■Mycena laevigata (センボンクヌギタケ)

■ 2016年12月23日 撮影

見事な群生に出会えたので、初発見時の写真と差し替えることができました。 初発見時は小規模群生だったので、やはりこの姿をTOPにしたかったんですよね。 和名「千本櫟茸」。発生時期が真冬と言うクヌギタケ属の中でも相当な変わり者。 以前は別種を誤って掲載していましたが、今回は大丈夫だと思います。 図鑑にもあまり載っておらず、少し前までは種小名も未決定でした。

古い図鑑だと載ってはいるものの種小名が「sp.」だったりしました。 現在はこの種小名で知られるようになっています。 また針葉樹材に生えるとされていますが、普通に広葉樹材にも生えます。 どちらも確認しているので、材の針葉広葉は問わないと思われます。


■ 2016年12月23日 撮影

何と言っても最大の外見的特徴は「千本」とも言われる株立ちです。 真冬のこの時期にここまで見事な群生を見せられちゃ堪りませんよ。


■ 2016年12月23日 撮影

傘表面は白色〜象牙色で周辺部は淡くなり、放射状のシワがあります。 この傘表面の雰囲気はかなり独特で、一度見ればかなり印象に残ります。 そして「千本」の名に恥じぬ凄まじい群生を作るため小型でも大迫力です。


■ 2016年12月23日 撮影

この子実体はまだ傘が開き切っていないので垂生具合が分かりませんが、 本種はクヌギタケの仲間としては珍しく、ひだが柄に対して垂生します。 また本属菌としては傘の大きさと比べて柄が太く、表面が滑らかです。 上から見るとらしいのですが、下から見るとMycena属らしくないですね。

学名が当てられたのも最近で、今の所情報不足で食毒不明としておきます。 クヌギタケの仲間なら可食の可能性もありますが、小型なので食用価値は低いでしょう。 でも針葉樹に生えるクヌギ系ってあんま食べれるような気がしないのですが。

■ 2016年12月23日 撮影

この規模の群生となるとやはり迫力がありますね。千本も大げさじゃない。 何度も虫草探しで見ていた倒木なので色の変化にすぐに気付きました。


■ 2016年12月23日 撮影

反対側。傘は古くなるとやや褐色を帯びてきます。雰囲気変わりますね。 ただウワサでは関東と関西で傘が異なり、別種の可能性もあるとか。 となるとコレは関西タイプなんでしょうけど、ウワサレベルなので気にしないことにします。

■ 2016年12月23日 撮影

何としても載せたかった下から見上げた本種の傘。う・・・美しい・・・

■ 2015年01月24日 撮影

初発見は2015年。小さな切り株から出ていたコチラの株立ちで比較的小さかったです。 最初は発生時期も妙で見慣れないせいか、正体が分からず悩みましたね。 1月の真冬にこのようなハラタケ型菌が見られるなんて思いませんから。


■ 2015年01月24日 撮影

千本の名に恥じぬ・・・と言いたいですが、これなら数えられる量ですね。


■ 2015年01月24日 撮影

裏側を撮影した時にようやくその正体に気付きました。このひだは特徴的ですしね。 この後、元々小さい切り株は朽ちて無くなり、発生環境も消滅しました。 でも多分見付からないだけですぐ近くに移動しているんだと思いますけど。 別のフィールドでも見付かりましたし、探せば普通に居る種なんでしょう。

■ 2017年01月28日 撮影

イトヒキミジンアリタケを新たに発見したフィールドでちょっと嬉しい出会い。 木の洞(うろ)に生えるセンボンクヌギンを発見。しかもこれが良い雰囲気! これ穴の中に水が溜まっていて、隔離された箱庭のようになっていました。


■ 2017年01月28日 撮影

上に屋根があるおかげで傘も傷まずキレイな状態。被写体として優秀でした。 こんな感じで広葉樹にも普通に出ます。

■ 2020年02月23日 撮影

2016年の同じ場所に戻って来ました。 と言うか毎年ここは見てたハズなんですが・・・発生が久し振りなのかな? 夕暮れ時で色温度が変に写ってしまい、編集に苦労しました。


■ 2020年02月23日 撮影

今回はかなり成熟した個体群だったようで、成熟を通り越して老成に片足を突っ込んでいる模様。 本種は若い時はグレーですが、成熟するとワリと褐色が強くなるようです。 それでもこのとんがった発生時期束生は本種とするに足る特徴でしょう。


■ 2020年02月23日 撮影

この日は顕微鏡観察の題材を探していたので採取してついでに黒バック撮影してみました。 この時期に見られるハラタケ型なんて地元じゃ本種とヒラタケくらいなので貴重なサンプルですよ。 なので黒バックも気合い入れて撮影してみました。 この角度から見るとひだが垂生しているのが分かりやすいですね。


■ 2020年02月23日 撮影

裏側を見てやっぱり面白いのはこの何とも言えないのっぺりした柄です。 繊維状でもなく、やや透明感があって細いロウソクみたいな見た目です。 やはり本属菌としては傘のサイズや柄の長さのワリには柄が太いように思います。


■ 2020年02月23日 撮影

ハラタケ型のひだの切片作成はいまだに慣れないので、練習も兼ねています。 しかしクヌギタケの仲間って肉質が脆いので練習にしてはハードル高いっすわ。


■ 2020年02月23日 撮影

今回のお目当て、担子器も何とか見えそうですね・・・。


■ 2020年02月23日 撮影

この顕微鏡観察で確かめたかったのは本種の胞子のサイズでした。 しかし担子器が何胞子性かが観察できるようになって来ていたので本種でも確認してみました。


■ 2020年02月23日 撮影

クヌギタケの仲間の担子器は基本的に4胞子性で、2胞子性を混在させると言うものが良く見られます。 実際に確認してみると確かに4胞子性が最も多く、2胞子性がチラホラ。 ですがワリと2胞子性よりも多いくらいの感覚で3胞子性も混ざっているように見受けられます。 とりあえず2〜4胞子性と言っておけば大きな間違いじゃないかな?


■ 2020年02月23日 撮影

胞子は楕円形で1ヶ所ピンとハネた突起が見えます。これは担子器と繋がっていた跡ですね。 胞子サイズは5×2.5μmと本属菌としては小さいです。 クヌギタケより胞子が小さいとされている通り、長さや幅は半分程度のようです。
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