★Ophiocordyceps nutans (カメムシタケ)

■ 2019年08月18日 撮影

どろんこ氏と一緒にベニイロクチキムシタケ目当てで訪れたフィールド。 そう言えば綺麗なTOP写真が無かったことを気にしていたので撮影してみました。 各種カメムシを宿主とする冬虫夏草、その名も「亀虫茸」です。 冬虫夏草としてはメジャーかつ初心者向きの比較的嬉しい存在ですね。 種小名は「うなだれた」の意。結実部が垂れるため「ミミカキタケ」の愛称を持ちます。 従来は数多くのカメムシ科を宿主とすると考えられていましたが、 実際にはカメムシ科ツノカメムシ科等に対して宿主特異性があることが判明しました。

なお低地でヘリカメムシ科から出るものは別種だったと言う衝撃の事実ががが。 この「O. asiana」を「草地生カメムシタケ」と呼ぶのに対し、 最近は区別するために本種を「森林生カメムシタケ」と呼んだりもしています。 なお、エダウチカメムシタケが重複寄生することがあります。


■ 2019年08月18日 撮影

子実体は細長く、先端部がオレンジ色〜赤色と非常に派手な色合いなので発見は簡単です。 また柄は結実部より少し下から突然光沢のある黒色になります。 柄には不思議と揺らぎ捻れがあるものが多いです。


■ 2019年08月18日 撮影

宿主を掘り出してみました。あまり詳しくありませんがクサギカメムシっぽいです。 もちろん内部は完全に菌糸に置き換わっており、臭いも何もありません。


■ 2019年08月18日 撮影

帰宅後にクリーニングしたものを白バック撮影してみました。 柄は胸部側面から発生することが多く、非常に強靭な肉質です。 そのためそのまま引っ張るだけでギロチンせず採取できてしまう親切設計。


■ 2019年08月18日 撮影

結実部はギボウシ型で長さにやや個体差はあるものの統一感はあります。 色は先端からオレンジ色→赤色→オレンジ色→黒色と変化します。 子嚢殻は斜埋生型で、先端部はやや突出しています。


■ 2019年08月18日 撮影

宿主はやはりクサギかな?不思議と子実体は胸部側面から出ているものばかり。 体節部は他にも沢山あるハズなのですが、何か理由があるのでしょうか。

カメムシって時点でゲェッ!ですが、実は薬用として利用されていました。 福岡県八女地方では「フーのトウ」と呼ばれ、販売もされていたそうです。 現在では一般的ではないですが、薬用酒として個人利用する方も居られます。 ちなみに「フー」はカメムシ類の地方名、「トウ」はフキノトウと同じ花軸の意。

■ 2019年08月18日 撮影

ちなみに胞子観察用に折れた先端部だけも持ち帰っていました。 上記の子実体は胞子を噴出してくれなかったので、コチラの結実部を使用しました。 実は以前から本種は何度も胞子観察に挑んでいるのですが・・・。


■ 2019年08月18日 撮影

辛うじて見れたのは二次胞子のみ。残念ながら完璧な子嚢胞子の観察はできませんでした。 子嚢胞子は糸状で記載によると530〜830μm、64個の二次胞子に分裂するのだそうです。 確認できた二次胞子のサイズは7〜10μm。 64を掛けた感じだと確かに記載の範囲には収まってはいますね。

■ 2015年07月18日 撮影

初見はどろんこ氏主催のオフ会にガガンボ氏とお邪魔した時でした。 凄まじい高温高湿度の沢筋でしたが、多くの出会いがあった思い出の探索でしたね。 逆にここでの経験が、その後どんな劣悪環境でも「あの時よりマシ」と思えるようになったキッカケです。


■ 2015年07月18日 撮影

宿主を拡大してみました。クサギカメムシでしょうか? かなり子実体の肉が緻密な種なので相当な量の栄養が必要だと思うのですが・・・。 この宿主のどこにこれほどの栄養があるんでしょう。本種に限った話じゃないですが。

■ 2015年07月18日 撮影

慣れて来るとガンガン見付かります。先端部が派手で小さくても目立ちます。 カメムシが好む樹種があるようで、その樹下では大群生を作っていました。 エダウチカメムシタケの重複寄生もありましたが写真を撮り忘れる大失態!

