■Ophiocordyceps asiana (オフィオコルディセプス アシアナ)

■ 2023年07月01日 撮影

以前からその存在は知っていましたが、地元では見事なまでに出会うことができず、 案内していただいたしんや氏のフィールドにてようやくその姿を拝むことができました。 長らくカメムシタケと混同されていましたが、 本種のようにヘリカメムシの仲間から発生するものは別種であることが判明し、 別種として独立しました。現在はまだ和名が提唱されていないため、 愛好家の間では「草地生カメムシタケ」と言う通称で呼ばれたりしています。

以前からカメムシタケと混同されていましたが、 カメムシタケはカメムシ科やツノカメムシ科などの一部の科に宿主特異性があった模様。 宿主が多岐に渡るとされていましたが、実際には種が違っていたと言うね。 ちなみにエダウチカメムシタケ(Hirsutella nutans)が重複寄生していたりします。


■ 2023年07月01日 撮影

ノーマルカメムシタケと外見的に違う点としては、全体的に小さいと言うことです。 子実体のサイズもですが、結実部や柄の細さなど、一回りミニチュアサイズな気がします。 これは宿主が大型のカメムシ科ではなく、宿主が小さいヘリカメムシだからでしょう。


■ 2023年07月01日 撮影

子実体はミミカキ型と呼ばれる非常に長いタイプ。 柄は黒くて光沢があり、良い感じに捻れています。 キノコとは思えないほどハリガネのように強靭で、そう簡単には折れません。 そして先端部だけは赤色で結実部だけはオレンジ色になります。 この配色は本家カメムシタケと同じですが、結実部の大きさと形状がちょっと引っかかりますね。


■ 2023年07月01日 撮影

下から黒→オレンジ→赤→オレンジの色変化は本家と同じなんですが、 気になるのがこの結実部の形状と大きさです。所謂ギボウシ型ってヤツですね。 今まで見て来た結実部はもっと細長いんですが、本種は明らかに結実部が小型で短いんですよね。 子実体自体が一回り小さいので、余計に小さく見えます。これは結構印象に残りますよ。


■ 2023年07月01日 撮影

今まで大型のカメムシから発生したものばかり目にして来たので、 ヘリカメムシの仲間から出ているのに凄い違和感がありますね。カメムシには詳しくないのですが、 すぐ近くに居た生体と同じだとするならツマキヘリカメムシの可能性が高そうです。


■ 2023年07月01日 撮影

帰宅後に黒バック撮影してみましたが、やっぱ柄が黒いので撮影が地味に難しいです。 宿主がヘリカメムシであることと結実部が妙に小さいことを除けば既視感バリバリですね。


■ 2023年07月01日 撮影

宿主はこんな感じ。子実体は胸部と小楯板と呼ばれる逆三角形の外骨格の隙間から出るようです。う〜ん黒い。 でも黒いので菌糸が侵入して白く濁った複眼が映えますね。


■ 2023年07月01日 撮影

もう少し拡大してみました。右の宿主の腹部の形状を見るに、やっぱツマキヘリカメムシっぽいですね。 このカメムシは比較的小型な種類なのですが、それでもここまで大きな子実体が形成されるのですね。 質量保存の法則無視すんな・・・ってのは他の冬虫夏草でも似たようなものですけど。


■ 2023年07月01日 撮影

撮影中に少し乾燥したのか、子嚢の内包物が頂孔から吹き出しちゃいました。 本種の結実部はあまり長細くならず、ギボウシ型になることが多いようです。 稀に大型の宿主から発生すると結実部が長くなるようですが、それでも森林生種よりも短いようです。 にしても良い色ですね。乾燥すると色褪せるのはちょっと勿体無いですけど。


■ 2023年07月01日 撮影

結実部を拡大してみると、子嚢殻が斜埋生型のため表面に埋もれた子嚢殻が浮き上がっています。 子嚢殻の先端は突出せず、ほんのり赤い点となって結実部表面に現れます。


■ 2023年07月01日 撮影

一発で子嚢胞子が撮影できたので思い切って超長い画像で掲載しちゃいます。 本家カメムシタケは失敗続きで長い間観察できなかったのに、キミは素直で良い子だねぇ。 子嚢胞子は糸状で長さは650μm前後、64個の二次胞子に分裂します。 ただこれらの特徴は本家カメムシタケとほぼ差が無いので、 胞子の顕微鏡観察は2種の判別にはあまり有用ではないかも知れませんね。


■ 2023年07月01日 撮影

二次胞子は小さいので油浸対物レンズで撮影しました。 二次胞子は多少の長短はあれどアベレージ10μmくらいで、これも本家と大差無し。 顕微鏡レベルの特徴はあまり個性的ではないようで、今まで混同されていた原因の1つかも知れません。 ただ気のせいかも知れませんが、内包している油球が細かいような気もしますね。

カメムシタケは地域によっては薬用として利用されていたようですが、 それが本種であるかどうかが分からないので食毒不明としておいたほうが良さそうです。 まぁ非常に小さいキノコなので、あまり口に入れることを考えるべきではないかと。

■ 2023年07月01日 撮影

結実部が形成される前は先端部が深紅に染まっているので遠目にも非常に目立ちます。 しかしこの美しい赤色は乾燥標本にすると消失しちゃうんですよね・・・。 色んな虫草屋さんが色の保存にチャレンジしてるんですが、消失しやすい色素みたいです。

■ 2023年07月01日 撮影

凄い良い雰囲気だったこの日のベストショット。緑のコケに赤い結実部がとても映えますね。 こうして写真で見るだけなら綺麗だな〜くらいなんですが、現地は灼熱地獄です。 冬虫夏草は高温多湿環境が好きなので、滝のような汗をかきながらの撮影でした。
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