微鏡ではありましたが観察技術が身に付いていませんでした。 なので今になって子嚢胞子を油浸対物レンズでリベンジ! 結果はこの通り、非常に鮮明に見ることができました。 そしてここで新しい発見があったのです。中央付近の胞子を見ると何と中央部に隔壁があるのです。 見間違いかと思いましたが、調べてみると超低確率で隔壁を持つ胞子が存在するそうです。 これは油浸対物レンズを解禁していないと見られなかった光景でしょうね。 ■ 2019年05月03日 撮影 前回顕微鏡観察した時はメルツァー試薬によるアミロイド反応があまり綺麗に見れていませんでした。 なのでコチラもリベンジ・・・と思ってたら通常の子実層面を撮り忘れ・・・。 ■ 2019年05月03日 撮影 油浸対物レンズなら頂孔アミロイドも余裕で観察できるってモンです。 本種は子嚢先端が細く尖るため、頂孔が青く染まる範囲が小さく、低倍率だと点にしか見えません。 しかし高倍率の油浸対物ならこんな感じで見事に青く染まっているのが確認できます。 ■ 2019年05月03日 撮影 やはり本種は群生してこそ美しさが際立つと言うモノ。 ヒノキの腐植は土壌の水分が多い場所だと暗色に朽ちるので、 そんな中に林立する鮮やかな色合いのカンムリタケは当然映えます。 薄暗い森の中で黒い湿地から立ち上る姿こそ至高ですね。 ・・・そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。 ■ 2019年05月03日 撮影 しかし木漏れ日差す明るい沢筋の群生もこりゃまた美しいではありませんか。 周囲は赤褐色の広葉樹の落葉に鮮緑色のミズゴケの群落。 鮮やかな色合いに囲まれた本種もオツなものです。 結論、カンムリタケはどこに生えていても美しい。これね。 ■ 2021年04月27日 撮影 正直TOP写真にしようかマジで迷った光景です。奥から差し込む日差しで光り輝いていました。 本種は毎年のように見に行っていますが、いつ見ても飽きない、そんなキノコです。 ■ 2021年04月27日 撮影 嗚呼・・・この透明感・・・素晴らしいです。本当に水と共に在る、そんな気がします。 子実層の黄色さが目立ちますが透明感のある柄もまた魅力的ですね。 ここでちょっと思い付いたので動画を録ってみることにしました。 ■ 2021年04月27日 撮影 ウグイスの美しい囀りをお聞き下さい・・・じゃありません。 動画の必要あるか?と思えるくらいに静止画のような動画ですね。 アハ体験じゃないですけど、右下の水面のゴミが若干動いているので、動画だと言うことは分かります。 なぜこんな動画を録ったかと言うと、本種が水流のほとんど無い湿地に生えると言うことを伝えたかったのです。 他の水生キノコはピンタケにせよミズベノニセズキンタケにせよ流水音が流れるような細い沢に発生します。 しかしカンムリタケは種小名の通り、溜り水ではないけど流量はほぼ0に近い、そんな環境を好みます。 ■ 2021年04月27日 撮影 ピンタケのページには載せていましたが、こっちには無かったですね。 珍しく両種が共存している1枚です。 これ地味にレアで、広葉樹材生のピンタケと針葉樹腐植生のカンムリタケの同居は意外と稀なんです。 ここは沢を挟んで両側で植生が分かれるため、運良く見ることができます。 ■ 2021年04月27日 撮影 薄暗いヒノキ林を流れる沢の源流部に大群生を作っていました。 ぬかるみで踏み込むことができないので、その縁から撮影。 暗い場所だとこの明るい子実層面がハレーション起こしますね。 |