★Mniaecia jungermanniae (ミドリコケビョウタケ)

■ 2022年01月29日 撮影

コケから生える小型子嚢菌類」についてはそこそこ前から耳には入っていました。 しかし探し方も分からず、地味なものが多いのも知っていたのであまり興味がありませんでした。 ところが海外図鑑とTwitterにて本種の存在を知った時からずっと意識していました。 そして再度Twitterにて写真を見かけ、自分もとその週の休みに探しに行って一発クリア! 各種コケ上に発生する極めて小型の子嚢菌類です。 極めて小型ではありますが、慣れると肉眼でも見付けられます。

漢字で「みどり」をどう書くかが分からず、論文もローマ字表記のみで漢字記載がありませんでしたが、 命名者である細谷剛氏に直接お伺いしたところ「苔鋲茸」であると教えて頂きました。 このようなイミフな質問にも丁寧に回答頂き、ありがとうございました! あと種小名はラテン語ではなく、コケの一属であるツボミゴケ(Jungermannia)属に由来します。 また国内では和名が提唱される2016年以前、2002年に見付かっており、 その際は「ルリイロコケチャワンタケ」の名が提案されていた経緯がある。


■ 2022年01月29日 撮影

ちなみにTOP写真用に撮影したのがこの写真なんですが、全く分からず却下しました。 本種はとにかくとんでもなく小さい種なので・・・。


■ 2022年01月29日 撮影

流石に野外撮影用機材では撮影に限界があるので、発生していた場所をコケごと採取して持ち帰りました。 ビシャビシャと言うほど湿っていないコケに生えているので採取後は乾燥が心配で水を投入。 そのため撮影時は水分多めになっています。少し乾燥気味の場所に出ている気がします。


■ 2022年01月29日 撮影

あまりにも小さいのでCanon製の「MP-E65mm F2.8 1-5×マクロフォト」に頼り切りになりました。 高倍率で撮影してみるとコケの表面に美しい子嚢盤が見えて来ました。 この色が見たくてフィールドに出たようなモノでしたからね。


■ 2022年01月29日 撮影

子嚢盤は厚みのあるクッション形で、直径は大きいものでも0.5mm程度。 大きいものだと1mmになるそうですが、私が見たものの中にはそこまで大きいものは見当たりませんでした。


■ 2022年01月29日 撮影

個人的にベストショットだと思っている写真です。4個の子嚢盤が綺麗に並んでいます。 本種の最大の特徴は何と言ってもその色。とても美しい青緑色なのです。 青緑色と言ってもどちらかと言うと青色が強く、私が「碧色」と表現したのはそれが理由です。 また宿主のコケですが、この場所ではツキヌキゴケ属のチャボホラゴケモドキのようです。 発生するコケの種類は多岐に渡り、種小名となっているツボミゴケ属他複数存在します。

良く見ると右のほうに発生初期の小さな青い粒が見えてますね。


■ 2022年01月29日 撮影

とにかく小さいので撮影は困難を極めました。コケが凸凹しててピントが合わないんですよね。 写真は奇跡的に子実層面にピントが合った1枚。この平らな面に子嚢が並んでいます。 意識しなければ絶対に目に入らないサイズですが、こんなに魅力的だとは・・・。


■ 2022年01月29日 撮影

我が家の環境ではこのサイズが拡大の限界でした。 子実層面がつぶつぶしているように見えるのは子嚢の先端が見えているためです。 本種は子嚢盤のサイズは小さくても子嚢の直径は普通なので、相対的に子嚢が大きく見えます。 またここでもコケに埋もれるように発生初期の青い子実体が見えていますね。


■ 2022年01月29日 撮影

あまりにも子嚢盤が小さすぎてカミソリでも断面作成は難易度が高かったです。 と言うかぶっちゃけ断念しました。ムリですわこんなの。 むしろピンセットで子嚢盤1個を採取するだけでも一苦労でしたよ! なので断面は諦め、カバーガラスで押し潰して子実層面を観察しました。


■ 2022年01月29日 撮影

顕微鏡観察は色が美しくて長時間覗いていても飽きませんでしたね。 子嚢は短か目で子嚢胞子の数は8個、先端に詰まって2列になります。 側糸はバラしたもので観察していますが、基部で分岐し隔壁あり、 先端付近に青緑色の色素が集中しますが、全体的に色素を多少含んでいるようです。


■ 2022年01月29日 撮影

あまりにも綺麗なので油浸対物レンズで子実層面の表面付近を観察してみました。 う〜ん美しい色!青緑色系の子嚢菌類はそこそこありますが、本種の色は清涼感と透明感に溢れていますね。


■ 2022年01月29日 撮影

子嚢胞子は中々自然放出したものに出会えずに撮影に時間がかかりましたが、何とか成功。 一方がやや細い楕円形で無色。多数の油球様内包物が詰まっているのが特徴ですね。 ほんの少し反った形状のものが多い気がします。


