■Mollisia amenticola (ハンノキクズチャワンタケ)

■ 2018年04月15日 撮影

3年振りに良い写真が撮れたのでTOPの写真を差し替えることができました。 超小型の子嚢菌類「榛木屑茶椀茸」です。ハンノキ属の集合果に発生します。 一見、石英質の砂粒が付いたようにしか見えないので気付きにくいですね。 シロヒナノチャワンタケも同じ環境下に発生しますが、形状が異なります。 発生環境が同じなので運が良いと「Ciboria caucus」と同時に見れたりします。

ハイイロクズチャワンタケ属菌です。 春にハンノキ属の樹下へ行けば比較的普通に出会うことができます。 ただどこでも良いと言うワケではなく、日陰で近くに水源がある高湿度環境を好むようです。


■ 2018年04月15日 撮影

ハンノキ属は松ぼっくりのような毬果を作る樹木。発生場所はそこです。 表面に見える無数の白い盤菌が本種。子嚢盤の直径は1mmも有りません。


■ 2018年04月15日 撮影

黒バック撮影用・・・ってワケでもないのですが持ち帰ってみました。


■ 2018年04月15日 撮影

でも持って帰った価値は有ったようです。マクロ撮影で素晴らしい姿が。 野外ではなかなかここまで鮮明に子実体を捉えるのは難しいですからね。 機材的な意味ではなく、時間的な制限が大きな壁になりますので。


■ 2018年04月15日 撮影

持ち帰った理由は室内用に限定しているマクロレンズでの撮影のためです。 この子嚢盤の直径が1mmも無いと言う時点でその性能の凄さは伝わるかと。 分かりづらいですが上に2つ、裏返した子嚢盤が有ります。大変でした。 子実体は厚みの有る皿形で、柄は無く基部はやや黄土色に色付きます。 あの肉眼で見る美しさは子実体が小型で透明感が有るのが理由です。

仮に食用でも食えるもんなら食ってみろってくらい小さいですからね。 どれだけ小さかろうと食毒不明なので食べないようにご注意下さい。

■ 2015年04月04日 撮影

初発見はコチラ。オオバヤシャブシの樹下に本当に有ってビックリしました。 以前から存在は知っていましたが、まさか出会えるとは思いませんでした。


■ 2015年04月04日 撮影

子実体は椀形で直径は大きくても1mm以下。マクロレンズの限界ですよ。 小型ですが白くて透明感が有るので、遠目でも生えているのが良く分かります。 柄は極めて短いか、そもそも存在しないかなので、実に貼り付いて見えます。 ただあまりにも小さくて乾燥した球果にも見えるので近距離での観察必須。

■ 2015年04月04日 撮影

コチラはすぐ隣の集合果に生えていたより若い子実体。やっぱ砂粒だコレ! この段階ではまだ茶碗形と言うか、ボタン形で丸みが有るみたいですね。 知ってるから分かりますが、もう少し広がらないと子嚢菌類と思えないなぁ。

■ 2015年04月12日 撮影

一週間後に同じ場所を訪れましたが、ほとんどが消え去っていました。 どんだけ発生期間が短いんでしょう。辛うじて見付かったのはこの1つだけ。

■ 2018年05月05日 撮影

gajin氏に頂いた高性能顕微鏡で観察したのですが、如何せん実力が伴ってないですね。 頂孔アミロイドを観察したのですが、色々とダメダメな写真ばかりでした。 なので戒めにこの1枚を残して顕微鏡写真は削除しました。

■ 2020年02月23日 撮影

前年にハンノキの尾状花序から発生する「C. caucus」に再会した場所へ。 もちろんお目当てのカウクスも居ましたが、思いがけず状態の良い本種にも再会。 苔生したコンクリート上に落ちていたので汚れがほとんどありません。


■ 2020年02月23日 撮影

周囲をウロウロするとすぐに本種が発生している毬果が多数見付かりました。 ただ落ちている毬果の数の割には発生している数は少ないように思います。 どうも地面に少し埋もれる、溝に落ち込むなどで水分が安定して得られるのが条件のようです。


■ 2020年02月23日 撮影

やっぱりこれ砂利が隙間に入り込んだだけに見えるんですよね。 そう言えば顕微鏡写真が酷い出来だったなと思い出し、一番発生してる毬果を採取することに。


■ 2020年02月23日 撮影

子実層面を顕微鏡観察してみました。うん、腕は上がったんだなと思います。 以前の写真とか見てられませんね。本種の子嚢盤の断面は非常に面白いです。 まず子嚢と側糸が並ぶ子実層、その下に密な菌糸の層、 さらにその下に多角形の大きな細胞の層があり、さらにさらにその下がまばらな菌糸の層。 4層がこの小さな子嚢盤の中に形成されているのです。


■ 2020年02月23日 撮影

子嚢と側糸を切り出してみました。どちらも65μm前後でほぼ同じ長さのようです。 側糸は糸状で分岐は無し。内部に油球のような内包物が見られます。 やはり子嚢盤自体が小型なので子嚢や側糸も短いですね。


■ 2020年02月23日 撮影

子嚢胞子はちょっと紡錘気味な楕円形で一方がやや長く伸びます。 内包物が全くと言って良いほど見えず、透明感のある綺麗な胞子ですね。


■ 2020年02月23日 撮影

外皮細胞が観察しやすい場所があったのでコチラも撮影。 外皮の細胞は大きな球形で泡のような感じです。


■ 2020年02月23日 撮影

顕微鏡観察技術の工場が垣間見えるメルツァー試薬での呈色反応です。 本種は非常に分かりやすい頂孔アミロイドで子嚢先端がクッキリ青くなります。 以前の写真では像のブレかってくらい写ってませんでしたが、油浸対物レンズでこの通り。


■ 2020年02月23日 撮影

せっかくなので黒バック撮影してみました。 フリーズドライにして保存しようかなとも思いましたが止めました。 意外と厚みがあってケースに入らないので。


■ 2020年02月23日 撮影

小さな子嚢盤は成熟すると反り返って丸いのようになってることが多いです。 しかし比較的大型の子嚢盤はちゃんとチャワンタケらしい形状になっています。 子嚢盤の透明度が高いので、光源にかざすと綺麗ですね。


■ 2020年02月23日 撮影

我が家の最高性能のマクロレンズで撮影してみると、子実層面がザラザラしているように見えます。 コレ実は子嚢が見えているんですよね。小型の子嚢菌類を観察しているとたまに出くわします。 小型種ほど相対的に子嚢盤に対して子嚢が大きくなるため、倍率によっては結構ハッキリ見えます。

■ 2021年03月14日 撮影

ハンノキ系子嚢菌類2種を見るならココ!って感じの場所を確保してあるのは強いですね。 ここでは尾状花序のほうも確実に見えるのがありがたい限り。しかも今年は本種の当たり年! 一時はフィールドを失って唖然としましたが、この場所に出会えて良かったです。

■ 2021年03月14日 撮影

毬果がコケに引っかかっていました。やっぱ背景がこの色だと映えますね。 本種は乾燥すると透明感が無くなり白濁してしまうので、多湿環境に毬果が落ちると綺麗に成長してくれます。 本種が発生する割合ですが、落ちている全ての毬果の数を考慮すると体感で10%程度だと思っています。 意外と全部が全部に出てるワケじゃないんですよね。


■ 2021年03月14日 撮影

やっぱ綺麗ですね。ハンノキ属の毬果に出ると言う尖った特徴もですが、 毬果が暗褐色なのに対し子嚢盤は純白と言うコントラストも、小ささを補って余りある魅力です。 しかしどうしてここまで密集しないといけないのでしょうね?
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