■Morchella esculenta var. rotunda (マルアミガサタケ)

■ 2018年04月15日 撮影

久々に美しい子実体に出会えたのでやっと9年前の写真とTOP交代となりました。 春にサクラの樹下に発生。明るい色なので走る車の中からも見えました。 アミガサタケの変種、和名「丸網笠茸」。由来は基本種より頭部が丸いためです。 ただ観察した限りではどちらかと言うと形状よりに特徴がある気がします。 外見的な特徴以外に無印と大きな違いは無く、発生環境も同じと思われます。 最初はアミガサタケとしていましたが、調べた結果別にすべきと判断しました。

アミガサには大まかにノーマル、チャ、マルの3種類の変種が存在しています。 ただ傘の色くらいしか肉眼的な差は無いので、一緒で良い気もしますがね。 ただ本種は2020年の胞子観察で非常に珍しい特徴を持つことが判明しました。 詳細は後述しますが、もしかすると別種かも知れません。 個人的には無印とチャが同種で、マルが別種じゃないかな?と疑っています。


■ 2018年04月15日 撮影

基本種との最大の違いは頭部です。形が丸いと言うのが名前の由来ですが・・・。 それより目に付くのは頭部が淡色だと言う事。黄色と言って良いでしょう。 アミガサにも丸い物がたまにいるので、注目すべきはこの色合いだと思います。

基本種のアミガサ同様、極めて美味な食菌です。調理法も全く同じ。 味も同じで、同じく変種のチャアミガサタケも食べましたが味も全く同じです。 アミガサ系は無印もチャもマルも「イエローモレル」と呼ばれるみたいですね。 個人的には本変種こそ「真のイエロー」なんじゃないかと思っております。

■ 2009年04月18日 撮影

実は人生で初めて発見したイエローモレルは無印ではなくマルだったんですよね。 この色合いが基準になってしまったので無印見た時に戸惑った覚えがあります。


■ 2009年04月18日 撮影

抜いてみました。結構大きいですが、見た目からは想像できないほど軽いです。

■ 2009年04月18日 撮影

ちなみにこれが初めて発見した個体。一度見付けると後は簡単に見付かります。 今年は最も良い時期に雨が降らず乾燥が続いたため、発生自体が少ないようです。 やや老成気味で柄まで色濃くなってますが、それでも傘はこの色合ですからね。


■ 2009年04月18日 撮影

見た目以上に軽い理由、それは内部が空洞だから。一番意外な部分ですね。 アミガサタケの仲間はほとんどこんな感じで内部が丸々空っぽになっているんです。 なので実際に食べられる肉はちょっとしか無いです。何と言う不便なキノコだ・・・。

■ 2010年04月17日 撮影

ここまで色が薄い個体は初めて見ました。黄色じゃなくて淡黄色です。 小さな個体でしたが、あまりにも目立つその姿のおかげですぐ見付けられました。

■ 2011年04月25日 撮影

普通のアミガサに色合いが似てるので、少し掲載迷いました。多分あってる。 チャアミガサほど肉眼的な違いが無いので、中間的な個体も見かけますね。 ここは昨年も見た場所。大きな湖の岸部に植えられた若いサクラの根元です。

■ 2011年04月25日 撮影

この場所で見たのは初めてでした。画面内に3株、すぐ上にもう1株生えてました。 ここはサクラの巨木の下の斜面で、木からはそこそこ離れている場所です。 マルアミガサは明るい黄色なので、他の2亜種と比べて見付けやすいですね。

■ 2012年04月20日 撮影

ここの個体は本当に傘の部分の色が薄いです。肉眼でも違いが分かりますね。 ここまで色の薄い個体は自分はここでしか見た事が無いような気がしますね。 基本的なアミガサとの中間的な個体も多く、写真整理の時に困る原因でもあります。

■ 2020年04月05日 撮影

2020年は今までやらなかったアミガサタケ類の顕微鏡観察を行いました。 ただ無印のアミガサタケが見付からなかったため、本種で良いやと思いカケラを採取。 うーん、やっぱり色が淡い・・・柄と同じ色合いですもの。