■ 2022年01月29日 撮影

最後にメルツァー試薬での呈色反応もチェック。情報通りの非アミロイドで青く染まりません。 内包物は黄色っぽく染まるので全体的に緑色っぽくなりましたね。

あまりにも小さくて食用価値無しです。多分100個体くらい食べても食べた気がしないでしょう。 毒性は不明ですが、相当な猛毒でもない限り口にしても中毒しないんじゃないでしょうか? 本種はとにかくその発生環境と子嚢盤の色が魅力的なので、専ら観賞用でしょうね。


■ 2022年01月30日 撮影

ちなみに翌日、サイズ感を残しておきたくて撮影したのがコレ。 右に見えるのは定規の1mm目盛りです。本種がいかに極小サイズのキノコかが良く分かると思います。 先端を研いだピンセットじゃないと1個体採取することさえできませんよ。

■ 2022年02月05日 撮影

しばらく経って同じ場所を訪れることがあったので再度チェックしてみると・・・居ました。 同じコケが斜面一面に生えているのですが、それでもある程度発生範囲が限定されているようです。 やっぱり少し乾き気味の斜面から飛び出した場所に多いような気が。


■ 2022年02月05日 撮影

拡大してみて気付いたんですが、石の表面に生えてない?キミら。 どうもコケが這った跡に発生しているようです。 良く見るとその場所にコケがあった痕跡のようなものに沿って発生しています。不思議な生態ですね。

■ 2022年04月03日 撮影

日付にご注目。実はあれから撮影しにフィールドには行っていません。 ではなぜ写真があるのかと言うと、家で撮影したからです。 じゃあなぜ家で撮影できたかと言うと、植木鉢で育てていたからです。 観察後に破棄しようと思った採取品を鉢に植えて腰水管理していました。 するとコケが枯れない間はずっと出続けていたんです。 流石に夏の暑さでコケが溶けてしまったので消えましたが、 これ室内とかテラリウムとかなら栽培できるぞ・・・?

■ 2023年02月11日 撮影

しんや氏を地元にお招きして春の菌生冬虫夏草をご案内。 そこからフィールドが近かったのでオマケで立ち寄ることに。 ちょっと早いかと思いましたが発生してくれていて一安心ではあったのですが、 しんや氏は「小さすぎて見えない!」と嘆いておられました。


■ 2023年02月11日 撮影

小さくても慣れると肉眼でも見つけられる・・・直径0.2mm程度と極小であるにも関わらず。 その理由がこの不自然な色合い。この独特な青さは緑色の中にあってかなりの違和感がありますからね。

■ 2023年03月11日 撮影

前回も参加されたしんや氏に、gajin氏を加えた3人で決行した冬虫夏草オフ。 時間もあるのでまた立ち寄った発生地。最初は困惑していたgajin氏も自力発見されていました。 しかしヤバいのがスギ花粉です。周囲に降り積もる白い粉全てスギ花粉ですからね。


■ 2023年03月11日 撮影

白い半透明の球体がスギ花粉で、直径はほぼ性格に30μmとされております。 写真から計測してみると上の子嚢盤の直径はスギ花粉18個分となりました。 そこから推測できる直径は0.5mm、つまり定規の1mm目盛りの半分の直径と言うことです。

■ 2024年03月02日 撮影

Twitterで見かけて「そうだ、ミドコケ行こう」となって見に行きました。 そう言えばこの時期なんですよね。結構まだ肌寒いんですが、本種的には最盛期って感じです。

■ 2024年03月02日 撮影

Twitterに投稿する際は1500×1000pxに縮小しているのでまだ見えるんですが、 サイト掲載時は最大横幅500pxに統一しているので全く見えませんね。 それでも目を凝らして見ると少し青っぽく見えるので何となく居るなってのは分かります。

■ 2024年03月02日 撮影

以前沢山生えていた箇所が崩れてしまっていて一瞬不安がよぎりましたが、 周囲を探すと心配無用な発生量で一安心。 なお前回もそうでしたが、周囲に見える白い粒はスギ花粉です。 この日はスギ黒点枝枯病菌も見に行きましたが、まぁ花粉症には厳しい環境ですわ。


■ 2024年03月02日 撮影

なおサイズはこんな感じ。右手をご覧下さい。こちら私の人差し指です。

■ 2024年03月02日 撮影

実はこの日、Canon製の「MP-E65mm F2.8 1-5×マクロフォト」を超久々に持ち出しました。 普段は屋内撮影専用として運用しているマクロレンズなんですが、屋外でも何だかんだ使えますね。 微動装置があればもう少しキレイな写真が撮れそうなもんなんですけどね。これだけ綺麗に撮れれば文句無し!

■ 2024年03月30日 撮影

別のキノコを探す道中に居るのでこの日もチラ見してみたらトビムシとのツーショットが撮れました。 この感じはムラサキトビムシ科かな?同定は流石にできませんね・・・。
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