■Octaviania decimae (オクタビアニア デキマエ)

■ 2018年11月24日 撮影

初発見は2018年の1月13日に静岡県で行われた地下生菌観察会。 その際に命名者のO先生に本種だろうと教えて頂き、その後地元にて自力発見することができました。 ブナ科樹木の樹下の地面やリター層に埋もれて発生します。カシ類に付いているっぽい? ヤマイグチ属に近縁であることが分かっています。和名はホシミノタマタケ属。

種小名の由来はローマ神話の運命の三女神の一柱である「デキマ」です。 「O. nonae」と「O. mortae」、「O. celatifilia」と言う近縁種が存在します。 前2つは同じく三女神であるノーナとモルタ。最後は「隠し子」と言う意味。 3種だと思って命名したら4種目が有ったのでこんな感じになってるそう。


■ 2018年11月24日 撮影

子実体は白色で類球形。基部から太い菌糸束が伸びているのが特徴です。 また子実体に黒変性があるのが特徴で、触れた部分が黒くなっているのが分かります。 しかしこの変色性に関しては類似種も同様のため決定打にはなりません。 個人的にはやや赤変する性質もあるように見えました。


■ 2018年11月24日 撮影

切断しました。外皮は厚く、グレバは胞子が詰まった粒状の小腔室が詰まっています。 これを見るとホシミノタマタケ属だなぁ〜と思えますね。


■ 2018年11月24日 撮影

グレバは暗赤褐色で色合いも質感もこしあんそっくりです。 個人的にはタピオカミルクっぽくもあるなと思っていたり。 ただ若いうちは淡黄褐色で雰囲気が全然違います。成長度合いも要チェック。


■ 2018年11月24日 撮影

子実体を黒バック撮影してみました。持ち帰るまでにかなり黒変しちゃいましたね。 注目すべきは基部に柄の名残があること。本種がハラタケ型から進化した証拠です。


■ 2018年11月24日 撮影

切断したものを黒バック撮影してみました。 切れ味の良いカミソリで切ったのでグレバが崩れずに綺麗に残りました。ね?タピオカミルクでしょ? 柄の名残は無性基部になっており、断面の質感も異なっています。


■ 2018年11月24日 撮影

これが本種がホシミノタマタケ(星胞子玉茸)属と呼ばれる所以。


■ 2018年11月24日 撮影

流れるような部分を観察するとまさにミルキーウェイ! 本当に星が流れているように見えます。 もう少し拡大してみるとその正体が見えてきます。


■ 2018年11月24日 撮影

本種の胞子は球形ですが、表面にピラミッド状のとげがあるのです。 そのため先端がツンツンした金平糖のような形状が星に例えられています。 とげを含む直径は大きいもので15μmほどあり、大きくても10μm強の「O. nonae」に比べるとかなり大型です。


■ 2018年11月24日 撮影

「O. nonae」との違いはサイズだけではありません。表面のとげの大きさも異なります。 本種のとげは大型です。と言っても比べてみてやっと分かる程度の違いですが。 ノナエはもっととげが細かく見えます。


■ 2018年11月24日 撮影

KOH滴下後の胞子です。本属菌はKOH下でとげが伸びると聞いたんですが・・・ビミョー。 ん!?まちがったかな・・・。


■ 2018年11月24日 撮影

とここまで見てきて気付いた方は居られるでしょうか。 ここまでイグチ要素皆無だと言うことに。 外見のみならずグレバの形状や顕微鏡レベルの特徴も全くイグチとの関連性が見出だせません。 ではどこにイグチ要素があるかと言うと、コレです。 本種はイグチ類の寄生菌であるSepedonium属菌に感染するんです。 いわゆるアワタケヤドリと言われている仲間ですね。 厚膜分生子を観察した感じだとアワタケヤドリタケ(S. chrysospermum)そのものに見えます。 実際にこの黄色が本種のようなイグチ科の地下生菌の捜索に役立ちますからね。

食毒不明ですが、大きさ的にも食用価値無しのほうを優先したいと思います。 大きくても1cm程度の小さなキノコなので、愛でることすら大変ですからね。

■ 2018年12月29日 撮影

今年もやりました年末の地下生菌オフ。そこでK.Y氏が発見した子実体です。 成熟していたのはこれ1つだけで幼菌は周囲に複数確認できました。


■ 2018年12月29日 撮影

K.Y氏やO氏曰く、種小名まで同定することに意味がないレベルとのことでした。 本属菌は肉眼での判別はほぼ不可能と考えて良いみたいです。 ウチのサイトの経営方針の敵みたいなヤツですね。こんな外見じゃしかたないか。


■ 2018年12月30日 撮影

断面はこんな感じ。オクタビアニアだなぁって思えるこの姿。


■ 2018年12月30日 撮影

胞子観察用に半分分けて頂いたものを帰宅後に黒バック撮影してみました。 外皮が厚いのはnonaeだと言われていますが、自分には正直違いが分かりません。 そう言えばこれよく「こしあん」って言われてますが、何か既視感あるなと思ったらアレだ、馬刺しに似てる。 筋肉の断面って言うか白い部分が少ないと余計にそう見える。


■ 2018年12月30日 撮影

胞子も観察してみましたが、大きさはともかく表面のトゲの密度と言うか大きさが同じですね。 これもdecimaeとしておくしかなさそうです。

■ 2018年12月29日 撮影

大きな子実体が1つしか見付からず、時期的に遅いのかな?と思っていたら周囲に幼菌が群生していました。 小さいながらもしっかりと太めの菌糸束が出ており、オクタビアニアっぽさが良く出ています。 ちなみにこれは2019年の1月半ばに訪れた際には完全に消滅していました。意外と短命なのかな?

■ 2019年01月14日 撮影

年末オフに予定があって参加できなかったガガンボ氏と一緒に再訪問してみました。 アテにしていた幼菌が消滅していて焦りましたが、何とか自力で出すことができました。 ただ見付かったのは辛うじてこれ1つだけ。流石に時期を外したか・・・。


■ 2019年01月14日 撮影

ガガさんが切断したもの。いつもに比べてちょっと子実体が扁平かな。 ただ枝と木の根、小石の隙間にガッチリ嵌ってたのでそのせいかもです。 本来デキマエは丸い形状になりやすいらしいので。


■ 2019年01月14日 撮影

帰宅後に黒バック撮影してみました。やっぱ白い塊状の地下生菌は黒背景がよく似合います。 これも多分同種だろうなと思いつつ顕微鏡観察はしてみます。


■ 2019年01月14日 撮影

油浸対物レンズで観察してみましたが、やはり胞子の大きさも、とげの太さや密度もほぼお同じです。 発生場所も極めて近いですし、年末に見たものと同種であると考えて良いでしょう。 日本地下生菌研究会の大ベテランの方も本種が一番一般的と仰ってましたし、日本全国どこにでも居る普通種なんでしょうね。
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