★Morchella conica (トガリアミガサタケ)

■ 2021年03月27日 撮影

2012年の初発見以降、ほぼ毎年見に行っているお馴染みさん。 「春のアミガサ御三家」の一角、「尖網笠茸」です。勝手に呼んでるだけです。 普通のアミガサタケとシャグマアミガサタケには出会えてたので、本種との出会いがラストでした。 サクラやイチョウの樹下に発生すると言われ、菌根菌とも腐生菌とも思える生態を持ちます。 この場所はサクラの樹下。今まで何度探しても出会えなかったので嬉しかったです。 他のアミガサタケより遥かに暗色であり、「ブラックモレル」とも言われます。

ブラックモレルと称されるものの中には複数種存在していると考えられています。 国内でも焚き火跡に出るアミガサタケ属の別菌が黒っぽくなるのを確認しています。 また中国にも分布する栽培可能な系統も頭部が黒くなる特徴を持ちます。 と言うか、海外では「M. elata」と区別していない図鑑もあります。 アミガサタケ属は現在分類が目まぐるしく変化しているので扱いに困りますね。


■ 2021年03月27日 撮影

全体像です。頭部は全体的に暗褐色縦方向の網目が発達しているのが特徴です。 「トガリ」の名に相応しく頭部が円錐形ですが、個体差がかなりあります。 また網目の盛り上がり部分(稜)が黒くなるため、遠目だとかなり黒く見えます。 本属の特徴でもありますが、大きくても内部が空洞なので持つと軽いです。

ヨーロッパでは一般的にかなり親しまれている極めて美味な食菌として有名です。 基本的にはアミガサタケと調理法、合う料理法も同じで、煮込み系が得意です。 赤字なのは微量のジロミトリン等有毒物質を含むため。加熱は十分に行いましょう。 パスタに入れたりリゾットに入れたり。基本的には洋食に合う印象です。シチューも良いぞ!

■ 2012年04月21日 撮影

旧TOP写真です。実は初発見はこの日ではありません。 1週間前の4月15日に見てはいたのですが、ひん曲がった残念な形状だったのです。 成長初期に周囲に障害物があったりすると結構曲がっちゃうみたいですね。 ちなみに左に見えているのは車道。道路脇に普通に出ています。


■ 2012年04月21日 撮影

頭部を拡大してみました。縦方向の網目が発達すると言うのが良く分かります。 ブラックモレルとして混同されているものの中にはこの特徴が無いものが存在しますので。 この頃はまだイエローしか見ていなかったので、この色黒さは衝撃的でしたね。

■ 2013年03月24日 撮影

今年はウチの近所じゃ軒並みアミガサ系統が不作。ハズレ年ってヤツでしょう。 本種は元々発生量が少ないので、むしろ良く頑張ってくれていたと思いますね。 と言っても見れたのはたったの2株だけ。採取は・・・流石に諦めました。 ただこの個体は非常に大型で被写体としては素晴らしく、テンション上がりました。

■ 2014年04月05日 撮影

この年はアミガサ系の当たり年!最高のスタートダッシュを切れた感じ。 車からもハッキリ分かるほどの大きくて黒々としたとんがり帽子です。 これ見て気付きましたがアシボソアミガサタケと柄が明らかに違いますね。


■ 2014年04月05日 撮影

オマケに奥に生えていた少し小さめの子実体。良い尖り具合ですね。

■ 2015年03月21日 撮影

なるほど、一眼レフの良さはこのボカシの雰囲気が自分で選べることですね。 コンデジではこのような奥行きは撮れないので、これは買って良かったですわ。 ただ周囲の環境も記録としては重要であり、そこも重視して撮らなくては。

■ 2015年03月21日 撮影

まだ時期が早いので普段は脈の部分が真っ黒な本種も透明感がある幼菌段階。 やっぱり本種はいの一番に顔を出すアミガサファミリー。春を告げるキノコですね。

■ 2015年04月04日 撮影

松崎し◯る氏並に黒いですね。こりゃブラックモレルなんて言われるワケだ。 あまりに黒いので走行中の車内からでも草むらの違和感に気付くことができます。 アシボソアミガサタケも黒いですが、本種のほうが最終的により黒くなる気が。

■ 2017年03月25日 撮影

まだ寒さの残るいつものフィールドへ。少し早いかと思いましたが・・・。


■ 2017年03月25日 撮影

走行中の車からでも分かった黒いとんがり帽子。幼菌でも重厚感が違います。 やはりコイツの姿を見ないと春が来たって気になれないのはキノコ屋だから?