■ 2016年07月03日 撮影

ハヤカワセミタケの捜索中に出るわ出るわ、見飽きるレベルの発生量でした。 この子実体は宿主が翅を広げたまま死んでおり、今にも飛び立ちそうな雰囲気。

■ 2018年07月16日 撮影

ガガンボさん主催の岡山冬虫夏草観察オフ、その2日目に非常に多くの発生を目にしました。 一般的と言われるワリにウチの地元に無いのでやっぱり出会えると嬉しいです。


■ 2018年07月16日 撮影

やはり本種の魅力はこのカラーリングでしょう。硬く黒い柄の先に鮮やかな色彩は本当に映えます。 ほとんどが宿主1個体につき子実体1本と言う発生のしかたですが、このように1つの宿主から2本出ることも有ります。 3本以上と言うのは極めて稀みたいですね。カメムシの外骨格の構造が原因でしょうか。


■ 2018年07月17日 撮影

追培養用に持ち帰りました。クリーニングは必要なかったのでそのまま黒バック撮影です。 重厚感のある柄の先端に燃えるような赤とオレンジ・・・たまりませんね。


■ 2018年07月17日 撮影

個人的にお気に入りの一枚。今にも動き出しそうな宿主の黒バック写真です。 胴体の脇から出る2本の子実体が禍々しさをより一層引立ててくれています。 虫には詳しくないのですが普通に見かけるクサギカメムシで良いのかな?

■ 2018年07月16日 撮影

このオフの中でイチニを争うレアモノだったかも知れません。 結実部が真っ白なので最初は重複寄生されているかと思いましたが表面は滑らか。 何と激レアのシロガシラカメムシタケ(通称)です。 結実部が黄色いキイロカメムシタケもありますが、本種はそれを通り越して純白! 白変種なのかアルビノなのかは分かりませんが、貴重なものが見れました。 後で知ったのですが、当サイト掲載のどの冬虫夏草よりも貴重と言うレベルだったそうです。

■ 2018年07月17日 撮影

コチラは胞子観察用に持ち帰ったもの。これは流石にエサキモンキツノカメムシが宿主だと分かりますね。 エサキだと思ったんですが、背中の模様がハートになっておらず、本種だと教えて頂きました。


■ 2018年07月17日 撮影

成熟していそうなのに全然胞子を吹いてくれませんでしたので、せめて結実部だけでも綺麗に撮ろうと黒バック撮影。 黒い柄はオンレジ色になり、先端は赤色、そして結実部になるとまたオレンジ色に戻ると言う黒橙赤橙の順です。 子嚢殻は斜埋生型なので上方向に立ち上っているように見えます。

■ 2019年08月24日 撮影

地元の山で発見!ここで見るのは初めてです。ただ密度はかなり低い感じ。 開けた沢筋でかなり傾斜があり、風通しは良い場所なので当然かな? 高密度で発生するような場所なら他の冬虫夏草もありそうなんですけどね。

■ 2019年12月07日 撮影

日付に注目して下さい。これ間違いじゃないですからね。 師走の地下生菌オフでどろんこ氏が発見!氏も同行のK.Y氏も驚いていました。 それもそのハズ、12月にカメムシタケなんてありえないですからね。 いくら頑丈な子実体とは言え、この時期まで萎れずに残っているなんて異常です。

■ 2020年08月01日 撮影

この場所、尾根筋で沢も無く、普段からカラッカラの場所です。 なのに何故カメムシタケが居るのか・・・それは本州再多雨地だからですね。 ただ雨と言うよりもこの場合に大事なのはガスのほうだと思いますけど。

■ 2020年09月20日 撮影

どろんこ氏とのオフ会で出会った宿主がハサミツノカメムシのカメムシタケです。 このカメムシはウチのキノコ擬人化娘のスケボーのモチーフとなっております。 嬉しい出会いでしたが発生はこの1個体のみ。写真撮影だけにしておきました。

■ 2022年07月09日 撮影

実はココまでの掲載の中で地元で発見できたマトモなカメムシタケは2019年08月24日撮影の1個体のみ。 数年前に同じ場所で小さな小さな子実体は見ていましたが、撮影できるような状態ではありませんでした。 周囲には確かに他の冬虫夏草がそこそこ出るのですが、本種の発生は全く見られませんでした。 しかし2022年になって真実が判明。何と低密度かつ広範囲で発生していたのです。


■ 2022年07月09日 撮影

ちなみにこの場所、毎年ハマキムシイトハリタケを撮影している場所で、すぐ奥に居ます。 見付からなかった理由は簡単で、狭い範囲だけをずっと探していたためです。 実際に移動距離を稼いで探すと点々ととんでもない広範囲に発生していたのです。 今まで見つかったのはたまたま捜索範囲に入り込んできたものだったのですね。 しかし何と美しい赤色でしょう。冬虫夏草の赤では最も赤いのではないでしょうか?