■ 2020年04月05日 撮影

まずは子実層面を低倍率で観察・・・あれ?何か子嚢基部が乱れてる? 潰しちゃったかなと思ったんですが、どうも本種の子嚢は基部が屈曲するのだそう。 確かに潰れるなら子嚢先端だよなぁ。


■ 2020年04月05日 撮影

子実層の表面付近です。トガリと違って側糸が長いですね。 子嚢と同じくらいの位置に居ますし。 でもどちらかと言えばトガリが短いワケで、これが普通っちゃ普通か。


■ 2020年04月05日 撮影

子嚢と側糸の先端です。コレと言って目立ったものはナシ。 側糸は隔壁を持ちますが、基部だけで先端付近にはありません。


■ 2020年04月05日 撮影

無事子嚢胞子が観察できました。長楕円形で油球のようなハッキリした内包物はありません。 何かもよもよしたものが均一に内包されていると言う感じです。 アミガサ系は顕微鏡観察で決め手になるような特徴が少ないと言われていますが、確かに普通です。


■ 2020年04月05日 撮影

メルツァー試薬での反応を見ます。やはり子嚢が赤く染まりますね。


■ 2020年04月05日 撮影

子嚢先端を拡大です。非アミロイドなので青くはなりません。 先端には蓋も頂孔も見えません。これで全部観察し切ったかな?


■ 2020年04月08日 撮影

と思ったのですが、twitterにて胞子表面の立体構造を見てみては?とのご意見を頂きました。 実はアミガサタケの仲間の胞子には表面に水封では見えない縦じわがあるものがほとんど。 そのため通常の観察ではなく、液体による封入を行わないドライマウントで観察してみました。 立体構造が見えれば何かヒントになるかと思い試してみると、何と平滑。 縦じわの無いアミガサタケの仲間はかなり珍しいそうで、本当にアミガサの変種なのか怪しくなってきました。 別種が混在してるとも聞きますし、可能性はアリですね。

■ 2020年04月05日 撮影

幼菌の頃から胞子観察のためにずっと放置していましたが、カケラを採取したのは別個体。 コイツは立ち姿が綺麗だったのでそのまあ残しました。胞子飛ばしてね〜。

■ 2021年03月27日 撮影

2021年に撮影したのに掲載したのは2023年。1年近く掲載準備フォルダに入っていました。 本当に申し訳ございませんでした。後から撮影したヤツを先に載せるのはダメですね。 相変わらず白っぽいと言うか色が薄い・・・やっぱりコイツはひと味違う気がします。

■ 2021年04月03日 撮影

本種はちょうどソメイヨシノの花が散るタイミングで最盛期を迎えるので写真映えするんですよね。 まぁそれは他のイエローモレルもそうなんですけど。

■ 2021年04月03日 撮影

列を成して発生するマルアミさんです。 何度も本種を見ていて気付いたのですが、心なしか本種は一回り小さい気がします。 他のノーマルやチャは平均してもう少し大きいような気がするんですよね。 仮に自分が採取側だったらと想像してみても、「採らないでおくか」って思っちゃいますもん。

■ 2021年04月03日 撮影

サクラの花弁のピンク、緑色の下草、そして黄色い本種。この配色、良いですよね! どう撮っても良い感じになるので、これでも相当写真を選別して減らしてるんです。

■ 2023年04月02日 撮影

今年も出ました。やっぱこうして見ると明らかに色が薄いんですよね。 チャアミはまぁ個体差って言われても仕方無いかな〜って感じなんですが、 本種は胞子の形状も含めて同種っぽくないなとは思います。でも見た目は一番好きまでありますね。

■ 2023年04月02日 撮影

サクラの花弁の帽子を被った非常にエモい写真が撮れました。 発生量が例年に比べて少なかったのは最盛期にあまり雨が降らなかったからしょうね。 来年春には大発生している光景にまた出会いたいものです。
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