■ 2017年03月25日 撮影

比較的目立つ種ではありますが、幼菌で背の低い時のカモフラは凄い! 注意深く見ていても見落としてしまいます。特に草の生えた場所は最悪。 まだ寒いので背が低くて助かりますが、ここから一気に伸びて隠れます。


■ 2017年04月08日 撮影

上の幼菌が成長した姿です。周囲の様子から同じ場所なのが分かります。 2週間ほどで周囲の緑が鮮やかになり、一気に春になった感じがしますね。

■ 2017年04月08日 撮影

トガリ最盛期!まだ寒さが頑張る4月頭にベストコンディションになりました。

■ 2018年03月31日 撮影

地元でアミガサ系が出ず、諦めて訪れたチョイ遠めのフィールドで無事遭遇。 草が増えたせいで流石に走行中の車から見付けることはできませんでしたが。 にしてもこの時期でこの古さ・・・やはり出るのが例年より早かったのかな?

■ 2018年03月31日 撮影

あえて直射日光を遮らずに撮影。これも自然に撮れてますね。

■ 2018年03月31日 撮影

これ撮影時に向き間違えてるワケじゃないですよ。真横に生えてるんです。 こうして見るとやはり雨の少なさが影響してますね。先端が乾燥してます。

■ 2018年03月31日 撮影

この日のベストショットはコレかな?実にトガリらしい優雅な立ち姿です。 ただ場所的にも数的にも採取はせず。地元のフィールドの発生待ちですね。

■ 2020年03月15日 撮影

2019年はまさかの空振りで出会えず仕舞いで超ショックでしたよ。 地元のブラックな別種が出てくれていたので、それで埋め合わせをしましたけどね。 リベンジの今年も発生はしていたものの個体数は以前に比べて明らかに減りました。 ひっそりと生きてくれているようなので、見守る所存。

■ 2020年03月15日 撮影

比較的綺麗な子実体です。日陰に発生したものは乾燥しづらいので綺麗なママですね。 今年は何としても顕微鏡観察がしたかったんですが、どれもまだ未熟かな? 若い子実体が成熟する、と言うか古くなるのを待ちました。

■ 2020年03月20日 撮影

5日後に再訪問。テンガイカブリタケ探しも兼ねてましたが空振り。


■ 2020年03月20日 撮影

良い感じに古さが増した子実体がありましたので採取することにしました。 しかしこの場所は発生量その他諸々の理由から個体そのものは採取せず、小さな切片のみを切り取りました。 顕微鏡観察するだけなので一欠片あれば問題ありませんからね。


■ 2020年03月20日 撮影

まずは子実層をマクロ撮影です。こうして見ると本種の縦方向の網目の発達が良く分かります。 古いものでは縦の網目だけが黒く変色して強調されていることが良くあります。 そもそも老成すると網目が黒く縁取られるのは類似種では見ないですね。


■ 2020年03月20日 撮影

ようやく本種を顕微鏡観察できました。思えばアミガサ系ってあまり見てませんね。 写真を繋ぎ合わせて作った合成写真ですが、本種の内部構造が良く分かります。 普段は子実層ばかり見てて気付きませんでしたが、何層にも分かれているんですね。


■ 2020年03月20日 撮影

子実層には沢山の胞子が見えて一安心。 と言うのもアミガサ系はかなり成熟しないと胞子が見れないと言われています。 事実、絶対に成熟しているだろうと踏んで採取した普通のアミガサが完全に未成熟だった経験がありますので。 なので今回は黒い変色が見られるまで待ったんですよね。


■ 2020年03月20日 撮影

子嚢側糸を切り出してみました。 子嚢は最初8個の子嚢胞子が1列に並びますが、後に先端付近に詰まるようです。 側糸は基部で分岐しますが、ユニークなのは子嚢に比べて短いと言うことです。 普段見る子嚢菌類では側糸は長短はあれど子嚢の長さに近いので、これは予想外。


