■Moelleriella raciborskii (モエレリエラ ラシボルスキィ)

■ 2018年07月29日 撮影

コイツも知ってはいましたが実際に見るのは初めて。 コナジラミに感染する小型の冬虫夏草で、ここではツバキの葉裏に見られたのでツバキコナジラミのようです。 この宿主には地元西日本では別種が感染するのですが、東日本では本種が見られるそうです。 確かに今回の虫草祭は茨城県での開催でしたからね。

本種は「Aschersonia placenta」の有性世代です。 しかし無性世代のアナモルフも同時発生するのが基本なのでページ内で1つにまとめています。 アスケルソニア属のテレオモルフはHypocrella属(広義)であり、その中に本種の属が含まれるようです。


■ 2018年07月29日 撮影

少し拡大してみました。中央の不規則に盛り上がった部分がアナモルフ、その周囲に見える子嚢殻がテレオモルフです。 本種はコナジラミ生の冬虫夏草の中では比較的子嚢殻を作りやすいようですね。


■ 2018年07月29日 撮影

帰宅後少しクリーニングして乾かしてみました。 地元で見れる別の同属菌は子嚢殻を全然作らないので、この雰囲気は新鮮ですね。 アナモルフ部分はオレンジ色で凹んでいる部分はやや濃色になります。


■ 2018年07月29日 撮影

子嚢殻はオレンジ色で球形に近く、表面のほとんどが薄黄色の綿毛状の菌糸に覆われています。 子嚢殻の先端だけがわずかに突出してるのでオレンジ色の点になって見えています。 何と言うかこう無駄を極力省いたデザインですね。


■ 2018年07月30日 撮影

当然ですが有性世代なので子嚢が有ります。長さはこれくらい。


■ 2018年07月30日 撮影

面白いのが子嚢の先端。肥厚部が子嚢の太さのワリに薄いんですよね。 先端が潰れているかのように感じます。


■ 2018年07月30日 撮影

これが子嚢胞子・・・なんですが、想像してたのとあまりに違うのでビックリ。 冬虫夏草の子嚢胞子って基本的に糸状で二次胞子に分裂するしないって感じなんです。 でも本種の子嚢胞子は長楕円形で1〜3個の油球を内包しているんです。 これは冬虫夏草と言うよりは普通の子嚢菌類の子嚢胞子みたいな感じです。


■ 2018年07月30日 撮影

油浸対物レンズで観察してみました。長さにはかなりの差が有り、短いものでは7μmほど、長いものでは15μm。 実に倍以上の違いが有ります。この子嚢胞子の感じからもいわゆる「冬虫夏草」とはちょっと違うようですね。

直径2mm、厚さ1mmの極小菌です。食おうとか思わないようにお願いします。 もしかしたら毒が有るかも知れませんからね。冬虫夏草による中毒も有りますし。

■ 2018年07月30日 撮影

今度はアナモルフのほうをピックアップ。まだ子嚢殻は未熟な状態です。 アナモルフは宿主を包み込むように盛り上がり、凸凹したオレンジ色の膨らみになります。 このどこで分生子が形成されているかと言うと、ぐるり外周に見られる濃色の凹みの内部です。 この内壁にフィアライドがビッシリ並んでおり、ここをカリカリとひっかくと分生子が落ちてきます。


■ 2018年07月30日 撮影

明らかに子嚢胞子とは異なる両端の尖った紡錘形の細胞が観察できました。これが本種の分生子です。 ちなみにひっかく際に子実体を砕いてしまいましたが、宿主は完全に分解されてどこにも有りませんでした・・・こわっ。
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