■ 2022年07月16日 撮影

ヒノキの植林に転々と発生していました。灯台下暗し。 いつもハタケシメジを撮影するのに駐車していたすぐ近くに出ていたなんて・・・。

■ 2022年07月16日 撮影

宿主1体から2本発生していました。生育状態が違うので標本として優秀だったかも知れませんね。 でもあえて採取はしませんでした。と言うのも地元で見付けられたことで私の夢が叶いそうだったもので。

■ 2022年07月17日 撮影

意外と今まで写真を撮っていなかった結実部成長初期です。 この段階だとまだ先端がオレンジ色になっていないので全体的に赤くて美しいですね。 こうして見るとこのフィールドでは子実体を2本出しているものが多い気がします。

■ 2022年07月30日 撮影

綺麗なカメムシタケ。車道から1m以内に発生していました。 この場所では宿主はクサギカメムシアオカメムシからの発生ばかりですね。 最近になって低地でヘリカメムシから出るカメムシタケは別種であることを知りました。「今更?」とか言わないで。

■ 2022年07月30日 撮影

日付を見るとかなり頻繁に同じ場所を訪れていることがお分かりになるかと。理由は単純で胞子観察です。 え?まだカメムシタケの胞子見てないの?と思われるかも知れません。でもマジでまだ見てないんですよ。 今まで見た成熟個体の全てが県外遠征時のものばかり。 採取して持ち帰るも全く胞子を吹かないか、吹いても自然落下せずに結実部をスライドガラスに擦り付けて無理矢理撮影。 結果完璧な状態の子嚢胞子の撮影に失敗し続けていました。何としても自然落下させなくては・・・。 そのため結実部の子嚢殻が確認できるくらいまで自然環境下で成熟するまで待ったのですよ!


■ 2022年07月30日 撮影

胞子観察用に採取したものを黒バック撮影。 標本としては形状が悪いですが、胞子採取には背の低さはもってこいですからね。 この標本のお陰で長らく叶わなかった本種の子嚢胞子観察に成功しましたよ!


■ 2022年07月31日 撮影

画像が長いですがこの縮小レベルが特徴が分かる限界と判断しました。 スライドガラスに糸状の子嚢胞子が落ちているのが見えた時は感動でしたよ。 本種の子嚢胞子は糸状で長さは600μm〜650μmで文献の範囲内ですね。 数えてみると分かりますが、キッチリ64個の二次胞子に分裂します。 これが見たかったんですよ!2015年の初発見から7年もかかってしまいました。


■ 2022年07月31日 撮影

二次胞子もしっかり油浸対物レンズで撮影しましたとも。両端付近に油球様内包物が見られます。 また両端の細胞は少し長く、先細りになりますが、細胞そのものが長いので弾丸型とまでは言えない形状です。 なので写真の中に1細胞だけ両端の二次胞子がありますが、あまり目立ちませんよね。

■ 2022年07月30日 撮影

実は胞子観察用にもう1個体採取していました。胞子を吹いたのは別個体でしたが。 でもこの個体は実は胞子採取と言うよりは標本としての保管目的で定点観察していました。


■ 2022年07月17日 撮影

初発見時はまだ未熟で定点観察を決意。ここから約2週間で成熟しました。


■ 2023年07月24日 撮影

日本でもトップレベルの冬虫夏草の発生坪を案内して頂けることに。 主催のMikoskop氏の到着を待つ間、駐車場で雑談をしていると・・・居るし! 腰を下ろしている砂利道からヒョロリと赤いものが。ここでもう居るとは。

■ 2023年09月09日 撮影

久し振りのもろぞー氏オフにて複数個体発見。環境的に確実に森林生の本種でしょうね。 周囲を覆うコケは赤系の子実体を持つ本種には最高の背景ですね。 宿主は白い模様がハートマークではないので、エサキではないモンキツノカメムシかな?

■ 2023年10月01日 撮影

しんや氏のフィールドで面白いカメムシタケを発見!何と柄の途中から結実部ががが! 冬虫夏草に限らずキノコは傷付いた場所から新しい子実体を形成することがワリとあります。 この子実体も恐らくそうなんでしょうが、結実部が直接出ているのが何とも面白くてつい。

■ 2023年10月01日 撮影

エモすぎて撮らざるを得ませんでした。綺麗過ぎるでしょこの光景・・・。
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