■ 2020年03月20日 撮影

子嚢先端を高倍率で撮影していて、妙な違和感が・・・。


■ 2020年03月20日 撮影

何か子嚢胞子にゴミみたいなのが付いているなと思ったんですが、見間違いではありませんでした。 自然放出させた胞子を観察してみると、やはり両端に何かが付着しているように見えます。


■ 2020年03月20日 撮影

油浸対物レンズで高倍率撮影してみました。 子嚢胞子は楕円形で20〜22μmとサイズは安定しています。 両端付近に泡状の内包物を持っていることが多いですが、ほぼ内容物が見えないものも存在します。 最大の特徴は両端に油球様の付着物があることでしょうか。 これは無印アミガサタケでも見られる特徴のようです。 アミガサ系は胞子で区別はできないと言われるのは、種によって差があまり無いからだそうで。


■ 2020年03月20日 撮影

結果は知ってるんですが、一応メルツァー試薬で染色してみました。 子嚢が赤く染まるようで、子実層だけが赤くなりました。


■ 2020年03月20日 撮影

アミガサタケ属の子嚢は非アミロイドであり、本種も例外ではありません。 そう言えば本種の子実層をマクロ撮影した時に表面が毛羽立って見えましたね。 これどうもこんな感じで子嚢が突出しているからみたいです。

■ 2020年03月20日 撮影

日光に照らされた幼菌です。結構日差しが強い直射日光ガンガンの場所でも力強く出ています。 若い内は傘の部分が少しグレーっぽいんですね。 この日は念願の顕微鏡観察ができて大満足の観察となりました。また群生が見たいなぁ。

■ 2021年03月27日 撮影

この日は状態の良いトガリが多く、長らくTOPを務めた写真も差し替えできる良い子実体にも出会えました。 この子実体は若干傾いていますが・・・?


■ 2021年03月27日 撮影

そう言えばあまりアップを撮ってないなと思い急ぎ撮影。 こうして見ると縦方向の網目が発達するのもそうですが、縦の網目がボサるのが分かります。 子実層は頭部全面、凹みの中などにも出来るのですが、尾根の部分だけは粗面になります。 あまりこの部分は顕微鏡観察していないので、今度見てみるのもアリですね。

■ 2021年03月27日 撮影

あまりアミガサ系では見ない癒着した子実体です。いや、分岐かな? これはこれで面白いのでパシャリ。こう言うの「遊星からの物体X」を彷彿とさせますね。

■ 2021年03月27日 撮影

ちょっと面白い発生を見たのでご紹介。このフィールドはあまり落葉がありません。 なので普段は柄が見えるんですが、珍しく腐植の多い場所に大きなトガリが出ていました。 すると白っぽい柄が隠れるので地面からトゲが生えているみたいに見えます。 まぁ踏んでも刺さるどころがトゲのほうが砕け散るでしょうけど。

■ 2022年03月19日 撮影

本種を見に行かないと気が済まない!と言うことで2022年の実質初フィールドです。 「実質」と言ったのは一応菌生冬虫夏草を見に2月にフィールドに出ているため。 大型のキノコを見に出掛けたのはこの日がこの年初めてでした。居てくれてありがとう。

■ 2022年04月03日 撮影

前回訪問時はあまり数が出ておらず、しばらく時間を空けて再訪問してみました。 入れ替わりのせいで個体数はさほど変わっていませんでしたが、新規発生は見ることができました。 トガリとは言え、こんな感じで尖りが甘いものも結構居ます。

■ 2022年04月03日 撮影

側溝の中に堂々と横たわる大型の子実体を発見。 この場所は不思議とコンクリの隙間を縫って出て来る根性のあるヤツが多いです。

■ 2023年03月19日 撮影

毎年見ないと気が済まないんですが、毎回ほぼ同じ構図なので何か年が変わってる気がしないんですよね。 かと言って見付けると格好良いのでつい撮っちゃう・・・考えものです。

■ 2023年03月19日 撮影

この日は現地到着が遅くなり、もう日が暮れ始めていたので、光が横から差し込んでいました。 どうしてもこの時間は暗くて青っぽく写っちゃうんですよね。 でもそのお陰で何となくエモい雰囲気に撮れたので結果オーライ。 なお発生量が少ないので採取はせず、来年も沢山見られることを祈ってフィールドを後にしました。
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